キトク
生シラス病院……今が旬な病院。
「……」
どうにも落ち着かない。
ホワイトに死の予言をされた私はフジンの家でなにをするでもなくただジッとしていた。
家の前にはドーサツの見張り。
今頃私がよく歩くルートも徹底的に捜査されているだろう。
こうして家でジッとしていれば殺される心配もない。
私は予告時間を過ぎるまで家からでないつもりだった。
そんな久しぶりに家に帰ってきた私をフジンは一通り可愛がり、カバンを持って立ち上がった。
「じゃあニャーちゃん。大学にいってきます」
「イッテニャッニャイ」
私はフジンに見送りの言葉をかけた。
「どんどん言葉が人に近づいてるような……」
「アオツケテネー」
「気をつけてといったような……あら? 玄関口に何か入ってる? いたずら? ヤバッ!時間がない! まあいいや。いってきます!」
フジンはハガキらしきものを靴箱において出かけた。
はてあれは何だろう?
好奇心を刺激された私は靴箱によじ登ってそれをみた。
「これはネコ語の手紙じゃないか……なにぃ!?」
手紙には『コッコノヨウタイトツゼンワルシ。キトクナリ。ワガビョウインデハウツテナシ。ナマシラスビョウインヘシキュウコラレタシ』
と書かれていた。
コッコが危篤? 生シラス病院? 私は気づけば玄関の猫用出入り口から飛び出していた。
「コッコ! 今いくぞ!」
「ニャトソンさん!? いけませんよ外にでては!」
玄関前にいたケーブが私を止めたが知ったことではない。
読者諸君。
このときの私は頭に血が上っていた。
『人間の病院からなぜ猫語で手紙が?』とか『そもそもなぜ手紙で?』などと考える余裕はなかった。
コッコ、コッコ……我が息子のことで頭が一杯だった。
一刻も早生シラス病院へ駆けつけなければ。
「おや?」
「ニャトソンさん?」
「うおぉぉぉ!」
少し薄汚れ、疲れた表情のニャンダイチとショカツとすれ違った……気がした。
「何かあったの?」
「えと……」
ニャンダイチが近くにいたドーサツに声をかけていた。
「ふむ……」
日本で初めてかかれたとされる『釣りの本』。
津軽政たかの何羨禄はやはり興味深かった。
僕はしばし身内に次々と先立たれた津軽政たかのあまりにも数奇な人生について考えていたが、ハッと我に帰り久しぶりにニャトソンのスニャホに電話をかけた。
「……でない?」
まあいいさ。
大した事件ではない。
『グレイ氏の嘘』についてはいずれFAXで回答を送ってやるとしよう。