カンブ。
キャイン……犬のギャフン。ちなみに犬に人気の芸人はキャイーン。
ニャンて日だ!……猫の『なんて日だ!』ニャイきんぐのギャグ。
ここは『鈴猫高校(通称『鈴ニャン』)』……県内No.ワンワンワンワンワーーンの不良高である。
クレイジーキャッツのメンバーはここをたまり場としている。
生徒達の中には猫に落書きしたり猫に猫耳帽子をかぶせたりと悪ふざけするものもいるので、ここに集まるのはメンバーにとっての度胸ためしのような意味合いもあった。
「ほんまクソむかつくであの犬ども……」
鈴ニャンの屋上にあがってもいいのは幹部クラスのみ……。
「お前らワンコロどもになめられとんちゃうんか? たるんどるんけぇ? 道頓堀に沈めとんど!」
サングラスにアロハシャツ……扇子で顔を扇ぐとても猫とは思えないいでたちのタニー・ハナ・ウエチの三匹の猫が幹部猫『カンブ』を叱りつけていた。
「すっ……すんませんっす! これからは……」
「口だけではナンボでもいえるわい! はよ! 行動せんかい! わてらのテリトリーにいるワンコロどもみなごろしにする覚悟でやれぇゆーとんねん! いけ! はよいけ!」
「はいーー!」
カンブは猛スピードで走り去った。
「なんて運の悪い……厄日か?」
「ヒヒ……ヒヒヒヒヒ!」
カンブは運悪く鈴ニャンの生徒『悪目』に捕まってしまった。
悪目は身長150にも届かないチビで頭も悪く顔も性格も悪いいじめられた腹いせに猫をいじめる天敵だった。
「僕はいじめられっこだけどお前ら猫よりはずーっとえらいんだぞぉ!」
「うおぅ……」
壁に投げつけられたカンブは今日の己の不運を呪って叫んだ。
「……ニャンて日だ!」
「ヒヒヒヒヒヒヒ!」
(本当に厄日だ……)
「あの……大丈夫ですか?」
「うるニャイ!」
クレイジーキャッツの下っ端。
クレイジーキャッツで一番バカだと言われているメスの『メイド』に同情されるのは屈辱だった。
「ニャーニャララ?」
横にいるメイドの息子がまた不気味でカンブは胃がムカムカした。
図体ばかりでかくなり、いまだに言葉もままならない猫……
(知恵遅れのバカ親子が!)
「くそ!……イテテテテ……どうしようかな?」
(何か犬どもをキャインと言わせる方法はないだろうか……?)
「どうしたい? しかめっ面して?」
「お困りかい? クレイジーキャッツの旦那? なにか仕事があるなら引き受けるぜ? 報酬しだいだがな」
ワタリドリのメンバーが町をとぼとぼ歩くカンブに声をかけた。
(ワタリドリか……面倒な奴らだな。……まてよ?)
「こいつらに頼むのも……悪くないか?」
(そうだ。こいつらはどうせすぐにいなくなる奴らだし俺の肉きゅうを汚さなくて済む!)
「じゃあ……ちょっとお願いしようかなぁ……?」
その夜。
マットドックスの幹部『カン・ブー』が車にひかれて死んだ。
続く。