聖女は清貧であれと言われましたが、美味しいものも素敵なものも諦めません
「ヴェロニカ様! 『ラビアンローズ』の新作ケーキを買って参りました!」
店の名を聞いた途端、ヴェロニカの午前中の疲れは消えた。
「まあ! 一日十個限定の、あのケーキでしょう?」
『ラビアンローズ』は、王都でも指折りの人気を誇る菓子店である。
旬の果実を使った新作が売り出される日には、店の前に長い列ができる。貴族の家々も使用人を向かわせるため、昼前には売り切れてしまうのが常だった。
フェリクスが差し出した箱には、店の名にちなんだ薔薇色のリボンが結ばれている。中に収められているのは、赤い果実をふんだんに使ったホールケーキだ。
「ヴェロニカ様がお召し上がりになりたいとおっしゃっていたので」
「今日は非番だったでしょう?」
「はい。ですから、開店前から並べました」
フェリクスにとっては、休日の正しい使い方だったらしい。
「何時から?」
「鐘が六つ鳴る少し前です」
「開店は九時でしょう?」
「私の前に、すでに三人並んでいました。早めに向かって正解でした」
任務の報告と変わらない口調だが、三時間並んで手に入れた箱を届けに来た彼は、どこか満足そうだった。
「ありがとう。とても嬉しいわ。お茶の時間に皆でいただきましょう。あなたも一緒に食べない?」
「いえ。本日はこのあともご予定がおありでしょう。今日中に皆様でお召し上がりください」
「せっかく三時間も並んだのに?」
「ヴェロニカ様が喜んでくださったので、私はそれで十分です」
「それでは食事ではなく、礼拝よ」
フェリクスは否定しなかった。
「では、私はこれで失礼いたします」
彼はヴェロニカの護衛を務めるこの国の騎士である。休日にまで長居するつもりはないらしい。
「本当にありがとう、フェリクス」
もう一度礼を伝えると、彼は来たとき以上に満足して帰っていった。
「非番までヴェロニカ様のために使うとは、相変わらずですね」
一部始終を見ていたルチアが言った。
「申し訳ないわ。今度、私から何かお礼をしなければ」
「フェリクス様には、今のお言葉だけで十分かと」
それでは困るのだ。ヴェロニカが何かを返す前に、フェリクスはいつも満足してしまう。
午後になると、ケーキは八つに切り分けられた。
ヴェロニカとルチアだけでなく、朝から彼女の仕事を手伝っていた神官や侍女にも一切れずつ配られる。白いクリームと赤い果実を前にして、皆の声がいつもより弾んだ。
「本当においしいわ。フェリクスにも食べさせたかったわね」
次に『ラビアンローズ』へ行く機会があれば、今度はこちらが彼の分を買おう。そう決めて、ヴェロニカは最後の一口まで大切に味わった。
ヴェロニカが王都の店で買い物をするのは、珍しいことではなかった。
若い職人の作った髪飾り、染め色の美しいショール、履き心地のよい靴。評判を聞けば店を訪ね、気に入ったものを購入した。
彼女が好むのは、王侯貴族にしか手の届かない品ではない。働いている者や下級貴族の令嬢が、少し奮発すれば買える程度の品だ。
新作の菓子が出れば味を確かめ、季節が変われば新しい装いを見に出かける。部屋には花を飾り、湯浴みには香りのよい油を使った。
どれも、生きるために必要なものではない。けれど、毎日を少し楽しくしてくれる。ヴェロニカは、そんな小さな贅沢に金を使うことを惜しまなかった。
聖女が身につけた品として評判になり、客が増える店もあった。自分が見つけたよいものが、ほかの誰かにも届いていく。それもまた、彼女には嬉しいことだった。
大神殿からこの国へ派遣されて以来、ヴェロニカはそうして王都での暮らしを楽しんできた。
だが、そんな彼女を苦々しく思う者もいた。
数日後、ヴェロニカは王宮へ呼び出された。
待っていたのは、この国の王子とこの国の神殿に仕える女神官アグネスだった。
「聖女ヴェロニカ」
王子は挨拶もそこそこに切り出した。
「王都の菓子店や服飾店で、ずいぶん金を使っているそうだな」
「大神殿からいただいている報酬の範囲でございます」
代金を支払わなかったことも、誰かに負担させたこともない。なぜ王子から咎められるのか、ヴェロニカには分からなかった。
「その報酬の使い道を改めてはどうかと言っているのだ」
「と申しますと?」
「菓子や装飾品を買う余裕があるのなら、その一部を炊き出しや孤児院への支援に回すべきではないか」
王子に続いて、アグネスも口を開いた。
「この国には、満足な食事も得られない者が大勢おります。その傍らで贅沢を楽しむなど、聖女としてあるまじき行為です」
「炊き出しも、孤児院への支援も必要だと思います」
「でしたら、今後は――」
「ですが、それは国や神殿の予算で行うことでしょう」
アグネスが続けようとした言葉を、ヴェロニカは遮った。
「私が大神殿からいただいている報酬は、聖女として務めを果たした対価です。それを減らして行うことではありません」
「聖女が人々へ奉仕するのは当然でしょう」
「祈りも治癒も、求められた務めは果たしております」
「報酬を受け取ったあとは、自分のためにどれほど使っても構わないと?」
「はい。私の報酬ですから」
ヴェロニカの答えに、王子の声が険しくなった。
「君は自分の楽しみを、困窮する民より優先するというのか」
「国民の生活を支えるのは、国の役目ではございませんか?」
「国だけに負担を求めず、余裕のある者も協力すべきだと言っている」
「協力するかどうかは、本人が決めるものではありませんか」
王子は答えず、代わりに告げた。
「報酬のすべてを差し出せとは言っていない。必要な額はこちらで算出する。今後はその分を神殿へ納めればよい」
現在、国王は病床にあり、今は王子が政務の多くを代行している。この先もこの国にいれば、同じ話を何度も聞かされることになるだろう。
他者の財産まで自らの裁量で動かそうとする王子を、この国では誰も止めないのだろうか。
孤児院を援助したくないわけではない。ヴェロニカも折に触れて、菓子や衣服を届けている。
しかし、それは自分で望んで行うことだ。王子とアグネスに報酬の使い道を決められ、それを奉仕と呼ばれることには納得できなかった。
「お断りいたします」
「聖女ヴェロニカ。これは民のためを思ってのことだ」
「私も、民のために祈り、求められた治癒を行っております。それ以外のことまでお決めになるのでしたら、大神殿にご判断いただきます」
「そのようなお考えでは、聖女にふさわしいとは申せません」
アグネスが断じた。
「そうですか。では、そのご意見を大神殿へ報告いたします」
「報告?」
「私は大神殿から派遣されております。この国にふさわしくない聖女を置き続けるかどうかは、大神殿にご判断いただかなければなりません」
「待て。そこまでの話はしていない」
「ですが、私の考えは聖女にふさわしくないのでしょう?」
王子もアグネスも、それを否定しなかった。
「承知いたしました。大神殿から返答が届きましたら、改めてご報告いたします」
ヴェロニカはそれ以上争わず、王宮を辞した。
神殿へ戻ったヴェロニカは、その日のうちに大神殿へ書状を送った。
王子と女神官から告げられたことも、自分が答えたことも、余計な感情を交えずに記した。聖女としてふさわしくないというのが派遣先の総意であるなら、大神殿の判断に従うとも添えた。
「本当によろしいのですか?」
封を閉じるヴェロニカに、ルチアが尋ねた。
「よいも何も、報告しなければならないでしょう」
「王子殿下は、ヴェロニカ様が本当に報告するとは思っていなかったのではありませんか?」
「どうして?」
「……何でもございません」
ルチアは答えるのを諦めた。
ヴェロニカにしてみれば、派遣先から不適格だと指摘された以上、所属する大神殿へ報告するのは当然だった。
書状を託した使者が出発した翌日、フェリクスが神殿を訪れた。
「ヴェロニカ様が、大神殿へ戻られるというのは本当ですか?」
「まだ決まっていないわ。大神殿へ判断をお願いしただけよ」
「なぜ、そのようなことに?」
ヴェロニカが王宮での出来事を話す間、フェリクスは一度も口を挟まなかった。
「私は聖女にふさわしくないそうなの」
「誰がそのようなことを」
「王子殿下と女神官のアグネスよ」
フェリクスはしばらく黙っていた。
彼はこの国の騎士である。主君である王家への批判を、軽々しく口にするわけにはいかない。
「大神殿からのお返事が届くまでは、何も変わらないわ。明日は北区の施療院へ行く予定よ」
「私が護衛いたします」
「明日は担当ではないでしょう?」
「交代してもらいます」
その決断だけは早かった。
大神殿から返答が届いたのは、それから十日後だった。
書状を運んできたのは、大神殿の紋章を掲げた馬車と、六人の神殿騎士だった。
ヴェロニカに下されたのは、帰還命令である。
同時に王宮とこの国の神殿へも、大神殿から正式な通達が届けられた。
聖女ヴェロニカを速やかに召還すること。
今後、この国への聖女の派遣を行わないこと。
聖女の滞在に伴って交付されていた費用についても、帰還をもって終了すること。
王子はすぐに神殿へやってきた。
「これはどういうことだ」
「書かれているとおりでございます」
「私は聖女を帰せとは言っていない!」
「ですが、私の行いは聖女にふさわしくないとおっしゃいました」
「今後、改めればよいという話だった」
「私の報酬の使い方を、ですか?」
王子は答えなかった。
ヴェロニカに改めるつもりはない。大神殿も、派遣先の王子に聖女の報酬を取り上げる権限があるとは認めなかった。
「では、別の聖女を派遣するよう求める」
「大神殿へお申し出ください」
ヴェロニカが答えられることではなかった。
もっとも、大神殿には各国から聖女の派遣を求める声が絶えない。高位聖女であるヴェロニカを不要とした国へ、代わりの聖女を急いで送る余裕があるとは思えなかった。
帰還前日の午後、ヴェロニカの部屋には、この国へ来てから身の回りの世話をしてくれた者たちが集まっていた。
大神殿から同行してきたルチアはヴェロニカと一緒に帰るが、彼女たちはこの神殿に残る。
「本当に、明日には発たれるのですね」
「ええ。今までありがとう」
「ヴェロニカ様がいらっしゃらなくなると、寂しくなります」
赴任したばかりのころから、衣服を整え、土地の習慣を教え、忙しい日には食事の時間まで気にかけてくれた者たちだった。ヴェロニカにとっても、別れは寂しい。
「私もよ。だから、皆に渡したいものがあるの」
ヴェロニカは荷物の中から、淡い緑色の髪飾りを取り出した。
「これはあなたに。前に、きれいだと言っていたでしょう?」
「覚えていてくださったのですか?」
「きっと似合うと思っていたの」
薄紅色のショールは、寒い朝にいつも上着を重ねていた世話係へ。小花の刺繍が入った手袋は、庭仕事で手を荒らしていた者へ渡した。
どれもヴェロニカが気に入って買った品だが、彼女たちが使うところを想像すると、手放すのが惜しいとは思わなかった。
ルチアが、残った衣類の中から青いショールを持ち上げた。
「こちらも、どなたかに差し上げますか?」
「これは駄目よ。とても気に入っているもの」
答えがあまりに早かったため、世話係たちがそろって笑った。
「それはお持ちください。ヴェロニカ様が一番よくお召しになっていたものですもの」
「ええ。次の国にも持っていくわ」
思い出として渡したい品と、自分がこれからも使いたい品は別である。何もかも手放してしまうつもりはなかった。
「皆も元気でね。おいしいものを食べて、よく休むのよ」
「ヴェロニカ様も、どうかお元気で」
「次の国でも、きっと評判のお店を見つけてくださいませ」
別れの品を受け取った者たちが部屋を出たあと、ヴェロニカとルチアは残りの荷物を箱へ収めた。
荷造りが一段落したころ、フェリクスが訪ねてきた。
「どうしたの、その格好」
「本日、王家より騎士籍を離れる許しをいただきました。剣と徽章もお返ししています」
あまりに簡単な返事だった。鎧も剣も徽章もない姿が、その言葉は聞き間違いではないと告げていた。
「騎士を辞めたの?」
「はい」
「どうして?」
「ヴェロニカ様とともに大神殿へ参ります」
ヴェロニカには、すぐに意味が理解できなかった。
フェリクスはこの国で騎士となり、これまで王家に仕えてきた。その職を辞して、ヴェロニカについてくるという。
「大神殿へ行っても、あなたに仕事があるとは限らないのよ」
「承知しております」
「神殿騎士になれるとも限らないわ」
「下働きでも構いません。自分の身は自分で立てます」
迷いのない返事だった。ヴェロニカの知らないところで、必要なことをすべて考えたうえで決めてきたのだろう。
「私についてくるために、騎士を辞めたの?」
「はい」
「どうして?」
「貴女と一緒にいたいのです」
あまりにまっすぐな答えだった。
「私と?」
「ヴェロニカ様といると、毎日が楽しいのです。これからも、貴女と一緒にいたいと思いました」
フェリクスは、これまでにも別の聖女を護衛したことがあるという。
「ですが、護衛の任務を楽しみに思ったのは、ヴェロニカ様が初めてです」
「お菓子屋へ寄るから?」
「それもございます」
そこは否定しないらしい。
「ですから、どうかお供を許していただけませんか」
「大神殿までの旅は長いわよ」
「どこまでもお供します」
「途中で評判のお菓子を見つけたら?」
「買って参ります」
「今度は、あなたも一緒に食べるのよ」
「はい。必ず」
翌朝、ヴェロニカは大神殿の迎えの馬車に乗り、この国を去った。
その隣には、フェリクスがいた。
■■■
ヴェロニカが国を去った翌朝、神殿の食卓から卵とチーズが消えた。
女神官アグネスの前に置かれたのは、硬いパンと薄い豆のスープだった。
「今日の食事は、これだけなのですか?」
「以前の献立に戻りましたので」
ヴェロニカが赴任する以前、神殿の食事はずっとこのようなものだった。彼女は、皆でおいしいものを食べた方が元気に働けるからと、自分の報酬から食費を足していたのだ。
「これでは力が出ません」
「ヴェロニカ様も、同じことをおっしゃっていました」
さらに、聖女の滞在に伴って大神殿から送られていた支援金も、次回からは支給されない。新たな聖女が派遣される予定もないと聞き、アグネスはしばらく硬いパンを見つめていた。
ヴェロニカの世話係をしていた一人が、そのパンをアグネスの前へ押し出した。
「よかったですね、アグネス様。清貧な暮らしができて。私はごめんですけれど」
誰も、その言葉をたしなめなかった。
アグネスは食事を途中で切り上げ、王宮へ向かった。
そのころ王宮では、大神殿から届いた書簡について会議が開かれていた。
この国には聖女を必要とする意思がないものと判断し、今後の派遣を見合わせる。聖女の滞在を前提としていた支援も終了する。
「聖女として節度ある生活を送るよう諭したところ、気分を害したらしい。大神殿も彼女の言い分だけを聞き、過剰な対応を取ったのだ」
王子は、居並ぶ重臣たちへそう説明した。
ヴェロニカが贅沢をたしなめられ、機嫌を損ねて帰ったという話は、すでに王都にも広まっている。重臣たちも、その話を前提として今後の対応を話し合っていた。
そこへ、アグネスが飛び込んできた。
「殿下、お話が違います!」
衛兵が止めるより早く、アグネスは王子の前まで進み出た。会議を中断された王子は、彼女へ退出を命じた。
「今はその話をする場ではない。下がれ」
「ですが、神殿は薄い豆のスープと硬いパンだけになったのですよ?」
重臣たちには、大神殿との関係を協議する場で食事の不満を訴える理由が分からなかった。王子にも、それは同じだった。
「聖職者なら、その程度は我慢すべきだろう!」
アグネスにとっては、その一言で済ませられる問題ではなかった。昨日まで当たり前に出ていた食事も、これから受け取るはずだった支援も、すべてヴェロニカとともに失われたのだ。
「これまではヴェロニカ様がご自分のお金を足してくださっていたから、きちんとした食事が出ていたのです!」
アグネスの訴えを聞いて、王子の怒りは彼女へ向かった。
「貴様も、あの女の買い物を贅沢だと言っていたではないか! あの女の金があれば、もっと別のことに使えると――」
王子は、そこで言葉を切った。
今の一言を、会議の間にいる者たちは誰一人として聞き逃していなかった。
老侯爵が、手元の書類を閉じた。
「なるほど。聖女殿が機嫌を損ねた、というお話ではなかったようですな」
王子は、民のためを思ってしたことだと弁明した。だが、ヴェロニカが納付を拒んだ場合、どのように従わせるつもりだったのかと問われると、答えることができなかった。
「聖女殿の金を、勝手に当てにしておられたのですか」
「聖女には、民へ奉仕する義務がある」
王子の返答によって、重臣たちの疑念は消えるどころか深まった。王子が余分だとみなした財産を、その持ち主から取り上げようとしたことに変わりはない。
聖女にできるのであれば、次は自分たちにも同じ奉仕を求めるのではないか。
王子がいくら言葉を重ねても、先ほどまでの同情が戻ることはなかった。
会議の内容は、その日のうちに病床の国王へ届けられた。
王子は政務の代行を解かれ、宰相が後を引き継いだ。国王は大神殿へ謝罪の使者を送ったが、聖女を再び派遣してほしいという願いは聞き入れられなかった。
翌朝も、アグネスの前には硬いパンと薄い豆のスープが置かれた。
■■■
大神殿へ戻ったヴェロニカには、ほどなく新しい任地が決まった。
今度の国は交易で栄え、各地の菓子や服飾品が集まる土地だという。話を聞いただけで、出発が楽しみになった。
フェリクスも大神殿の試験を受け、神殿騎士としてヴェロニカの護衛を務めることになった。
新しい任地へ向かう前日、ヴェロニカはフェリクスをお茶に誘った。
卓上には、大神殿の近くにある菓子店で買ったケーキが置かれている。
「これは?」
「この前のお礼よ。今度は、あなたにも食べてもらおうと思って」
「私のために買ってくださったのですか?」
「一緒に食べるために買ったの」
今回は逃がさないと決めて、ヴェロニカは彼の皿へケーキを取り分けた。
ところが、フェリクスは自分のケーキには手をつけず、ヴェロニカが食べるのを待っている。
「食べないの?」
「ヴェロニカ様が召し上がるところを拝見してから」
「それでは、また礼拝でしょう。今日は一緒に食べるのよ」
「はい」
今度は素直に、フェリクスもケーキを口にした。
「おいしい?」
「はい。これまで食べたどの菓子よりも」
「大げさね」
けれど、ヴェロニカも同じケーキをいつもよりおいしいと感じていた。
「これから行く国にも、おいしいものがたくさんあるそうよ」
「すでに評判の店を調べております」
「早いわね」
「ヴェロニカ様がお喜びになると思いましたので」
今度の巡礼も、きっと楽しいものになる。
ヴェロニカは、自分のためだけに楽しみにしているのではないことを、まだフェリクスには教えなかった。
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