真・一犬背負い。
ワンドリャぁぁぁ!……犬の『おんどりゃあ』
ニャンターポール……猫のインターポール。
「ワンコロども! 今日こそ道頓堀にしずめたんど!」
「なんや! ニャン公のくせに! 通天閣に突き刺したろかい!」
マットドックスとクレイジーキャッツはすでに臨戦態勢だ。
ケーブは叫んだ。
「お前たち! やめるんだ! 猫たちも……」
「うっさいボケェ!」
「あんたみたいな腰抜けの言うことはもうきかねぇ!」
(だめか……)
聞く猫耳も犬耳もない。
こうなったらメス子どもだけでも被害が及ばないようにとケーブはキョロキョロとあたりを見渡した。
すると端の方で震える猫のメイドとその子どもらしき猫が目に入った。
(ずいぶんとでかい猫だな……)
「うニャー!?」
「わフン!?」
犬猫たちの驚きと恐怖の声。
今度はなんだと思ったらトラックが蛇行しながら公園に侵入してきた。
「例の幽霊車か!?」
(いや……幽霊ではない。あの車にはおそらく悪目が乗っているに違いない!)
犬猫たちはもう戦争どころではなくなりトラックにひかれないよう逃げ回った。
「……危ない!」
「いやあぁぁ!」
「ニャー!」
トラックはメイドと子猫に向かっていく。
「いかーん!」
ケーブは走った。
「火事場の……犬ぢからぁ!!」
トラックを顔面と肉きゅうで受け止めて止めた。
「あわわわ……」
「ニャー……」
親子は恐怖で動けないようだ。
「なにをしている……はやく……にげろ……」
(どう……すれば……?)
「おーい! もう大丈夫だ! 得意の一犬背負いを見せてやりたまえ!」
聞いたことがない声が聞こえた。
誰なのかなどと考えている余裕はケーブにはなかった。
ケーブは言われたとおり……トラックをぶん投げた。
「……ワンドリャぁぁぁ!」
公園の中央までぶん投げられたトラックが逆さまに落下した。
ガシャン!という音が公園に響いた。
「はぁっ……はぁっ……」
「化け物や……あかん……わい……道頓堀に沈められてまう……」
「ボ……ボス……」
犬も猫もケーブの怪力と迫力に恐怖した。
もう戦意などなくなっていた。
「権威も取り戻したようだし……とりあえず解散を命じていいんじゃないかな?」
「……お前は? 先ほどの声の猫か?」
見慣れない猫だった。
トレンチコートにオシャレな帽子……何猫かはわからないが、確かにそれが最善だと思った。
「……おまえらぁ!」
「「はっ…ハイッ!」」
現在が叫ぶと犬も猫もかしこまり返事をした。
「今日のところはぁ! 俺の顔にめんじて……刀をおさめちゃくれないか!?」
「「ハイッ!」」
素直すぎて逆に戸惑う。
「えと……解散!!!」
「「サー! イエスサー!」」
あっという間に公園から犬猫たちがいなくなった。
ケーブはメイドに歩み寄った。
「……怪我はないか? 大丈夫か? ほら。君も……」
「あっ!?」
「ニャー……わふん!?」
子猫の猫耳が取れている……
「君は……犬なのか!?」
「ああ! もうおしまいよ!」
メイドは子犬を抱きしめて泣き出した。
「どうか! このことはクレイジーキャッツには内緒に! この子は! 私の大事な……」
「……???」
猫耳をつけて子猫に変装した子犬……それを我が子だという母猫……ケーブは混乱した。
「混乱しているところ悪いけどね。これからもっと混乱してもらうよケーブ君」
「そうだ……お前は誰だ?」
「おっと! 僕としたことが! これは自己紹介が遅れまして!」
猫は二本足でたち、帽子を脱いで深々と礼をした。
「僕はニャーロック・ニャームズ。探偵さ。ニャンターポールでもありエフビーニャイでもある。この事件の真相が知りたかったらどうぞ僕の後に。『イヌンボ』も待っているし悪目とマサシ君もそろそろ目が覚めるだろう」
「イヌンボ?……悪目? マサシ……えっ! マサシ!? マサシがなんだ!? 何だってんだ!?」
つづく。