ホワイトタイガー
「やぁイケ。また来たよ」
「ウガガ……」
それから数日。私は夜になると銀だら山の彼のもとを訪れた。
彼はとても素直でマニャーがよい猫だった。
必要最低限の獲物だけを獲物が苦しむ暇もないほどの早業で獲り、その瞳には生命に対する感謝と愛が溢れていた。
私は何度か彼とディニャーを共にし、彼を弟のように思い始めていた。
彼もまた私を兄のように慕い、私と彼の関係は良好だった。
だが……
〓
「なんの権限があってそんなことを言うのだ!?」
「君のためだぜ? ニャトソン」
次の日の夜……私はニャームズと喧嘩をした。
「君が僕に隠れてコソコソしているように僕がどこにいこうと勝手だろう」
「その通りだ。だがね。先ほども言ったが銀だら町には面白半分に獲物を乱獲するホワイトタイガーがいる可能性が高い。もし襲われたらただでは済まない。人間が奴を見つけるのを待ちたまえ」
「人間に? もし……ホワイトタイガーが人間に見つかったらどうなる?」
私は内心怯えていた。ニャームズが語るホワイトタイガーの風貌はイケに全て当てはまるからだ。
「人間に見つかったら? そうだね。よくて麻酔銃。悪くて……射殺」
「射殺!」
心臓が止まりそうになった。
「なぜだ!? 彼はなにも悪いことをしていない!? 第一彼が獲物を乱獲だなんてするものか!?」
「【彼】? まるで知り合いのようだね? ニャトソン」
「まぁ……動物にはオスかメスかしかないだろう?」
「うん。その通りだ。とにかく。ホワイトタイガー自体危険だし、君に流れ弾が当たる可能性もある。いい機会だニャトソン。僕の仕事を教えておこう。僕の仕事はね……」
「もう結構! 私は好きなようにやらせていただく!」
「む!? 待ちたまえ!!ニャトソン!!」
「うるさい!」
私は家を飛び出しイケのもとへと走った。