ディネコ
『ビリニャル』……猫のビリギャ……
『ニャーゼント』……猫のリーゼント。一メートル。
『ディネコ』……猫のディスコ。
『ネコ・コーラ』……猫の炭酸飲料。
僕がニャー探偵に興味を持ち出したキッカケ……『闇黒の家』事件について語ろう。
この事件はなかなか『怪奇』でホラー要素もあるのでなかなかエンターテイメント性にとんだ事件だと思う。
この頃の僕は1歳になったかならなかったか……
舞台は1970年代のイギリス『アディ・フライシティ』でこの頃の僕ははっきり言ってグレていた。
将来に対し漠然とした不安を抱えていたし、僕の『ニャルバトルンハイスクール』での成績は決してほめられたものではなかったので大学も諦めていたし、周りはワルの仲間ばかりだった。
信じられない? まあ今の僕からでは想像しにくいだろうが、僕も普通の不安定なヤングキャットだったのさ。
『成績はどれぐらい悪かったか』だって?
悪いなんてもんじゃない。
ビリさ。
ニャルバトルンハイスクールの生徒は『ニャル』と呼ばれていて当時の僕のニックネームは『ビリニャル』だった。
オマケにつっぱることがたった一つの純情だと思っていたし、溢れるほど愛しても三分の一も伝わりゃしないと毎日ディネコでネコ・コーラを飲みながら自慢のニャーゼントを振り回しツイストを踊っていた。
どこからどう見ても完全にグレていた。
「おいっ! ビリニャルのニャーロックよ! また来たぜお前のお兄様が! 坊やは家に帰った方がいいんじゃないのかい?」
悪友たちが僕を連れ帰る為にディネコに来た僕の2歳半年上の兄『マイクロネコ・ニャームズ』を見つけて僕をからかった。
「ニャーロック。またこんな所で……さあ帰るんだ」
「うるせぇな! 僕にかまうな! みんなの前で恥をかかせるなよぅ!」
「おぅおっさんよ? こんな所とはご挨拶じゃないか? 俺たちは楽しんでるんだぜ?」
新顔のオスがマイクロネコに詰め寄っていく。
周りの空気が冷たくなる。
誰かが『バカな奴……』と呟いた。
「君は未成年だな? 早く帰りたまえ」
「あんま調子に乗るなよ! おっさん!」
「ふんっ!」
「おおぅっ!?」
マイクロネコは胸ぐらを掴んできたオスの肉きゅうを素早くひねり、そのまま投げ飛ばした。
でぷっとしたマイクロネコが恐ろしく強いのはこのディネコでは有名だった。
「……」
「すまないね。やりすぎた」
オスは失神し、マイクロネコは襟元を整えた。
「さあいくぞニャーロック」
「……わかったよ! じゃあなみんな!」
僕はマイクロネコに引っ張られディネコをでた。
『マイクロネコ・ニャームズ』……『ニャー術』の達猫にして『ニャーバード大学主席卒業』……僕はこの兄にコンプレックスを持っていた。
マイクロネコと比べられるのが本当に本当に嫌だった。
続く。