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冥府の剣  作者: 梅院 暁
第3章 逆浪の百矢
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第48話

 勝連(かつら)英賀(あが)が武装集団と銃撃戦を行っていた頃――

 福建マフィア、黄麟(おうりん)会の構成員達が中国製短機関銃79式冲鋒槍を手に施設内を進む。拳銃しか装備していない警備員達を数の暴力で制圧し、買収された査察官がいる場所を目指す。

 そして、間もなく辿り着こうとしていたが、

「残念、通行止めだ」

 と、背後から声が掛けられる。

 男達は一斉に振り返った。

 先程の声の主が、両手に持った拳銃を撃ち始める。

 チェコ共和国のチェスカー・ゾブロヨフカ社製の自動拳銃、CZ75。高い工学精度より、命中精度の高い拳銃として軍用・民間問わず高い人気がある。それを、左右の手に一丁ずつ計二丁構えている。

 雲早(くもはや)(しゅう)が撃つ度、黄麟会の男達が撃たれ、倒れていく。右手のCZ75から放たれた9mmパラベラム弾が撃ち抜いた瞬間に、左手のCZ75が火を噴く。まるでコンピュータ制御された銃座のように、目標を正確に撃つ。

 やがて左右の拳銃のスライドが後退したまま停止し、弾切れを知らせる。このときには、黄麟会の男達は全滅していた。

 しかし、その中の死体の一つが突如動いた。頭を撃ち抜かれたはずの男の身体が、雲早目掛け飛んでくる。

「む!」

 雲早はその男を咄嗟に蹴り飛ばす。

 そこへ、別の敵が迫った。その男は、今まで絶命した仲間の身体を盾にして機会を窺っていたのだ。その両手には、中国武術の暗器の代表格、匕首が握られている。刃渡り十六センチ前後の短剣で古くから数々の暗殺に用いられてきた。

 男の右手の匕首が雲早の首に迫った。雲早は拳銃を握ったままの拳で、刃の腹を叩いて逸らす。男が逆の手の匕首を突き出してきた。今度は、肘で剣腹を叩く。男の三撃目。振り方を変え、下から斬り上げてくる。

 雲早は一歩踏み込むと、斬り上げてくる腕を脇で挟み込んだ。驚いた男は、もう一方の匕首で斬り付けようとするが、遅かった。雲早の蹴りが男の足を払った。バランスを崩した男の腕を挟み込んだまま腰を捻り、男の体を振り回す。男の体が遠心力に抗えず、掴まれた腕が伸び切り、それでも間接への負荷が止まらず、折れる。悲鳴を上げる男を放して地面に叩きつけた。弾倉を交換し、その頭に銃弾を撃ち込む。


「雲早!」

 勝連(かつら)英賀(あが)が駆けつけた。それぞれ、襲撃部隊から奪ったG3ライフルにFALO機関銃を所持している。

「無事だったか」

「こっちは何とか片付けました。そちらも無事なようで何より」

 雲早は応えつつ、倒した男達の死体を足でひっくり返し、息の有無と顔を確認する。

「黄鱗会か?」

「ご明察の通り。ご丁寧に幹部までいました」

「こちらで片づけた連中は欧米系の顔立ちでした」

 英賀が雲早に情報を伝える。

「黄鱗会と組んでいる……となれば、思いつくところは一つでしょう」

「……ナインテラー、か」

「普通に考えれば、捕まった査察官の口封じでしょう。武装集団による襲撃とは効率が悪くは思えますが……」

「ここまでのことは想定されていないでしょう。はっきり言って、ナインテラー達の知名度が、この国では低過ぎる」

 雲早の言葉を受け、英賀が吐き捨てる。相手にとっての誤算は、勝連達が尋問のためにこの施設に来ていたことだ。

 外で、エンジン音がした。

 窓に駆け寄ると、黄鱗会とナインテラーの混成部隊を運んできたトラックが、再度動こうとしていた。勝連達が撃ち漏らした敵が、慌てて荷台に乗り込んでいる。

「逃げる気か!」

 相手も、計算外の抵抗に多くの同胞が返り討ちにあったため、撤退を決断したようだ。

 勝連は持っていたG3ライフルの銃床で窓ガラスを叩き割る。G3を構え、運転席の男に照準を定めた。三回、引き金を絞る。トラックのフロントガラスに弾痕が生じ、内側から鮮血で赤く染まった。今度は助手席に照準を切り替え、再度三連射。助手席の男も始末したのを確認し、最後にタイヤを狙って連射する。その内の一発がタイヤを撃ち抜き、トラックは走行不能に陥った。

 普段使っているM14とは使い勝手が違うため不安だったが、何とか逃亡は防げそうだ。

「ただ、ここの警備員で連中を捕まえられますかね? 死に物狂いで抵抗されたら、何人死人が出るか……」

「そこは問題ないだろう」

 英賀の心配を聞きながら、雲早が空を指す。

 ヘリコプターが飛んできた。それは、MDSIで所有している機体だ。トラック上空に差し掛かると、一斉に隊員が降下し、荷台に残った敵を制圧にかかる。

「来るのに時間が掛かり過ぎだが、この働きに免じてチャラにしてやりますか」

 突然の襲撃もあっさりとした幕引きとなった。

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