ワタリドリ
ワタリドリ……鳥の悪の集団。本部はトリノ。日本では鳥取に支部がある。バーッドやってきて悪さするバーッドな奴ら。
「ハッハッハッハッ! それはいい!」
「それでうちのカミュさんがね……?」
すっかりネコンボはマットドックスの集会に馴染んでいた。
特にネコンボのかみさん……『カミュさん』の話が面白かった。
「……おいおい。もう朝だ!」
ケーブは朝日が上りかけていることに気がついた。
メンバーたちも慌てだした。
マットドックスのメンバーはほとんどが飼い犬。
深夜にこっそり抜け出し集まっているのだ。
速く帰らなければ飼い主が心配する。
「撤収! 撤収! みんな帰れ!」
ケーブがそう吠えると犬たちは一斉に散っていた。
「危ない危ない……」
「いやあ……ケーブさん。見たところあなたはカリスマ性があるようだ。あなたに興味がわいてきましたよ」
「ネコンボ。それはありがたいがね。本来私は日陰の花を好んでね。リーダーなんてのも仕方がなくやってんだ。さああんたも帰んな。これからはあまり犬のテリトリーに入らない方がいい」
「ご忠告どうも」
こうしてケーブとネコンボは別れた。
ケーブはもうこの猫とは二度と会うまいだろうなと思った
「あっ……」
「おや?」
再会はすぐだった。
ケーブの飼い主は小学三年生の『マサシ』。
彼は体が弱く、彼と一緒に学校『犬丘小学校。略して『犬校』』に行き、一匹で家に帰るのがケーブの日課だった。
その途中でネコンボに会ったのだった。
「……あんたも俺を情けない飼い犬だと笑うのか?」
猫達は人間に尽くす犬を『鎖につながれた哀れな飼い犬』とよくなじった。
「いえ、あなたのしていることは立派なことだ」
「……ありがとう」
「……わあ! たすけてー!」
「ん!?……このやろう! ワンワンワンワンワーーン!」
鳥たちがマサシにちょっかいを出していたのでケーブが威嚇して追い払った。
「ふんっ!飼 い犬が!」
「俺たちの自由がうらやましいだろう!?」
鳥達は棄て台詞を残して去っていった。
ケーブはマサシの手をペロペロ舐めてもう大丈夫だと伝えた。
「ありゃあ……」
「ああ……『ワタリドリ』の奴らだ。集団でバーッドやってきてちょっかいだす臆病者だ」
「ワタリドリですか……その名の通り渡り鳥ですな」
「ほう……鳥に詳しいか? 町に迷惑かけて知らない間にいなくなるムカつく奴らだ。忘れた頃にまたくる」
「ああいう奴らを取り締まる動物がいないとダメでしょう?」
「む?」
ケーブはいつかは誰かがやらねばと思っていたことを指摘されドキリとした。
この鰹が丘には組織とそれをまとめるリーダーが必要だ。
「理想論だ。犬と猫が争いあってる段階でそんな組織つくれるわけ……」
「あなたならまとめられると思いますがねぇ……いいですか? 欧州、欧米では既に『ニャームズ』なる猫が『ドーサツ』という組織を立ち上げています」
「ニャームズだのドーサツだの……ネコンボよ。お前何猫だ? 普通の猫じゃねぇな? どこでそんな情報……?」
「おっと喋りすぎたかな? なに全部うちのカミュさんの受け入りですよ。それではまた!」
「おいっ!」
ネコンボは意外にも身軽にピョンピョン民家の屋根までのぼり、去っていってしまった。
「ドーサツねぇ……」