第四話 学食の誘い
「健介、どうかしたの?」
何時ものようにお昼を一緒に食べていた明陽が少し元気のない様子の健介に尋ねた。
「あ、いいえ別に、どうしてですか?」
健介は屈託の無い笑顔で答えた。
「ううん、いいんだ。ちょっと元気が無いように見えただけだから」
「大丈夫ですよ、明陽さんって意外と心配性なんですね」
健介が苦笑するように言った。
「そんな訳でもないけど、自分の好きな人の事って気になるものだろ?」
そう言って今度は明陽が屈託無くニッコリと笑った。
「え、あ……」
女にしてもおかしくないほど綺麗な顔で自分を見ている明陽と視線が重なった健介は赤くなって思わず顔を背けた。
(なんで……赤くなってんだろ……)
健介は顔が熱い事に気付いて、焦るように弁当を口の中へ掻き込む。
「ぅグッ……」
健介が胸を押さえて一瞬固まった。
「そんなに慌てて詰め込んじゃ喉詰めるよ、はい」
明陽が直ぐに水筒の蓋を開けてお茶を注いで差し出した。
健介はそれを受け取って、ゴクゴクと一気に飲み干しながら同時に箸を握ったままの手で胸をトントンと叩いて詰まっていた物を胃袋に流し込んだ。
「はぁ〜」
健介がホッと一息吐くと、それを横で見ていた明陽が
「クスッ」
っと笑った。
「あ、これ明陽さんのお茶……」
健介がハッと気付いて申し訳無さそうに言った。
「別に良いよ、僕は健介の貰うから」
明陽はなんの躊躇もせずに健介のお茶を手に取って口に運んだ。
(明陽さんって、こういうとこおおらかと言うか何と言うか……なんか可愛い人だなぁ……)
健介はそう思って目を細めた。
「そうだ!健介、明日久し振りに学食に行ってみない?」
何を思ったのか、明陽が突然思い付いたように言った。
「え、学食?でも……」
健介は躊躇していた、そんな所へ堂々と明陽と一緒に行っても良いものだろうかと思っているのだ。
「大丈夫。聖は明日資格試験で居ないし、健介も一度くらい学食を覗いてみたほうが良いんじゃないかな?」
「え、あ、はい分かりました……」
健介はあまり乗り気ではなかったが、明陽がにこやかに笑ってそう言うので渋々承知したのだった。




