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第7話 初陣

「ありがとう、ファフニール。よし…!」


コックピットに背を預けて、呼吸を軽く整えてから操作レバーを握りしめる。


「ふぅ…起動シークエンス、開始」


そう呟くと、脳に直接流し込まれる情報、全身に伝播する激痛。


「うぅッ…!?ふぅっ!ふぅッ!!」


心臓辺りを思いっ切り叩いたりして無理やり意識を繋ぎとめる。

まだ起動回数は二回だけど慣れたもんだな、初起動時に比べてあの膨大な情報量に体がある程度耐えれてる。

出血はするけどね、鼻血やら血涙やら。

てか黒い輪はもう付けられないんだな、よかった…起動するたびに俺の四肢と首に輪が追加されるとかだったら本当に面倒くさいことになってた。


「網膜投影、開始…!」


軽く顔についた血を拭ってから網膜投影を開始する。

視界がクリアになった。周囲の状況は…よし、まだファフニールが殴り飛ばした鈴木の機体は未だ態勢を整えられてない。

改めて今思うけど、このARMOR同士の決闘の勝敗ってどうやって決めるんだ?

しまった…昨日、ソフィー生徒会長の話をきちんと聞いておけばよかった。


「ファフニール、分かるか?」


一応、ファフニールに聞いてみる。

…わからない、か。というかARMOR同士の決闘は知らないんだな。

…別に謝らなくていい、俺も一緒だ。

分からない者同士、学んでいこうぜ。


「さて…狙うとしたら」


俺の心の中で狙う目星を付ける。

腕、足、関節、頭部、心臓。流石にARMORの心臓を狙うわけにはいかない。ファフニールと同じ個所にコックピットにあるのならARMORの心臓部=コックピットだからな。

となると…狙うは!


「頭部だな!」


操作レバーを動かし、大剣を肩のホルスターから剣を抜く。

大剣を振り下ろし、頭部を狙うが。


「防ぐか。ま、そりゃそうだろうな!」


鈴木のARMORは座り込んだ状態で両手で白刃取りのように大剣を受け止めた。

まぁ腐っていてもあくまでコイツは教員だ。ある程度の実力はあるよな。

だがな、その受け止め方はダメだろう?

両腕が上に上がったという事はボディががら空きになったって事だろ!


――ガキャァンッ!!


レフトレッグのブースターを吹かしながら心臓部を目掛けて蹴り込む。

一気にのけぞりながら決闘場を転がり、壁に激突する。

砂埃が巻き上がり、鈴木の機体が隠れるが警戒は怠らない。


「…ファフニール?」


ふと、気になりファフニールに声をかける。

オールイーターと戦ったときに比べてファフニールの指示がない…というより指示が遅い。

俺の方が早く反応して動いている。

そういえば、さっきARMOR同士の決闘を知らないって言ってたよな。

だから指示が遅れたりするのか…逆にオールイーターの事は知っていたから俺の脳が悲鳴を上げて血が吹き出るほどの指示を出せたんだろうな。

今は血はあまり出ていない。


「!!」


砂埃が巻き上がる場所から鈴木のARMORが出てきた。

アサルトライフルを構え、ファフニールと俺を目掛けて乱射してくるが…甘いな。

左方向にステップで回避し、一気にブーストし鈴木のARMORに少しずつ距離を詰める。


(23…24…25…)


射撃するアサルトライフルの球数を数えながら少しずつ距離を詰める

タイミングは、『30発目』。


(28…29…30!今だッ!)


30発撃ったと同時に大剣を引きずりながら正面から一気にブーストし距離を詰める。

鈴木のARMORは俺たちにアサルトライフルの銃口を向ける。

なぁ鈴木、知ってるか?そのアサルトライフルのマガジンの装弾数はな…!


――カッ。


「30発なんだよッ!!」


大剣をそのまま上に切り上げてアサルトライフルを真っ二つにぶっ壊す。

俺は整備科だ。ARMORの機体整備も武装整備も幾度もやってきたんだ。

性能は頭の中に叩き込まれてるんだ!当然、最大装弾数も覚えてる!


「!」


アサルトライフルが破壊されたと同時に、鈴木のARMORは懐から近接ブレードを取り出しこちらに目掛けて突き刺そうとしてくる。

だがそれも甘いな!俺はそれをアームで防がず


――ガシッ!!


ファフニールの左手でアームを掴んで防ぐ。


「そんな攻撃は…通用しない!」


ミシミシとファフニールが握る鈴木のARMORから異音が響いてくる。

少しずつ火花と雷が吹き出し、装甲がひしゃげていく。


「ファフニール…!引きちぎるぞ!」


右手で鈴木のARMORの肩を握りしめ、そのまま左手を引いて鈴木のARMORのアームを…引きちぎる!

ブチブチと装甲やら電線やらがねじ切れ。完全に腕が引きちぎられると同時に引きちぎれたアームを握りしめ、鈴木のARMORの頭部目掛けて振り下ろす。


――バギャアッ!!


「頭部にダメージ!」


鈴木のARMORの頭部にダメージを確認、だがアイカメラは破壊できていないか。

…思ったけどアイカメラ破壊したらこっちが有利だな。視覚がなければ俺たちを捕捉することもできない。


(目、だな)


よし…破壊箇所の第一候補はアイカメラだ、視覚さえ奪ってしまえばこっちが有利になる。

第二候補はもう片方の腕か両足。抵抗力をすべて奪ってしまえばこっちの物だ。

…ファフニール、コックピットは最終手段だ。


「狙いは定めた…鈴木はどう来る?」


鈴木のARMORの動きを凝視する。

残った片腕で何をしてくる?地面に落ちた近接ブレードを拾うか?アサルトライフルの破片で攻撃してくるのか?腕で攻撃してくると見せかけて足か?

一つ一つの動きを見逃すな。相手はどんなことをしてくるのか分からない。

何せ教員かつ不戦勝にさせ、俺を殺すのに躊躇もせずシャッターのパスワードを変えた愚か者であり


(俺の親友に矛先を向けようとするクソ野郎だ…)


卑怯が服を着てARMORに乗っているような存在だ。

警戒は怠らない。


「…ん?」


直立不動のままピクリとも動かないぞ?何故だ?

何かしらチャージしているのかと思ったがチャージできるレールガンみたいな電力を使うレーザー兵器はぱっと見は見つからない。

もし、目から電磁砲とか撃てるのなら正直俺も動くべきなのかもしれないが…電力を使う兵器は特徴がある粒子の吸引や、電力によって生じる電気の漏れがあるはずだが…鈴木のARMORからはそういうのは見えない。

言っても引きちぎった腕から生じる電気くらいだ。


(何を考えている…?)


凝視していると、プシューッと音が鳴り鈴木のARMORのコックピットが展開され、そこから額から血を流している鈴木本人が姿を表した。

…何か言っているようだが何て言っているのか分からない。

そういえば通信機器がないな。


「ファフニール、通信機器は…取り外されてる?マジか、取り外されてたのか」


思えば初陣の橋で戦っていた時もファフニール以外の声とか指示とか通信とかが来なかった理由は通信機器がないからか。

何で取り外されているのか分からないが、俺もコックピットから出ないとな。


「ファフニール、俺を出してくれ」


網膜投影を終了し、やや赤い視界と血涙を気にせずコックピットのハッチを開けて貰い、ハッチの蓋を床にして立ち、鈴木の方を見た。


「鴉羽…零亜!何故私の言葉を無視をした!」

「無視も何も、ファフニールには通信機器が取り外されてるからなんも聞こえねぇよ!それで?何で急にハッチから出てきやがった!」

「…鴉羽零亜、別にお前を認めたっていい!」

「…」


鈴木はふんぞり返りながら言い始めた。


「禁忌機体に乗れるだけの小僧だと思っていたが、ここまでできるならパイロットとして認めてやってもいい!それで…これ以上お互い戦ったって何の意味もない!ここはひとつ穏便に」

「何の話をしてる」

「へ」


俺は意図が良くつかめず、問いかける。


「何故認める認めないの話が出てくる?それにお前は整備科の教員だろ?パイロットになるために整備科の先生、ましては副担任の許可は必要ないと思うが?」

「そ、それは」

「てかさ…本当に何言ってんだ?これは戦いだ、ただ相手がARMORってだけの戦いだ。じゃあ聞くがお前はオールイーターと戦ってもオールイーターにお互いの利益が無いとほざき、降参するのか?」

「!!」

「馬鹿言うんじゃねぇよ。俺がなろうとしてるパイロット達はずっと命がけで戦ってたんだ、死にたくなくても逃げずに立ち向かってな。まぁ撤退するときもあるかもしれない…だがな、それは『ただの撤退』だ。まだ負けを認めていない。次に戦うときは必ず倒すという闘志を燃やして撤退しているんだ。それに比べて…お前がやっている行為は撤退ではなく負けを認めた降参だ、わかるか?」

「だ、だがいいのか!?」

「何がだ?」

「今、ここで戦いを終わらせば無駄な力を浪費することはな」

「あぁ、今ここで戦いを終わらせば俺に向いた矛先は俺の親友へと向くな」

「な、なっ…!!?」

「…図星かよ」


軽く鎌をかけたつもりだったんだがな。

…奇遇だなファフニール、俺も同じ気持ちだ。


「俺の中のパイロットっていう存在を汚すな。それと一つ言っておく」

「あ…?」

「俺はお前を必ず叩き潰す。降参?したきゃすればいい、俺は聞く気はないがな」

「き、貴様…後悔させてやる!!」


すぐさま鈴木はコックピットに乗り込みハッチを閉じた。

それを見届けた俺は心の中でファフニールと考えが一致した結論を頭の中で復習した。


(コイツは確実にぶっ潰す、二度とパイロットと名乗れないようにしてやる)


俺…いや俺たちはコイツを赦さないことにした。

コックピットに戻り、軽く深呼吸してから網膜投影し鈴木のARMORを見た。

隻腕で近接ブレードを握りしめ、こちらを見て居る。

一見、片腕でも倒れないという意思表示や雰囲気を醸し出しているが…中身がアレだと分かっていると不屈の意思とかそういうカッコいい例が何一つ出てこない。

強いて言うなら…なんだろう。


(カリスマ性とかがなく、金だけでのし上がったどっかのボスがただ自分の地位や財産を守る為だけにメッキに身を包んで哀れに泣き叫んでいる…的な感じだろうか)


そういう発想しか浮かばん。

まぁそんなことはどうでもいい、今は目の前にいる的に集中しろ。


「ふぅ…!!」


一呼吸入れていると鈴木のARMORが先に動き出し、近接ブレードを握りしめこちらに向かって突撃してくる。

そして目の前まで近寄り、近接ブレードの刃をファフニールの頭部目掛けて突き刺しに来る。

それを…!!


「ぐっ…!!」


両足のレッグスラスターで右方向へステップして回避し、更にスラスターの出力を上げて一気に回転しもう片方の腕を狙おうとしたが少しずれ…ライトレッグを破壊。


「狙った所じゃないが…これでいい!」


不幸中の幸いだ。片方の足が無くなればARMORも嫌でも止まる。

そして…立ち上がるのにも、バランスを取るのにも時間がかかる!

ここで…!


「潰し切る!!」


◇◇◇


決闘場のリングを見る生徒や先生たち。

今、彼らが見ている戦いはあまりにも一方的過ぎた。

一方的に、少しずつ、的確に…鈴木のARMORの装甲や部品、さらにはレッグやアームを粉微塵に砕き、引き裂き、切り分ける。

対する零亜とファフニールは鈴木の一心不乱の攻撃をひらりと躱し、躱した際に生じたエネルギーをカウンターに活用し、的確に攻め続けている。

その光景を目にする全員は鈴木足立という教員がどんな人物かを知っている為、歓声が沸き上がる。

だが、その光景を静かに驚く者たちも居た。

決闘場管理室で二人の戦いを眺める東雲学園長含め生徒会長『ソフィー・ハント』、副生徒会長『八神斑琥やがみ むらく』、書記『アウローラ・ヴァルティ』の4名だ。


「こ、これは…!?」

「す、凄い…対ARMORとしての戦い方もそうですが操作技術が1年生だとは思えません」

「だが鴉羽はARMORにまだ二回しか乗っていないんだぞ!?こんなことが…出来るのか?」

「…まさかこれほどとは…アレが強いのか鴉羽の潜在能力がすさまじいのか」


忘れてはならないのは鴉羽零亜はファフニールにまだ『二回しか乗っていない』という事。

本来のAT学園のARMOR’sであれば、1年から量産機に乗り訓練や実践を経て少しずつ操作技術や戦闘面を徐々に強くしていく…というのが教育理念。

だが今、戦っている鴉羽は明らかに異常。

ロクな戦闘訓練もなく、操作技術を学ぶ機会もなく…整備のおかげでARMORの武装や性能が頭に叩き込まれているかもしれないがその一言で片づけられない強さがある。


(…)


杖に両手を添えて戦場を見る東雲学園長。

やがてその戦場は…終わりへと進んでいった。

ファフニールと鴉羽が確実に鈴木とそのARMORを削り取り…気が付けば。


「…終局」


決闘場の中央には元がARMORとは思えない鉄の塊が転がり、その近くで見下すように…ファフニールと鴉羽零亜が立っていた。


――プシューッ。


鉄の塊のコックピットのハッチが開き、顔が青ざめ、半泣きの状態の鈴木足立が姿を見せた。


『はぁ…!はぁ…!!も、もうやめてください…私が…私が悪かったです…』


恥も外聞もかなぐり捨てた鈴木はコックピットから降りて、ファフニールたちに土下座する。

すると、ファフニールの方もコックピットのハッチが開き両目から血涙している鴉羽も姿を現した。


『…これで終わりか』


そんな鈴木の姿に目もくれず、息を吐いた鴉羽。

そして…決闘場の空間に投影されたプロジェクターにこう投影された。


【『鈴木足立』戦闘続行不可と認定、勝者『鴉羽零亜』】


「終わり、ですね」

「あぁ、あまりにも一方的過ぎる試合だったな」

「東雲学園長、鈴木足立教員は如何致しますの?」

「…私が決断するまでもないだろう。あそこまで心を折られてはな」

「そうですわね…」

「しかし、随分と見どころがあるパイロットですね」

「あぁ、アウローラのいう通りだ。ソフィー生徒会長、鴉羽零亜の『ナンバーズ』の勧誘はお考えで?」

「えぇ。そもそもあの橋での戦いを見てから既に検討はしていましたが、この戦いで確信しましたわ。彼らは…力になる」

「まぁ…勧誘は任せるがあまりしつこくはするなよ?」

「分かっていますわ」


生徒会の三人と東雲学園長は管理室から退室する。


(鴉羽零亜、か。整備科の星が…こうも化けるとは。さて…どう転ぶか)


東雲学園長はそう心の中で呟きながら管理室を後にした。


「ふうぅっ…」


そんなことも知らず、鴉羽はファフニールが開けた決闘場の大穴を見る。


『これから頑張らないとな。なぁ、ファフニール』


ファフニールの開いたハッチに座り込み、コックピットの座席に手をついて…そう呟いた。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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