表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

第8話 情報

鈴木との決闘の翌日。

今、俺は整備科の寮の荷造りを行っている。


「こんなもんか」


整備科からパイロット科になる為、整備科の寮からパイロット科の寮へ移動することになった。俺は整備科の寮のままでも良かったが…パイロット科の校舎までが今いる整備科の寮からじゃあまりにも遠すぎる。

あんな距離を毎日歩いていくのは流石に骨が折れる。

そんなわけで今は授業中だが気にせず引っ越し作業をしている。東雲学園長からの認欠の許可を得た状態でね。

とは言いつつも別にそんなに大量に持っていくわけじゃない。というか俺の私物は殆どなく、早朝から開始した荷造り及び引っ越し作業は1時間ちょっとで終わった。

あとは軽く掃除して、引っ越し業者の人たちが来るのを待つのみ。


「はぁ…」


椅子に座り、背を預けて上を向いて息を吐く。


(これから、パイロットか)


両手首に付けられた黒い輪を見る。

これが、ファフニールとの繋がりでありこれからパイロットになるという証。


「あ、そういえば」


東雲学園長から頂いたアタッシュケースを確認する。

片方がパイロット科の制服や教科書などが入っていて、もう一つは…東雲学園長が集めてくれた禁忌機体についての情報が入っているはず。


「俺が知らない情報…」


アタッシュケースを開くと『秘』と記された大きめの封筒が一つ。

これが少ないのか多いのか分からないが、俺からすると情報が一つあれば十分だ。

封筒を手に取り、何のためらいもなく封を開けて中を確認する。

中には紙が、2枚。

まず、1枚目を手に取り確認する。


「これは…?」


禁忌機体について、か。

製造元とかそういうのは書かれてないけど、『禁忌機体』という機体のスペックが記されている。禁忌機体には専用システムとして『ドラゴンスローンシステム』というのが搭載されていて、並の量産機や専用機のようなARMORに比べると出力や戦闘力の平均値が規格外。

こんなの狂ってる。どんな理由で作られたのか分からないが…とてもじゃないが人間が乗りこなせるスペックじゃない。

俺がファフニールに受け入れられたとはいえ、今でも情報量に肉体が耐えられず出血するくらいだ。

東雲学園長が言っていた通り『パイロットの生存を度外視した機体』という事がわかる。

しかも橋と決闘場の戦闘で俺は『本来のファフニールのスペックを引き出せてない可能性がある』。

禁忌機体のファフニールのという機体がそういうスペックなのかもしれないが、そう考えると記されている平均値よりも明らかに低い。


「…」


多分、ファフニールは俺が本来のスペックを引き出せないことを知っているんだろう。

引き出せば俺の肉体が崩壊するか死ぬか。どちらにせよ、本来のスペックを引き出せば俺の肉体はただじゃすまないんだろうな。


「一応、整備科だから筋トレとかしてたんだけどな…」


ARMORの操作技術も含めて俺の肉体がファフニールに耐えれるくらいまで鍛えないといけないのか。

そうでもしないと、パイロットとしての責務を果たせない。

禁忌機体についてはこんなもんか。2枚目は…『ドラゴンスローンシステム』について。

禁忌機体に付けられている専用のシステム。

人と機械を繋ぐシステム。

本当に聞こえはいいんだが、実際に繋がるとヤバいシステムだってわかる。


「…ん?」


すると、ドラゴンスローンシステムの見取り図や使うパーツが記された設計図を見ると、気になる箇所があった。


「黒い輪がない?」


俺の両手首と両足首、そして首に付けられている黒い輪の事がどこにも記されていない。

というかファフニールのドラゴンスローンシステムは他と違う気がする。

まず繋ぎ方が違う。本来はうなじ辺りに専用のアダプターが装着され、脳と脊髄をリンクさせて、それで起動できればやっとドラゴンスローンシステムと繋がる。

こんなアダプターを装着していない。俺が付けられたのはこの黒い輪だ。

じゃあこれは何なんだ?

だが、ドラゴンスローンシステムの効果は同じみたいだ。

機体情報の伝達、敵勢力、行動指示といった全ての情報が直接脳と脊髄に送られる。

故に、その過密な情報量に耐えられず肉体がダメージを受けるって事か。


「よく分からないな…」


ドラゴンスローンシステムの事はおおよそ理解はできたが、疑問が大きすぎる。

他の禁忌機体とドラゴンスローンシステムが違うのかもしれないが、残念だが他の禁忌機体を知らない故に判断できない。


「こんなところか」


東雲学園長から貰った情報を元のマル秘の書類の中に戻してアタッシュケースの中にしまい、ふたを閉める。


「…ファフニール?」


ファフニールに声をかける。

近場にファフニールはなく、ファフニールが仕舞われている整備科の整備所。

あまりにも遠いが…。


「…あぁすまん。呼んだだけだ」


ファフニールの声が聞こえてくる。

東雲学園長が仕入れた情報の中に『禁忌機体の声が聞こえてくる』事は記されてはいなかった。じゃあ、これは何なんだってなるが解明できるものも無いので…何とも言えない。

まぁ声が聞こえるだけ良いか。


――コンコン。


「?」


すると、俺の部屋の扉がノックされた。

教員…はないな。今は授業中だし、わざわざ授業をほっぽり出してまで俺に言う事は無いだろう。そうなると、東雲学園長か?

俺は疑問を浮かべつつも扉の鍵を開けて、少し開ける。


「や、零亜」

「明楽!?何でここに!?」


なんと明楽がいた、今は授業のはずだろうに!?


「しっ!良いから入れて」

「わ、わかった」


とりあえず言われるがままに扉を開けて明楽を部屋の中に入れる。


「…あれ、やっぱり終わってた?」

「終わってたって何が?」

「引っ越し準備」

「ついさっき終わって、東雲学園長から貰った物を見てた」

「まぁ、予想通りだけど。よいしょっと」


明楽は軽く俺の部屋を見回し、引っ越し準備が終わったことを伝えると予想通りみたいな顔をして俺のベッドに腰かける。


「まるで自分の部屋みたいにくつろぐな?」

「時々遊びに来てた仲だろう?」

「それもそうか…それで?何でここに来たんだ?」


何よりも気になったのがそこだ。

今は授業中。俺は認欠を貰っているが明楽は全然授業があるのにもかかわらず、俺の部屋に来た。


「先生に言った、零亜の引っ越し準備を手伝いたいって」

「…それだけか?」

「勿論、それだけじゃ足らなかったけど僕と零亜が仲がいいことは先生も知ってたし、今日は目をつぶってくれたって感じ」

「ふーん?」

「まぁ正直、零亜の事だしもう終わってるんだろうって思ってたから」

「さぼり目的か?」

「正解」


俺に指をさしながら元気よく答える明楽。

別に文句もないがな。


「何やってんだか」

「でも零亜はばらさないでしょ?」

「勿論だ。親友を売るような真似はしない」

「…親友、ね」

「どうした?」

「何でもない。ね、何かない?」

「今はお茶とお菓子くらい。他は全部詰め込んだし」

「じゃあお茶しよう」

「俺のでな」


そうして机の上に今あるだけのお菓子を開けて広げ、コップにお茶をついで明楽との軽いお茶会と休憩が始まった。


「んん…あぁ、美味い」


ポリポリとお菓子を頬張りつつ、お茶を飲む。

キンキンに冷えたお茶が喉を潤し、糖分が俺の脳にエネルギーを与えてくれる。

最高だ。


「そういえば零亜」

「ん?どうした」

「パイロットになる訳だけど、ファフニールはいつパイロット科の格納庫に送るの?」

「わからない。ただ今分かっていることは、明日にパイロット科の寮に移動した後、新しい担任の先生から色々聞かされる予定だと言われた」

「ふーん?」

「その時に言われるかもな」


ーーー


そんな感じで明楽とのお茶会を過ごした後、『そろそろバレるかもしれないから』と明楽が危険を感知し、俺の部屋を後にした。

明楽が俺の部屋から退室してからすぐに引っ越し業者の人たちが来てくれて俺の荷物たちをパイロット科の寮へと運んでいくと同時に俺も部屋から退室。あとは学生課に向かい俺の整備科の寮の鍵を返却して、新しいパイロット科の寮の鍵を貰いに行けば俺のやることはひとまずは終わり。

ただ…学生課に行く時間は決まっていて引っ越しの準備含め、色々な事が予定よりも早く終わってしまった。

まだ時間に余裕があるし、一度ファフニールの機体整備を軽くやってしまおう。


「…あぁ、そうだ。ファフニール、お前の整備だ」


ファフニールが入っている格納庫へ向かっていると急にファフニールが俺に話しかけてきた。

あまりにも急な事で一度足を止めてからファフニールに返事をした。

ファフニールは今のところ連戦続きで整備の手が届いていない。助けられた時のあの姿のままだ。

歩きながらファフニールの整備する箇所、内容、工程を考える。

システムのメンテナンスは今回ばかりは俺一人じゃあまりにも無謀すぎる。特にドラゴンスローンシステムなんて今までやったことがないシステムの調整なんて時間がかかるにもほどがある。

そうなると外装を優先した方がいいな。錆だらけの装甲、関節部位の整備、連戦続きで破損した箇所の修理…と思ったが今のところほぼノーダメージなんだよな。破損個所の修理はそこまで必要ないか。

…丁度ファフニールも破損個所の事を言ってくれたし。


「とんでもないくらいの長丁場になりそうだな」


歩きながら身体をぐいーッと伸ばし、息を軽く吐く。

なんて気持ちで歩いているうちに整備科の整備所にたどり着き、ファフニールが仕舞われている格納庫へ向かい、シャッターの開閉コンソールにアクセスする。


「パスワード…」


そういえばパスワードは戻っているのか?

いつも使っているパスワードを入力し、エンターキーを押す。


『パスワード確認。シャッター、上がります』


どうやら元の俺の使っていたパスワードに戻っていたようだ、安心。

完全に上がり切ったシャッターをくぐり、格納庫内の照明を付けようとしたが…その必要はなかった。


「はぁぁ…!」


膝を曲げてその場で座り込む。

何故か、それはファフニールの真後ろに原因の風景が広がっている。

ファフニールの真後ろには素晴らしいほどの快晴と海、そして瓦礫がそこら中に転がっていた。


「これがファフニールが開けた大穴、か」


鈴木との戦闘で仕方なく整備所の壁をぶち破らせたが…正直、想像以上の大穴が開いている。加減をしてほしいなんて思ったが無理だろうな。

学園長含め、この大穴を塞ぐ修理班の方々には心の中から謝罪する。

本当に申し訳ない。


「急いでたから…ねぇ」


それっぽい理由を俺に話すファフニール。俺も急いでたら壁の一つや二つぶち抜きそうだ。

あぁ、怒れねぇ。


「さてと、始めるか」


俺一人でARMOR一機の整備はとてもじゃないが時間が足りない。

だから出来る限りやろう。まずは関節部位の確認をしなければならない。


「ファフニール、俺をコックピットに」


ファフニールは勝手に動き出し、膝を付いてコックピットのハッチを開く。

俺がハッチの隙間を掴んでコックピット内に乗り込むと同時にファフニールは立ち上がる。

…流石に起動シークエンスはしないぞ、今回はあくまで整備だ。血を吹き出しながら整備なんてしたら俺が死ぬぞ、本当に。


「各フレームと関節部位の駆動確認…」


タブレットとコックピットを有線で直接つなぎ、今までの戦闘データを確認しつつ稼働のムラや反応の遅れがないかを確認する。

データを見る限り、ぱっと見はないな。じゃあ操作レバーで動かしてみる…って思ったけどファフニールに動いてもらえればいいのか。


「ファフニール、ライトアームを軽く動かしてくれ」


ファフニールは俺の指示通り、右腕を動かす。

やっぱり、異変や錆による動きの制限も特にはなし。

続けてレフトアーム、両レッグフレームにもこれといった物もなく、駆動確認は終了。

次は装甲の修理だが…必要ないみたいだ。

これといったダメージもなく、破損個所もない。

んで、一番の問題に取り掛かるとするか。

膨大な量の錆取り。装甲だけではなく、関節部位、アイカメラ付近、大剣の刀身…。

多すぎて気が滅入る。


「よいしょっと」


コックピット内で上だけ制服を脱ぎ、タンクトップ一枚になる。

これなら汚れても大丈夫だ。

まずはコックピット付近の錆取りの開始。

持ってきた機材の中から色々取り出して、錆が付いている箇所に研磨剤や錆取りを付けてからディスクグラインダーでブイィーンと削る。


「やばい、とんでもない時間かかるなこれ」


錆ついている箇所を考えた瞬間、とんでもないことをやり始めたことを自覚してしまい心が折れそうになった。

今までは何とか一人で出来る量の整備だったが、ARMOR丸々一機で…しばらく整備されていない機体だ。

仕方ない、使える物は全部使うか。

自動の錆取り機を使うとしよう。全部取れとは言わないが、ある程度取ってくれればそれでいい。

一度、ファフニールに下に降ろしてもらい自動錆取り機を出来る限りかき集め、バッテリーを装備させ、内部タンクに研磨剤と錆取り剤を入れて起動準備完了。

そしてレッグ、アーム、ヘッドに自動錆取り機のマグネットでくっ付けて起動。

よしよし、内部タンクに入っている錆取り剤を撒きながら錆を取っている。

まぁ、予想通りというか完全には錆は取れていない。そりゃそうだ…結構な月日、整備されていないんだ。薬品でも機器でも取れない錆びもある。

そこは手作業でやるしかない。

もう一度コックピットに乗り込み、付近の錆は俺の手作業だ。


「はぁ…」


錆取りしつつ、気になったことをファフニールに問いかける。


「なぁ、ファフニール。どれくらいの期間、学園の地下で眠っていたんだ?」


…その質問の解答は許可されていません?

その回答に驚き、錆取りの手を止める。

初めてだ。俺の質問に許可が無ければ解答できないなんて。

前の鈴木とのARMORの決闘でも指示が遅れたり、出来なかったりする時はあったが。

てか、どうやって許可を得ればいいんだ?

一番手っ取り早く、やりやすいのは開発元に聞くのがいいが…開発元は不明。そもそも禁忌機体を作った奴なんてろくでもない奴だ、絶対答えてくれないだろう。

だが、質問の回答で一つ知ったことがある。


(ファフニールは、俺の知らないことを知っている)


思えばそうだ…オールイーターとの初めての戦闘の時、ファフニールはオールイーターの戦いを熟知しているかのような指示を出してくれた。

禁忌機体が出来たのはデイブレイクから数週間後と東雲学園長から聞いたし、そうなってくるとファフニールはかなりの数のオールイーターと戦ってきた可能性がある。

そうでもなければARMORに一度も乗ったことがない人間が、一度も攻撃を受けずにオールイーターと戦うなんてできない。


「ファフニール…お前は」


お前は、何を知ってるんだ?

俺はファフニールのヘッドパーツを見て、そうつぶやいた。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ