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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
ネコネコアザラシ事件
102/203

ヤクザとホワイト

ネコイスト……ニャン権侵害とかする勝手な猫。

 ネコネコアザラシ教本部に近づいた私は早々に信者たちに見つかり、罵声を浴びせられていた。


「ニャン権侵害!」


「差別主義者!」


「この魂の汚れたネコイストめっ!」


「いや……違うのです。私はたまたま通りかかっただけで……」


「嘘をつけ! 我々は知っている! 貴様はニャトソン。偉大なるホワイト様の超能力を信じずドーサツの犬どもに協力するいやらしい猫だ! このネコネコアザラシ教本部『ホワイトベース』はお前なんかがくる場所じゃない!か・え・れ!」


 驚いた。


 私もずいぶん有名になったものである。

 しかしドーサツの犬どもは言いすぎだろう。

 あっ、本当に犬か……


「か・え・れ!」


「うわわっ!」


 肉きゅう握手をして横一列に並んだ信者たちが帰れの大合唱をしながらにじりよってくる。


「これはたまらない!」


 私は大慌てで山を下りた。


 いいさ、そろそろグレイ氏に会いにいくとしよう。






「ホッホッホッ……」


「ハッハッハッ……」


 猫日本史の筆者グレイ氏はなんとも話し上手な好々爺だった。

 私はしばし事件を忘れ、彼と長話をしてしまった。

 まぁ私がほぼ一方的に妻や子供の話しをしただけだが。


「ニャトソンさん。そろそろ……」


 ケーブに耳打ちされ、私は本来の目的を思い出した。


「ああそうでした……グレイさん。ホワイトの父親……初代ホワイトの記録を見せてもらえますか?」


「ええもちろん」


 グレイ氏は立ち上がり書斎に赴き、ノートを持って戻ってきた。

 私は彼に礼を言い、まだ真新しさの残るそのノートを開いた。

 そして息をのんだ。

これがほんの十年前の東京の話しだというのか!?

 初代ホワイトは化け猫か!?


 読者諸君にも私がニャームズにFAXを送るため、内容をまとめた物をご覧入れよう。







 19○○年。記録者タマ吉。



 自分には不思議な力がある……俺は化け物か?

 ホワイトはこのところそう思うようになっていた。

 『ネコネコアザラシ』……これはたまたま思いついた言葉だった。

 人間に怒りと憎しみを感じたとき……これを唱えるとその人間は不幸になった。

 この日も例外ではなかった。

 ホワイト氏は人気のない隅田川の川原を散歩していた。

 一時の釣りブーム時は釣り船で溢れかえったものだが、今は優男が1人たまにひっそりと舟を出し、釣りを楽しみ、ひっそりと帰って行くだけである。

 ホワイトは人間嫌いだったのでこれはよかった。


「てめぇこらっ! くせぇんだよ!」


 いかにも柄の悪そうなモヒカン男がホワイトを見るなりいきなりホワイトの腹を蹴った。


「こっちはストレスで超イライラしてんだよ。そうだ! お前のせいだ! 死ねっ!」


 めちゃくちゃな事をいう男である。

 ホワイトは毛を狩られ火で炙られ、川に放り投げられた。


(ネコネコアザラシ! ネコネコアザラシ!)


 ホワイトが呪文を唱え、川から顔上げるとモヒカン男は大男に羽交い締めにされていた。


「すんませんっ! 自分マジ調子のってました! 就職きまんなくて……イライラしててその……あのっ! 親父が金を払いますから! 勘弁してください! 殺さないで!」


「ファックだぜお前……おいお前ら。こいつ殺っちまうか……?」


「イエスボス……」


 借金取りのヤクザだろうか?

 黒い帽子を被った小柄な男がボスらしい。

 大男がモヒカンの首を掴んで持ち上げ、そのまま歩き出した。

 ホワイトは呪いに成功したのだと思った。

 後日モヒカン男の首だけが街で発見され大騒ぎになった。

 ホワイトは人間を呪い殺したのである。

 その後彼は『ネコネコアザラシ』という呪文を動物たちに広め、『ネコネコアザラシ教』の初代教祖となった。


「あっ! ちくしょう! またかよあいつ!」


 釣り船にのっていた男が騒ぎを聞きつけホワイトの横まで走ってきた。  


「お前がやったのかよ?……いい加減にしろよ……クソガキぃ!」 


 最後の言葉は帽子の男に浴びせたらしい。


「釣果はゼロだし……あーっ! 八丈島にでもいきてーわ! ばーかーやろー!」


 男は石を蹴って去っていった。




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