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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
まだらの紐。
141/203

まだらの紐

探偵トリレオ……東野コケー吾の探偵小説。


「おお……」


 私たちは馬車から降りた。


 北方ワンぞうの館は長方形のビルのようだ。


「それでは私はこれで……明朝迎えにきますので……」


 カスケードが去っていくと同時に館から北方ワンぞう氏が私たちを出迎えてくれた。

 セントバーナードのワンぞう氏は威厳たっぷりで、私たちは思わずかしこまってしまった。


「ようこそようこそ皆さん。さあ立ち話もなんですから早速中に入ってくださいな」







 キャビアや国産牛のジャーキーに高級缶詰め……作家達は高級なお土産を持ち寄ったが、一番ウケたのは意外にもナタリーが私に持たせてくれた『鰹が丘まんじゅう』だった。


「おいしいわぁ」


「うまいねぇ」


「確かにこいつはいい。ニャトソン先生はセンスがいい」


 あまり褒められなれていない私は「イニャイニャイニャ……」と謙遜し、何度も肉きゅうを横に振った。


「さあ、そろそろ皆さんに私の肉きゅう料理を振る舞おうかな?」


 驚いたことにワンぞう氏自ら私たちに料理を振る舞ってくれた。

 ここはワンぞう氏の隠れ家であり、ワンぞう氏は自分のことは全部自分でやると語った。

 私は彼に好感を覚えた。


 ワンぞう氏の料理に舌鼓をうち、ワインをボトル開けた所で恐れていた事が起きた。


『ミステリー談議』が始まったのだ。


 ニャパンから探偵トリレオまで様々な小説のトリック、その矛盾点などを語り合う作家たち……私は予定通り端っこでポリポリとナッツをかじっていた。


 会話についてけニャい。


「僕……ニャトソン先生の好きなミステリーも知りたいな……」


 猫極が余計なことを言い出した。

 本当にこいつ嫌いだ。


「そうだっぺニャトソン先生」


「教えて欲しいわぁ」


「是非是非」


 作家4匹に迫られたら答えるしかない。


「そーですねぇ……シャーロック・ホームズの『まだらの紐』なんてのが……」


 私がこういうと、オリスと大猿は露骨にバカを見る目で私を見た。


「あの蛇を紐と見間違えたトンデモ小説だっぺか?」


「あれは矛盾だらけの駄作ですわぁ。そもそもドイルのミステリーはごり押しと矛盾点だらけでとてもとても……」


 オリスと大猿に好きな作品をバカにされ、少しムッとしたがワンぞうは『古典の名作ですな』と言ってくれたし猫極も『僕も好きだな……ドイル』とフォローしてくれたのでよかった。

 一瞬猫極に感謝しようとしたが、よく考えたらコイツが私に話を振らなければこんな嫌な気分にはならなかったのだ。


……危ない危ない。







「ああ……今夜はとてもいい気分だ……皆さんありがとう。私は寝るとしよう。皆さんごゆっくり……」


 ワンぞう氏は端にある階段を上って自室に帰っていった。







 ……ここで犬見館について説明をしておこう。


 犬見館は二階が大広間、キッチン、物置で、一階、三階、四階、五階、六階のフロアが丸々部屋となっており、ワンぞう氏により一階をオリス、三階を猫極、四階を私、五階が大猿が泊まると決められた。


 六階は当然ワンぞう氏の自室である。








「まだらの紐……いいじゃないか」


 私はベッドの中でウジウジと先ほどのことについて考えていた。


 シャーロック・ホームズシリーズは私が唯一読破したシリーズであり、一番のお気に入りなのだ。


 それをなぁ……


「やっぱり嵐になったか……」


 外は嵐でゴウゴウと大きな雨風の音がする。


 やれやれと私が寝返りをうった……その時だった。


「……まだらの紐!?」


 太いまだらの紐が私の前に現れた。

 そして……下の階から大きな衝突音がした。

 なんだ? と私が目線を下に移すと……まだらの紐が消えてた。


 ……目の錯覚か?



「ニャトソン先生!……いいですか?」


「むっ?」


 この声は猫極だ。


 私は扉を開けた。


「……大変ですよ」


「何がありました!?」


「ワンぞう氏が……死にました」


「ニャにぃ!?」



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