第3話 龍と彼は
「はぁっ!はぁっ!!」
本能と指示の通りにファフニールを操作し、視界に入るオールイーターを全部叩き潰す。
だが…これは。
「想像以上に集中力と体力…そして身体がヤバい…!」
ファフニールからの声を頭の中で理解し、目の前にいるオールイーターを叩き潰し、俺なりに戦況を理解して動く。
そこまではいい!問題は…!
「ゴホッ!?ゲホッゲホッ!?」
口から血を吐き出す。
何というか…コイツに命を吸われているような感覚が全身を支配する。
定期的に網膜の投影を切っては自分の身体の状態を確認しているが全身血だらけで、激痛、出血、血涙による視界不良があって…とてもじゃないが操縦者としての外傷のレベルを超えてる。
改めて思うが何だこの機体…!
ただ、俺の肉体やファフニールの指示のお陰で二つの事を理解した。
「くっ…!らぁぁぁぁ!!!」
またファフニールの指示の通りに動き、オールイータを大剣で叩き潰しながら機体を回転させてかかと落としで別のオールイーターの胴体をとらえ、身動きが出来なくなったところで大剣を突き刺す。
戦っている間は…いやはっきり言うとオールイーターを攻撃しているときだけ一瞬痛みが引く。
そしてもう一つは。
「ぐぅッ…!!?」
俺は、ファフニールに引っ張られている。
コイツの判断に身を任せているままで自分の意思で動けていない。
このせいもあってかファフニールの声が頻繁に聞こえて来て頭の処理が追いつかない時がある。
俺の反応速度と…ファフニールの反応が違いすぎる!
「はぁっ!!?ゴホッゴホッ…どけぇぇぇ!!!」
大剣を横に振り抜きつつ、回転し両手持ちから左手で逆手持ち。
空いた右手でオールイーターの顎を掴み持ち上げ、逆手持ちした大剣で首を真っ二つ。
「次は…!!次は何処だ!!」
指示を待ちながら周囲を見回す。
…そこには。
「…あ?」
オールイーターの肉片や残骸がそこら中に転がっていて…周囲には何も無く、立っているのは…俺だけだった。
というか今気が付いたけど、最前線に立っていたARMORより前に出て戦っていたみたいだ。
そりゃそうか、援護という援護なかったもんな。
「はぁ…はぁ…!ありがとう、ファフニール…」
一応お礼は言わなきゃな…。
お前のお陰で俺は死ななかった。もしいなかったらサソリに食われて終わりだっただろうな…。
ただ、一つだけ文句を言いたい。
「いっ…てぇ…」
網膜投影を終了し、思いっきり息を吐いてコックピットの背に全体重を預け、ARMORの操作レバーから手を離して、ファフニールを待機状態にする。必然的に指示は聞こえなくなる。
そして改めて激痛が巡る全身と血だらけの肉体を確認する。
「血涙のせいで視界が真っ赤だ…」
視界は真っ赤でかろうじて見える程度。
この痛みは何とかならないのかと心の中でファフニールに文句を言った。
「はぁっ…はぁっ…あー疲れた」
俺は…戦いきった安心感のせいか身体に力が入らなくなったが、一旦呼吸を整えた。
◇◇◇
AT学園避難区画。
「オールイーターの反応完全消失…戦闘終了しました」
投影されたファフニールという機体の戦闘の映像を見ていた避難区画の整備科や教師、橋の戦闘により負傷したパイロット。
あまりにも強すぎる援軍。ほぼ単騎でオールイーターの大半をなぎ倒した。
宛ら、嵐のよう。
「す、すごい…!」
「すごいな、こんなパイロットが居るのか?」
「い、いえ…3年生でもここまでの動きが出来るのもかなり限られますし、3年生は全員市街地で戦闘していました。となると…!」
「1か2のパイロットか…末恐ろしい。このパイロットが順調に強くなれば化け物にもなるな」
そこへ。
「東雲学園長」
「む?ソフィー生徒会長」
「ソフィー生徒会長…ってことは!」
明楽は驚いた。
この金髪でロールの髪、誰もが目を釘付けにされる豊満な体。
そして…威厳とこの学園における『生徒会長』という二つ名。
生徒会長という二つ名の意味、それはこの学園における『学園最強』の名を冠する。
パイロットの戦績、オールイーターの討伐数、操作技能などなどにより投票や戦場での逸話を参考にして学園長が最強を選ぶ。
文字通り最強に選ばれたものが…この学園の『生徒会長』になれるという中々にいかれたシステムだ。
「どうした?」
「…あの黒と赤の機体に乗っているのは誰ですか?」
「それは私たちにもわからん」
「わからない?」
「あの機体は本来は乗れないはずの機体。故に通信関係は全て取り除いておる」
「カメラは?」
「一条、投影できるか?」
「カメラは生きているのでモニターに東映は出来ます!」
「では頼む」
「ファフニールの搭乗者、投影します!」
そうして総員が見るヒーローであり、戦況をひっくり返したあの機体の操縦者。
それは
『はぁ…はぁ…!』
「れ、零亜!?」
画面には血塗れの鴉羽零亜が映った。
それに一番最初に声を上げたのは明楽。
「何でARMORを…!?」
「貴方」
「え、あっはい…」
その明楽に声をかけるソフィー生徒会長。
「彼とはどのような関係で?」
「えっと同じ整備科で友人です」
「整備科…?本当に?」
「は、はい…」
「…整備科であの操作技術?」
一人でぶつぶつと呟くソフィー。
「探していた零亜があそこにいては探せないわな。だが…何故アレを動かせるのか」
『…ファフ…ニール…!』
「む?」
映像の向こう側にいる零亜が話し始める。
『ゴホッゴボッ!ファフニール…一旦、AT学園のARMOR整備所に行くぞ。整備所に行くだけいいからこれ以上、俺に指示は出すな…!これ以上指示を出されると頭の処理が追い付かない…!』
と機体に話しかけ、レバーを握る。
すると。
『ぐぅっ…!!?ゴホッゲホッ!!はぁ…!はぁ…!』
口から血を吐き出し、呼吸が乱れる。
「零亜!?」
『起動時のアレに比べたらいくらか慣れたな…行くぞ、ファフニール。網膜投影、開始!』
そういってファフニールを動かし、助走をつけてから空へと飛び背中のジェットで飛んでいく。
「先程の整備科の人」
「は、はい!」
「彼は…ARMORを動かしたことがありますの?」
「い、いや…それに整備科はARMORの操作を無断で行えば規約違反ですし」
話しているうちにファフニールに乗り込んだ零亜はARMORの整備所に着陸。
『後で整備してやる…俺がこの学園にいれたらな』
と言い零亜は両方のレバーから手を離し、ARMORを座り込ませ、待機状態にした。
『二度目だが…ありがとうファフニール。今回限りの契約はこれにて満了だ』
ハッチを開けて零亜は下へと降りようとする。
…すると。
――キィィィン…。
『うぉっ!?』
待機状態にしたはずのファフニールは零亜を両手のアームで受け止める。
そしてそのまま…。
――ドシュウゥゥンッ!!
飛んだ。
『ちょ!?何処に連れて行く気だお前!?』
ファフニールが飛んだ方向を見た瞬間、東雲学園長は理解した。
「あの機体、避難区画に来るな」
「え?」
「待機状態にしたARMORが動き出すなど前代未聞だが、あそこまではっきり動き操縦者を守る動きをするのであれば…真っ先にここに来るだろう」
「え、ですが…」
「私を信じろ。今すぐ避難区画の天井のハッチを開けよ」
「は、はい!」
一条は東雲学園長に言われた通りに避難区画の天井のハッチを開ける。
そこへ。
――ゴォォォ…。
ジェットで飛びながら向かってきたファフニール。
そしてその場で着地し、両手の上に乗せられた零亜を避難区画に丁寧に置く。
「お、おぉ…?」
血だらけの零亜は何故ここにと疑問を浮かべてそうな顔をしつつ、ファフニールのヘッドを見る。
その顔は無機質な機械の顔だが、何処か安心しているようにも見えた。
「あ…?」
すぐ立ち上がろうとした零亜だが、すぐさま足がふらつき倒れそうになる。
「零亜!!」
倒れかけた零亜を支えたのは明楽。
「あ、明楽すまん…ってお前、今の俺に触ったら制服が汚れる」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
「ちょ、ちょっとそんなに大きい声を出さないでくれ…耳が」
「あ、あぁ…ごめん」
明楽は零亜を支えつつもう一度静かに座らせる。
そこへ。
「鴉羽零亜!貴方…整備科で男でありながら何て事を!!」
空気を読まない整備科の副担任鈴木が怒鳴り声を上げながら零亜に向かって歩き出す。
「だからうるせぇ…!」
「何ですって!!」
「うるさい…ただでさえ身体が痛いんだ…」
「貴様!!」
零亜の元へ近づき、気に障ったのか手のひらで零亜をビンタしようとした鈴木だが。
――キィィィン!!
「え?」
急にファフニールが動き出し、レフトアームを開いて上に掲げた。
「ま、待て!ファフニール!!」
すると零亜が声を上げた。
「何で急に人を叩きつぶすような指示を俺に出した!?」
「…え?」
衝撃的な零亜の発言に鈴木は驚く。
「それだけはやめろ、腕を下ろせ」
――キィィィン…。
零亜の声に反応したのか、ファフニールは静かにレフトアームを降ろした。
「はぁ…はぁ…」
「れ、零亜?」
「うん?」
「何で…アレは動くんだい?」
「俺にもよく分からない…ただファフニールに乗り込んでからはあの機体から声が聞こえてくるんだ」
「声…?」
「あぁ。さっきオールイーターと戦ってる時も指示を出してくれたりはしたんだが…今の指示は流石に止めなきゃダメだった」
「なんて言ったんだい?」
「…『パイロットに対する攻撃モーションを確認、排除します』って」
「つ、つまり…」
「うん、確実に開いたレフトアームで叩き潰そうとしてた」
とんでもないことを話し始める零亜。
パイロットの安全を守るために外部の敵を問答無用で殺そうとしたのだ、この機体は。
誰も乗っていないのに。
「それは本当か?鴉羽零亜」
「東雲学園長…」
「機体から声が聞こえてくると?」
「は、はい…」
今度は東雲学園長が零亜の元に歩み寄った。
「それより、身体は大丈夫か?」
「はい…血だらけですけど、外傷はありませんし」
「ないのか?それはオールイーターと戦ったときにできた傷ではなく?」
「はい。あのファフニールに乗り込んで起動シークエンス中と戦闘中に鼻血とか血涙とかして…それで」
「…起動シークエンスが完了したのか?」
「は、はい」
東雲学園長の表情が少し強張る。
「あの、マズかったですか?ファフニールの起動シークエンスを実行するのは」
「当たり前だ!お前は整備科」
「鈴木、お前はちと黙ってろ。」
「し、しかし…!」
鈴木が代わりと言わんばかりに零亜を攻め立てるが、それを止めたのは東雲学園長。
「鴉羽零亜」
「は、はい!」
「ファフニールからは今は何の指示も来ていないな?」
「今は何も」
「よし」
そのことを確認した東雲学園長が膝を曲げて座り込む零亜と目線を合わせて質問し始めた。
「まず君は整備科だな?」
「はい…知っての通りだと思いますが」
「うむ。そして君はARMORの装置の役割や整備方法しか知らないか?」
「はい、ただ多少は起動方法も知っていましたが細かな部分は…」
「なるほど。であればあの機体がどれほど恐ろしい物か知らないな?」
「お、恐ろしい物なんですか?」
「あぁ…一条」
「は、はい!」
「『禁忌機体』の情報を大型ディスプレイに展開せい」
「よろしいのですか?」
「よい。この場にいる生徒と職員。そして特に鴉羽零亜に聞いてほしい。あぁ…あと西園寺明楽や」
「はい!」
「鴉羽零亜を手当しておやり。外傷は殆どないとはいえ怪我人だ、頼むぞ」
「分かりました」
明楽が零亜を手当てしつつ、零亜たちは大型ディスプレイを見始めた。
「まずは基本中の基本の話だが…ARMORという機体は三種類に分けられる。それは知っているか?」
「い、いえ…」
「そうか…零亜は1年だったな。技術故にもっと上だと思っていた」
「ど、どうも…」
「まず三種類に分ける。一種類目が『通常機』、これは一般的な量産機のことを示す。二種類目が『改修機』もしくは『専用機』。AT学園の規則に乗っ取ると戦場で一定の戦果を出したもの、操作技術が秀でて居る者に生産される。そのパイロットの性能に合わせた限定の機体してな」
「…」
「…そして一番の問題がこの三種類目の機体」
そういって一呼吸入れてから東雲学園長は話した。
「鴉羽零亜、お前が乗った機体は三種類目の『禁忌機体』の内の一機…それが『ファフニール』だ」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




