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冥府の剣  作者: 梅院 暁
第2章 同じ顔の女
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第109話

 駿河(するが)達が正面で暴れている間、工場裏に回っていた五人は、さらに二手に分かれた。

 ルナと(くすの)の二人は、工場の換気や雨水を地面に流すための配管群が外に密集しているのを見つける。それらを足場に、工場の二階へ向け上り始めた。

 先導する楠が危なげなく二階の窓に到達し、中の様子を伺う。窓の向こうはスロープになっており、近くに人影は見当たらない。正面の騒ぎに気を取られているのだろう。

 ルナが追いつき、二人は手振りによるサインで行動を示し合わせる。

 確認が終わり、楠が窓に手を掛けた。鍵が掛かっておらず、簡単に開いた。二階以上になると、どうしても安全意識が疎かになるのは犯罪者も同様らしい。

 あっさりと侵入に成功したが、金属製の足場に降りた瞬間、金属特有の甲高い振動音がした。

「なんだ!」

 近くにいた敵がその音に気付く。声の方向を見れば、これから太刀掛(たちかけ)達が突入する予定の裏口付近にも、敵が集まっていた。

 やはり敵も間抜けではなく、裏口からの別働隊を警戒していたらしい。

 まずい、と思い、楠が足場の上を駆けた。

 それを追いかけるように、敵の一部が発砲する。幸いにも敵は光源を最低限にしており、内部は薄暗い。結果、狙いが定まっていなかった。

 とはいえ、時折楠の足下付近で弾丸が跳ね、火花を散らす。飛んでくる銃弾の飛翔音と相まって中々恐怖を煽ってくる。

 走っていると、前方から足場を乱暴に踏む音が響いてきた。梯子か階段で上がってきたらしい。

 楠は背中にスリングで回していたG36Cカービンを構え、セレクターをフルオートにセットする。

 前から来た男が、懐中電灯で楠を照らした。

 思わず楠が目を細める。

 他の二人が持っているUZI(ウージー)サブマシンガンの銃口が楠に向く。

 相手が引き金を引く前に、楠は身を沈めた。放たれた弾丸が、転がる楠の上を通過する。

 楠は懐中電灯と発砲炎を頼りに狙いを定め、G36Cを撃った。胸に数発のライフル弾を受けた男が倒れ、懐中電灯が光を放ったまま下に落ちていく。


 楠が敵を引きつけている間に、ルナも窓から入った。こちらはUMP短機関銃を、下から楠を狙っている敵に向ける。二、三発ずつに区切った短連射で、9mmパラベラム弾を撃ち込んだ。

 ルナの存在に気付いた敵が矛先を変える。ルナは短機関銃を撃ちながら走った。楠とはすぐに合流せず、途中で分岐する足場を、楠と別方向に移動する。

 こちらでも、前に敵が現れた。

 ルナは、UMPのハンドガード下に付けていたタクティカルライトを点灯させる。軍隊で使われるライトは、照準器代わりに使えるように照射範囲を狭め、一般のものより強力な光源を使用している。

 暗い中突然発生した強い光で、前から来た二人の男の視界が真っ白に塗りつぶされた。

 光の当たっている男の頭を撃ち抜き、即座にライトを消す。暗闇でライトを点けっ放しにすると、完全に良い的になってしまう。ライトを点けるのは一瞬、必要なくなったらすぐに消すのが、夜間戦のセオリーだ。

 二人が二階の足場を駆け回りながら、時に下の敵を撃ち、スロープに上がってきた敵を倒しながら、錯乱する。

 上ってきたばかりの男を返り討ちにしながら、ルナは喉に着けたスロートマイクを押さえ、外部に連絡を取った。

「こちらルナ。敵は浮き足立っています! 突入可能ですか?」



 その通信を、明智(あけち)達三人は、工場裏口で聞いた。

「承知した。これより内部に突入する」

 太刀掛(たちかけ)が、小太刀に付着した血糊を振り落としながら応えた。彼の足下には、裏を見張っていた男が二人、頸動脈を絶たれた状態で転がっている。

「明智、やれ」

「了解」

 明智が、持っていたM4カービンのハンドガード下に取り付けた、M26MASSショットガンの銃口をドアノブに向ける。一粒(スラッグ)弾が放たれ、ドアノブを粉砕した。ボルトハンドルを前後に動かして排莢し、次弾を装填、発砲し、蝶番も破壊する。

 先程までドアだった板を蹴り倒した。

 一歩内部に踏み入れた途端、左からナイフを持った敵が襲いかかる。

 明智はその斬撃を回避し、カウンターで、M4カービンの銃床を顔面に叩き込んだ。男の体がひっくり返る。

 今度は、右から別の男が斬り掛かってきた。

 これも避けつつ、銃床を小さく振り下ろして手首に当て、ナイフを弾き飛ばす。

 ここで、男が体勢を低くして明智にぶつかってきた。タックルを食らい、カービン銃を手放す。

 そのまま押し倒そうとする男の鳩尾目掛け、明智の右膝が上がった。

 膝蹴りを食らい、一瞬男の力が弱まる。その瞬間を狙って、右肘を振り下ろした。後頭部を強打し、男が床に伏した。

 明智は一息吐く間もなく、すぐに移動する。

 そこへ襲いかかってくる、大量の銃弾。

 二人と格闘している間に、敵側には明智の位置が筒抜けになった。そのまま同じ場所に留まっていたら、今頃明智は蜂の巣になっていただろう。

 入り口から、太刀掛と望月(もちづき)が、援護に入った。明智を狙うマズルフラッシュを目標に、カービンを撃つ。悲鳴とともに、敵が倒れた。

 太刀掛はドイツのオーバーランドアームズ社製のM4クローン、OA-15XSを、望月はM4カービンの短銃身(ショートバレル)バージョン、CQB-Rを装備していた。どちらも短銃身による室内戦重視のモデルだ。

 明智も、二人の援護を得ながらM4カービンを構え直す。短連射を繰り返し、稼動しなくなったベルトコンベアまで移動する。

『マコト、9時の方向!』

 通信機から、警告。

 明智は咄嗟に左手でコルト・ローマンを抜き、自身から見て左手側に向け発砲。

 放たれたマグナム弾が、回り込もうとしていた男の右肩を撃ち抜く。

 撃たれた相方を見て、もう一人の敵は反応が僅かに遅れた。次の瞬間、二階からの銃撃であっさりと無力化される。

 明智が目を細めて上を確認すると、先程警告を送ってくれたルナが、短機関銃の弾倉を交換していた。

「助かった」

『まだまだ注意が足りない!』

 礼を述べると、叱責が通信機越しに返ってくる。

「申し訳ない」

 言いつつ、もう一発コルト・ローマンを撃つ。先程右肩を撃たれた男が、今度は拳銃を抜いた左手を撃たれ、激痛で床に転がった。

 そこに、太刀掛と望月が合流する。

「中に入った。様子はどうだ?」

 太刀掛が、通信機でルナと楠に問いかける。

『奥の個室群が見えますか?』

 ルナからの返信。

 言われたとおり、工場の奥を注意深く見渡すと、ガラス張りになった個室や、別室へのドアなどが辛うじて確認出来た。おそらく、機械の操作室や、簡易的な休憩所、喫煙所などだろうと、この建物の構造を脳裏に浮かべながら予想を立てる。

『相手はひっきりなしにこちらに敵を差し向けていますが、一部の個室のみ、陣取って人員を動かしていません』

「なるほど、奴らにとって重要なものはそこにありそうだな」

 太刀掛が、ルナの発言から考えを先読みしてしまう。

 話し合っている内に、望月が回り込んできた敵を撃ち倒し、二階でも銃声が鳴り、男がベルトコンベア上に落下してきた。

「よし、敵が守りを固めている部屋をクリアリングする。正面、今どうなっている?」

 太刀掛が今後の方針を決め、工場外で戦っているチームに問う。

駿河(するが)です。あらかた片付けて、敵のトレーラーを押さえました。内部へ応援は、ミトとユズが向かうと言っています』

 通信が返ってきた直後――

 工場の正門側にあったシャッターが爆発を起こした。

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