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世界が滅びても君が好き  作者: motomaru
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第三話 因習

 弁当を食べ終えて健介が片付けをしていると、明陽が急に前を見据えたまま寄り掛かるように耳元に頬を寄せて

「ご馳走様。明日もここにおいで、一緒にお昼しよう、約束だよ」

と言った。

「あ、はい」

健介が明陽の視線の先に眼をやると、あの九条聖くじょうこうきが何か言いながらこっちへやって来るのが見えた。

 明陽は九条が辿り着く前に立ち上がって、まるで健介から少し距離を取るように2、3歩離れて出迎えた。

上級生が来たのだから健介も立ち上がらない訳にはいかない。

そうすると、どうしても健介のすがたはハッキリ九条の意識に入る。

「ここに居たのか、探したんだぞ?」

 九条が不機嫌そうに言った。

「ごめん、何かここ気持ち良くて……つい寝入ってしまって……」

明陽はと言えば、九条の機嫌を別段気に留める様子も無く、軽く返した。

 直ぐに九条が鋭い目付きで明陽の後に居る健介を睨んで尋ねる。

「こいつは?」

「ああ、一年の小日向君だよ」

明陽がそう言ったので、健介は(随分失礼な人だな)と思いながらも一応に軽く会釈をした。

「小日向?ああ例の……」

九条はそう言うと“フフン”と鼻で笑うような仕草を見せた。

(例のって、どういう例のだよ……)

健介はそう思ってブスッとした。

 気紛れで冷淡な性格に恐れをなして、この人のことを皆『九条様』と呼ぶ。

明陽とは違い、九条はそれを当然の事と思っているようだが、健介はこういう類の人間があまり好きではなかった。

「さてと、じゃあ戻ろうか」

  明陽が睨み合う二人の間に割って入るようにそう言うと、健介にヒラヒラと手を振ってから九条と腕を組んで無理やり校舎の方へ引っ張って行った。


 その日から明陽は毎日のようにこの林にやって来て、昼休みを健介と過ごすようになっていた。

 その上、校内で出会うと

「健介!」

と、ニコニコしながら声を掛けたりするものだから、嫌でも健介の存在を目立たせる事になり、健介の学校生活に影響を及ぼし始めていた。

 それまで浮いていた健介は今や明陽様の“お気に入り”だ。

“お気に入り”というのはこの紫苑学園に古くからある因習で、上級生が気に入った下級生を同意の上で自分の側に置いて囲い込むというものだ。

 健介自身、お気に入りになったつもりもないが、周りはそうは見てくれないようだ。

 当然、これまで無視していたクラスメイト達も態度が一変、馴れ馴れしく話し掛けて来るようになり健介をうんざりさせた。

そんなクラスメイトの態度を見ていると、少々人間不信に陥りそうだった。




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