周回
「そういえば迷宮内で騎士ブレイブと親しいかどうかの質問をしましたよね?」
「そうです。実はその事について聞きたくて話しかけました。」
「いや・・・俺は酒場で少し話したぐらいで、騎士ブレイブとはそれほど親しくはないんですよ。」
「そうなんですか?それは残念ですね・・・。」
彼はかなり落胆の表情を見せた。
何か事情でもあるのだろうか?
「・・・しかしなぜそこまで騎士ブレイブに?」
「騎士ブレイブのパーティといえば、冒険者の中で一番レベルが高く、迷宮最下層に何十回も挑戦したと有名ですから。」
(何十回も最下層に挑戦・・・。そういえば、ゲームでも騎士ブレイブで何十回もラスボスを倒したな。)
「しかし転移装置で最下層に潜った後は、いつの間にか街に戻ってきていて、何も覚えていないらしいのです。」
「なぜ、何も覚えていないのか?まさか、不老不死の魔導士に何か術を施されたのか?それとも逃げ帰ったのを誤魔化すための嘘なのか?本当は最下層に挑戦した事自体嘘なのか?」
彼は早口で一通りの疑問を吐き出した後、一呼吸おいて俺に話しかける。
「それで・・・何が真実なのか親しい間柄なら知っているのかもと思いましてね。」
最下層に潜った後に街に戻るというのは、多少心当たりがあった。
ゲームではラスボスの不老不死の魔導士を倒した後、近くの転移装置で街に戻るとゲームクリアとなり、そのままエンディングに突入して終了する。
そして、その後パーティは自動的に街に戻り、レベルやアイテムなどはボスを倒した状態を維持したまま、物語の内容は最下層挑戦前に戻るのだ。
ちなみに、騎士ブレイブのパーティのレベル50とレア装備は、何度も最下層に潜り強敵とボスを倒して手に入れたものだ。
(つまり・・・ゲームでの周回を現実的にすると、最下層に挑戦したが何も覚えていないとなるわけか。)
なかなか強引な設定だ。
しかしそれだとラスボスを倒しても永遠にループしてクリアする事が出来ない。
(ゲームと同じ世界なら、クリアしたら何かが起こる事を期待していた。しかし、どうやらダメなようだ。)
「何か心当たりでも?」
「え、ああ、ないですよ。しかし、騎士ブレイブ以外確認したパーティはいないのですか?」
「他に何組かのパーティが最下層に挑戦したのですが、誰も帰ってきていません。」
「全滅した・・・という事ですか?」
「おそらくは。しかし最下層では誰も確認しようがありません。少なくともその後誰も姿を見ていませんし、死体も回収されていません。」
ラスボスに負けると、その部屋に死体が積みあがる。
ラスボスを倒さないと最下層から脱出は出来ない・・・つまりラスボスを倒すと死体回収出来るはずだが、騎士ブレイブのパーティが何回も帰ってきているのに死体が戻ってきてない。
ゲームのルールとは違うのかも知れない。
「申し訳ないですね、気分良く飲んでいる時に余計な事を・・・。」
「いえ、色々知れてこちらも良かったです。もし機会があればブレイブさんに話しかけて確認してみます。」
「ありがとうございます。私も直接聞いてみようとは思っています。」
俺達はその後も酒を飲みながら、雑談をしながら楽しく過ごした。
その時はまだ、劇的に展開が変化するほどの事件が起こるとは知る由もなかった。




