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冥府の剣  作者: 梅院 暁
第4章 罠の凶音
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第66話

 明智(あけち)(まこと)達は敵の包囲を逃れた後、市内のセーフハウスに退避していた。

 勝連(かつら)(たけし)太刀掛(たちかけ)(ひとし)吉弘(よしひろ)丈二(じょうじ)(のぼり)大呉(だいご)の幹部達は報告のため、本部に戻った。セーフハウス内にいるのは、ほとんどが一般の隊員達だ。

 現在、梓馬(あずさ)つかさが治療を受けていた。そのために派遣されてきたのは、司令官秘書の結城(ゆうき)まどかだった。

 治療中、明智(あけち)勇海(ゆうみ)達は部屋の外で思い思いに過ごしていた。形ばかりコーヒーを入れたものの、一切口に付けずに結果を待っていた。

 やがて、まどかが部屋から出てきた。

「どうだった?」

 一同を代表して勇海がまどかに尋ねる。

「安心して。命に別状はない。マグナムの衝撃で痣は出来ていたけど、幸い急所は外れていたし、触診でも骨に異常はなかった。ただ、少し安静にさせてあげた方がいいわ。念のため、精密検査も受けた方がいい」

 まどかが答えたことで、一同に安堵の雰囲気が漂う。

 ホッとしたのも束の間、「それにしても」とまどかが続ける。

「危なかったわね」

「あぁ。あれだけの増援……最初から包囲する目的がないと集められない」

 勇海が応える。

「意図的に流された情報だったかもしれんな」

 雲早(くもはや)(しゅう)も会話に加わった。

 言い合うのを聞きながら、明智は今回の作戦を振り返る。

 今回の作戦は、霧生組と黄鱗会が拠点としている五カ所を同時に攻めた。その際、他の支部からの応援があったとはいえ、一拠点に注ぎ込める戦力はどうやっても少なくなる。そこを狙っての囮を配置しての包囲――確かに、敵側はわざと情報を漏らしたと考えれば納得が行く。

 ここまで考えたところで、明智の脳裏に嫌な可能性が一つ浮かんだ。それも、考え得る限り、最悪の可能性だ。

「……ところで、今回攻めた拠点の情報は、どうやって入手した?」

 明智がその直感そのままに、尋ねる。

「黄鱗会に潜入している諜報部のメンバーからの情報だ」

 勇海が答える。

「そのメンバー、まだ潜入中なのか?」

「え?」

 一息入れていた花和泉(はないずみ)(みゆき)名雪(なゆき)琴音(ことね)が惚けた声を上げる。あれだけの修羅場の後だから仕方ないとはいえ、大分緊張感に欠けていた。

「今回の敵の増援、明らかに最初から仕掛けられていた」

「あぁ。でもこっちも援軍のおかげで返り討ちに――」

「重要なのはそこじゃない」

 明智はもどかしく返す。

「問題は、敵は俺達を誘い込むために、そのメンバーに偽の情報を掴ませたってことだ」

「――しまった!」

 花和泉が叫んだ。どうやら、明智の危惧している内容に気付いてくれたらしい。

「……今回の敵の目的は、私達の包囲殲滅……」

「そしてもう一つ」

 明智は確信を持って叫ぶ。


「潜入したスパイの炙り出しだ!」

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