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冥府の剣  作者: 梅院 暁
第2章 冥漠の星影
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第44話

 明智(あけち)(ひとみ)を送りに行ったのを確認すると、

「さて、喜三枝(きみえ)さん、二次会の会場はどこです?」

 レイモンドが美妃(みき)に尋ねる。

「今、悟道(ごどう)さんからメールで来ました。今、全員に転送しますね」

 勇海(ゆうみ)達の携帯に、一斉にメールが届く。

 そこに書かれていたのは、先程のヤクザ達の事務所の住所だ。悟道(ごどう)が尾行の末に突き止めたのだ。

「しかし、喜三枝さんも鬼ですね……金払っておいて、結果として潰すんですか?」

 (たくみ)が笑みを浮かべながら聞く。

「ヤクザにあんな大金渡ったところで、碌な使われ方をされないでしょう? それに、渥美(あつみ)さんにまた纏わりつかないとも限りません。ヤクザの口約束なんて、信用ありませんからね」

「ある意味下手なヤクザより怖ぇや」

 レイモンドが肩をすくめる。

「まぁ、さっき暴れ足りない分やらせてもらうわぁ」

 駿河はやる気満々のようだ。

「武器は?」

「車の中に入ってるわ。拳銃なら、全員分あるはずよ」

「用意いいですね」

 あれこれ言いながら、MDSIの面々は準備をし始める。

「で、どういうつもりなんです、美妃さん?」

「なんのことでしょう?」

 盛り上がっている彼らから少し離れたところで、勇海は美妃に問う。

「とぼけないでくださいよ。貴女なら知っているはずだ。マコトと……あの渥美瞳って娘との関係をな」

 美妃が完全に口を紡ぐのを確認し、さらに続ける。

「皮肉なもんだな……自分を助けてくれた人間が、まさか自分の恋人を殺したとは、彼女は夢にも思うまい……一体、いつの間に出会ったんだ?」

「私の訓練受ける前だそうよ。彼が婚約者の墓参りに行った際に、同じ墓地で彼女の恋人は眠っていた。彼女は『真智(まち)(あきら)』が死刑になったことを墓前に報告しようとしていたそうよ」

「そして、『明智(あけち)(まこと)』になったあいつが目の前に現れたわけだ……くそ、笑えねぇ……」

 勇海は真智明をMDSIにスカウトするにあたって、生まれからこれまでの経歴を調べていた。

 当然、彼が死刑になる切掛けとなった事件も。

 死亡した(おき)鉄也(てつや)についての情報はほとんど集まらなかったが、渥美瞳という恋人がいることが分かった。

「彼女を会社に入れるのは、まだ分かる……だが、マコトの連絡先を教えたのはどういうことです?」

「どういうことと言われましても……彼なら彼女と面識あるのですから、連絡の敷居も低いでしょう?」

 一瞬、本気で言っているのか、と勇海は美妃の正気を疑った。

 彼女と関われば関わるほど、明智の精神は罪悪感に責められる。根が真面目なだけに、その消耗は激しいものになるに決まっていた。

「だが、あいつは……」

「彼は『明智真』よ」

 勇海は絶句する。

「渥美さんの恋人を殺したのは、この前死刑になった『真智明』ではなかったかしら?」

「あ、あんたは……」

 勇海の声が震える。

 あくまでも、明智と真智は別人であると言い張るつもりか。確かに、データ上はそうだ。しかし、その心は別人に為り切れるわけがない。

「こんなことで追い詰められているようでは、この先思いやられるだけですよ?」

 反論を必死で考える勇海に、美妃が止めを刺す。その眼は冷め切っていて、まるで家畜を見ているようだ。

 その様に、勇海は戦慄を覚える。

「おい、ユーミぃ、行くぞ!」

「あ、あぁ……」

 レイモンドに呼ばれ、勇海は車に乗り込む。

 車が出る前に見た美妃は、すでに関心を失っていたようだった。

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