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世界が滅びても君が好き  作者: motomaru
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九条聖

「小日向健介だな?」

 あくる日の昼休み、何時ものように弁当を持って裏の林へ向かおうとしていた健介に威圧的な声を掛けたのはビジルのメンバーである九条の側近、鬼頭魁きとうかいだった。

「ぁ、はい」

「九条様がお呼びだ、付いて来い」

「え、でも僕はこれから……」

 健介が躊躇すると、鬼頭が感情の無い声で

「これは命令だ」

と言った。

 その途端、健介はムッとして鬼頭を睨み付けた。

感情がモロに顔に出ている。

というより、態と露骨に嫌悪を表したのだ。

しかし鬼頭は『そんな顔をしても無駄』とでも言うように、それを無視して健介の腕を掴んで連れて行こうとする。

「離して下さいッ!!」

 健介は足を踏ん張って腕を振り解くと、グッと睨み付けて

「逃げたりしませんから」

と、乱れた制服を直した。 

鬼頭は健介の顔を一瞥しただけで何も言わずに歩き出した。

健介も腹立たしく思いながらも後に付いて歩き始めた。

 鬼頭に連れられてやって来たのはビジルの会の部室だった。

そこには、大きな机の前に置かれた椅子に足を組んで座っている会長の九条が待っていた。

 彼は入口の所で立っている健介に掌を上にして手招きをする。

それを見て健介は前へ歩み寄った。

「何故呼ばれたか分かってるな?」

「いいえ、何故ですか?」

健介は良く通る声でハッキリと答え、直ぐに聞き返した。

「お前、最近明陽に纏わりついているようだな」

九条は鋭い目付きで健介をじっと見ながらそう言った。

「別に纏わりついてなんかいません。仲良くはして貰っていますけど」

臆する事無くキッパリと答えた健介に九条は

「ほぅ〜」

と言って、暫く間を置いてから

「お前、分相応という言葉を知ってるか?」

と尋ねた。

「それくらい、僕だって知ってます」

健介は少しムッとして答えた。

「なら話は早い。明陽から離れろ」

九条は鋭い目付きで凄んでみせた。

「納得出来ません。どうしてそんな事……貴方に決められなきゃいけないんですか?」

健介は自分の意思を示すように九条を真っ直ぐに見据えて言った。

「今さっき言っただろ、お前と明陽じゃ釣り合わん。明陽の“お気に入り”はお前には分不相応だ、それくらいお前にだって分かるよな?」

そう言っている間も九条の鋭い視線はずっと健介に注がれている。

 中等部で入学して以来、明陽はお気に入りを持った事が無い。

それなのに今になって健介というお気に入りを持った事が九条は気に入らないのだ。

健介自身はお気に入りになった憶えは無いが、周りはそう思ってはくれないようだ。

「それは……」

 健介は口籠った。

そんな事は言われなくても分かっている。

それでも、他人に言われるのは余り気分の良いものではない。

「それに……明陽は俺のものだ」

 健介が黙り込んでしまうと、九条がドスの効いた低い声で言った。

 それを聞いた途端、健介のなかにふつふつと怒りが湧いてきて思わず

「明陽さんは物じゃない」

と叫んでいた。

「口の減らない奴だ、とにかくもう明陽に近付くな。いいな、これは警告だ」

九条がもう一度念を押す。

「…………」

 健介は何か言い返したかったが、言葉が出てこなかった。

健介自身、明陽と釣り合わないことを自覚しているのだから、返す言葉を見つけられる筈もなかった。

「話は終わった。戻って良いぞ」

 九条がドアの所で待機している鬼頭に目配せすると、鬼頭はドアを開けて健介が出て行くのを待つ。

 何も言えない自分を情けなく思いながらも健介はビジルの部室を出て、教室へ戻って行った。








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