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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
ネコネコアザラシ事件
105/203

水入りペットボトル

ウサイン・ボネコ……世界最速の猫。

 私は走った。


 私の命と引き換えでいい。

 コッコよ生きてくれ。


 最速で生シラス病院へ向かう森を一キロは走っただろうか? 急に私の体がガクンと揺れた。


「な……なんだ!?」


 地面が崩れる……これは!


「落とし穴だ!」


 落とし穴……ホワイトの顔が浮かんだ。

 そういえば予言から12時間……私は死ぬのか?


「コッコよ生きてくれ!」


 私が最期に選んだ言葉は、それだった。

 ああ……落ちていく……

ん? 誰だ私の肉きゅうを握るのは? 天使か?


「ニャトソンさん! そっちの肉きゅうも使って!」


「おお!」


 肉きゅうを握っていたのはニャンダイチだった。

 私はふと下を見た。

 物凄い高さだ……それに底には竹槍……私は本当に死にかけたのだとゾッとした。


「さあ早く上ってきて! ニャトソンさんダイエットなさった方がいいです。いやそれにしては足が速かった。私がアフリカでウサイン・ボネコに走り方を教わってなければ追いつけなかった」








「コッコ!」


「……?」


 ナタリーとコッコはいつもの病院のガラスの向こうにいつものようにいてくれた。

 よかった……。


「さて……こんなところじゃなんですからニャームズのアジトへ行きましょう。説明しますよ。あなたの執筆にきっと役立つ話です。今頃はグレイとホワイト……それに一部のネコネコアザラシ教の信者たちがドーサツのお縄にかかったことでしょう」


「なに? なんだと!? わからん! グレイ氏まで? なんで?」


「ちゃんと説明しますって」











「つまり……です。ホワイトの予言は心理学と行動学に基づいた実に理論的なものでした」


 ニャームズの家につくとニャンダイチはニャームズのようにウロウロと歩きながら説明を始めた。


「ニャトソンさんを操るのは実に簡単だった。コッコが危ない! 生シラス病院にいる! 近道をせねば! ほーら。そこに落とし穴を作っておけば予言的中です」


「にゃ……にゃるほど」


 驚いた。


 聞かされてみればなぁんだという話じゃないか。


「じゃあニャンダイチ。あの手紙は……?」


「ネコネコアザラシ教の奴らが置いていったのです。昨日の夜にそれを玄関口に入れ、あなたを呼び出し、死の予言をする……奴らはフジンが大学へいく時間も計算していたのでしょうね」


「おお! なんということだ!」


 こんな簡単に操られてしまうとは……

 読者諸君も自分の行動パターンを思い返して欲しい。

 あなたに殺意を持つものがもしそのパターンに気づいたら……

 あなたは罠にはめられるかもしれない……これは声をニャーにして忠告したい。


「じゃあ……ニャンキチさんも?」


 行動パターンを読まれ、操られたということか?


「そうです。これによってね……」


 ニャンダイチは水の入ったペットボトルを取り出した。


「それがなんだ?」


「猫除けの水です」


「あー聞いたことはある」


 猫を避けるため人間がこのような物を置いておくとニャームズがいっていた。


「しかしそれがなんだ? 別に私たちはそれを恐れないし……」


 そうなのだ。

 我々猫は別に水の入ったペットボトルなど怖くも何ともない。


「確かに恐れません。しかしニャンキチさんは人間が大好きな猫だった……わかりますか?」


「ニャンキチさんはそうだったな……あっ!」


 そうか!


「いつもの散歩コースにペットボトルが置いてあった……ニャンキチさんは自分が避けられていると思ったはずだ。人間好きなニャンキチさんはそれを察して散歩コースを変えた。そしていく先々に水の入ったペットボトル……彼はそれらを避けたどり着いたのが……」



「トビウオ町だな!?」


 ああ! そんな! 人間を思うあまり彼は殺されたのだ!


「前日にペットボトルを置くネコネコアザラシ教の信者が目撃されています。おそらくはニャン美が彼の行動パターンを信者につたえたのでしょう」



「……」



 悲しい。


 私は宗教の見てはいけない裏側を見たような気持ちになった。




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