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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
まだらの紐。
140/203

猫極夏彦

ドッグスフォード大学……犬の名門大学。


う新幹線……牛の新幹線。



 ……ガタガタと馬車が揺れる。


 手紙が届いた数日後……私とミステリー作家たちはリムジン馬車『カスケード号』に乗っていた。

 馬車は山奥に向かってグングン進む。


「するとオリスさんは……だっぺか?」


「そうなんや……は……で……」


 黄色いジャケットを着た小猿……『大猿ありまさ』とクルミを両手に抱えた『オリス川オリス』がミステリー談義に花を咲かせている。


 やれやれ……欠席するつもりが結局周りに流されてこんな所まで来てしまった。








『言ってみなさいよ。あなたも少しは社交性が身につくかもよ?』


 ナタリーは私に社交性を身につけろと送り出した。



『おとしゃーん。猫極夏彦しゃんのサインを持らってきてー』


 コッコはファンだという猫極夏彦のサイン欲しさに私を送り出した。


 二匹が荷造りやらお土産やらを勝手に準備するので私はなんとなく逃げ切れず、結局こうして馬車に揺られている。


 せめてニャームズが付いてきてくれれば頼もしいのだが、『ドッグスフォード大学で講演会がある』と付き添いを断られた。

 友猫がいのない奴だ。


「……牛村京太郎先生と島田象司先生は欠席のようですね」


 猫の癖に黒い皮グローブを肉きゅうにはめている白黒猫……猫極夏彦が話しかけてきた。


「お会いしたかったのに残念です」


 牛村京太郎はう新幹線に乗り遅れて欠席だそうだ。

 時刻表を読み間違えたらしい。

 ……それでよくトラベルミステリー作家なんて言えたものだ。

 島田象司は動物園から脱走失敗……


 まあ二匹とも来ても馬車には乗れなかったろうが。


「……ニャトソン先生は1日にどれぐらい執筆されるので?」


 うーん……なんとなく妖怪じみたオーラがあるんだよな。


 猫極先生は。


 私は『1日千文字。書けないときはひと月はなにも書けないです』と答えた。


「猫極先生は?」


「私は……多い時は1日十万は書きますね」


「えっ!?」


 私が今まで書いた文字数を2日で越えるじゃないか。

 なんだ? この執筆マシーンは?


「……僕知ってます」


「えっ? なにをでしょう?」


「……ニャームズ先生はじつはニャトソン先生なんですよね?」


「いやいやいや……」


 北方ワンぞうもそうだが、こういうファンは結構いる。


 ニャームズは実在しないで私こそがニャームズだと思いこんでいるのだ。

 私がニャームズは実在しますよと言おうとしたら馬車が大きく揺れた。


「おっと!」  


「ここから先は吊り橋になるので揺れますよ。お気をつけください」


 馬車馬のカスケードが言った。

 ……もっと早く言え。


「ひゃあ……」


「これはすごい」


 窓から外を見るととんでもない高さ。

 そこが見えないほど深い谷だ。

 もし、今吊り橋が切れたらと猫背がゾッとした。


 牛村と島田象司には悪いが彼らがこないで良かった。


「……くくく」


 猫極が笑い出した。


 本当に君の悪い猫だ。


「……今の所ミステリー小説のテンプレですよね。山奥の別荘に向かう。そして……今夜は嵐になる。何か事件が起きそうですね」


「……」


 確かに空は暗くぐずっている。

 荒れそうだ。


 ミステリーのテンプレート感もある。

 私はいやな予感がした。



「……一匹、また一匹と死んでいく……」


「……やめてくださいよ」


「そろそろ『犬見館』につきますよ」


 カスケードが言った。


 嫌な予感ほど当たるものだ。


 私たちは犬見館で連続殺(動)物事件に巻き込まれることとなった。


「タイトルをつけるなら『犬見館の殺物』ですかねぇ……? ニャトソン先生?」


 猫極がニニャリと笑った。


 うーん……猫極夏彦……苦手だ。


 ……サインはいつもらおう?



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