刑事ネコンボ
『これは僕の友猫と当時の関係者から聞いた話なのだが……』と前置きをしてニャームズは話し始めた。
「ドーサツの『狂犬誕生の物語さ」
ドーサツまだなき鰹が丘には二つの『チーム』があった。
『狂犬ケーブ』率いる『マットドックス』と『ハナ・ハジメ』『ウエチヒトシ』『タニ・K』の三兄弟が率いる『クレイジー・キャッツ』……今でこそ猫犬鳥と均衡の保たれている鰹が丘であるが当時は猫と犬の抗争激しく連日のようにぶつかり合っていた。
抗争……といってもリーダー同士のタイマン(?)であったが……
この日もクレイジーキャッツのメンバーたちとマットドックスのメンバーたちが見守る中、ミニチュアシュナウザーながらバリバリのリーゼントでキメていたケーブが三匹の猫に攻め立てられていた。
「ガチョーン!」
「うむぅ!」
タニーKの必殺技ガチョーンパンチでケーブは膝をついた。
「コツコツやるやつぁーごくろーさん! ほるぁ!」
とどめのウエチヒトシの無責任キックでケーブはバッタリと倒れた。
「わいたちの勝ちやでぇ~。ほんま! いい加減わいたちの傘下にくだりーやあんはん!」
ハナはじめがケーブのリーゼントを掴んで頭部を揺すった。
「グウゥ……誰が……お前らみたいな町のボスを気取りたい野蛮な猫どもに……」
「なんやとぉ!? わてらが野蛮ならあんはんはなんや! 同じやないか! あんはんかて鰹が丘のてっぺん立ちたいんやろぉ!? 道頓堀に沈めたんど!」
「俺はお前らとは違う……俺は兵隊じゃなくて仲間が欲しいんだ……」
「アホかぁ!」
三匹の猫は一斉に唾をケーブのリーゼントに吐きかけた。
「あんたとはやってられんわ!……ほなサイナラ!」
ハナはじめのその一言で今夜の抗争は終わった。
「ケーブ……ケーブさん!」
クレイジーキャッツのメンバーが去っていくとマットドックスのメンバーたちが一斉にケーブの元に走ってきた。
「大丈夫ですか!? ケーブさん!」
「おっ……おお……たいしたことねえよ……」
「クソッ! きたねぇよあいつら! ヘッド同士のタイマンなのに三体一なんて……」
「仕方ねぇさ……あいつらはリーダーが三匹いるんだからな……筋は通ってる。アイテテテ……」
「ケーブさんは優しすぎますよ……それにケーブさんが本気を出せば一犬背負いであいつらなんか……なんで手を出さないんです?」
「暴力じゃ仲間はうまれねぇ。心を叩いて初めて絆が生まれるんだ……ん?」
噴水の方が騒がしい……どうやらマットドックスのメンバーが猫を捕まえたらしい。
汚いコートを着たオスネコがケーブの前に連れてこられた。
「こいつぅ! クレイジーキャッツのメンバーですかね!? ボコにしてやろうか!?」
「いやいや……なんの誤解があるのか知りませんがわたしゃぁただの野良猫で……へへ」
ケーブはオスをよく観察した。
確かにクレイジーキャッツではみない顔だ。
「離してやれよ。お前……名前はなんだ?」
「へえ……「ケージ……ケージ・ネコンボ」と申します」
「け……『刑事ネコンボ』ぉ?」
ケージとケーブがここに出会った。
つづく。




