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第27話 太陽が惹かれる光

(あっぶねぇ…!)


ぶっ倒れる男と俺の手で握りしめている女の顔を見る。

愛染さんに似ている顔つき。

美しくもあるが、先程の脅しはあまりにも愚かであり同時に醜い。

…それとファフニールが居なかったら道中のトラップで倒れてた可能性もあった。

こればっかりはファフニールに感謝しつつ


(俺の思った通りに動いているな…!)


ファフニールが今している行動を知ると同時に思った通りに動いていると認識した。

これならもしもの場合でも、守り切れるどころか…やられた分を全部やり返せる!


「お前が何処の誰か知らない…でもこれさえ押せば」

「押せよ」

「は」

「聞こえなかったか?押せよ」


ファフニールが言っていた通りの事が起きるのなら、そのスイッチを押すとここから30km先で活動を停止しているオールイーターの周りに設置されている爆弾が起爆し、目覚めさせる。

だが、問題はそこじゃない。

俺が気になっているのは活動を停止しているオールイーターが活動を再開するには色々な説がある。

爆音、一定時間、人間など。

だが…ファフニール曰く、アレは『音』で目覚めるとのこと。

ファフニールがオールイーターのことを知っているのはまだいい。

問題は


(何でこの二人がその『事』を知っている?)


偶然かもしれないが偶然とは思えないのもまた事実。

こればっかりは聞かせてもらわないとな。

お前たちが目覚めさせたオールイーターをぶっころしてからな。


「後悔…しなさい!」


そういって女はスイッチを押した。


「…!」


ファフニールの報告と同時に頭に痛みが走る。

よし、件のオールイーターが目を覚ましたな。


「じゃ、付いてきてもらおうか」

「なっ!?」

「拒否権はないがな」


俺は今も伸びている男と女を片手で担ぎながらもう片方の手で設置されているカメラを持ち、外へ向けて歩く。

一歩一歩進むたびに、オールイーターの情報が流れ込むと同時にナンバーズ出撃の命令が伝播される。


『鴉羽零亜、ナンバーズの出撃命令ですわ。愛染珊瑚のライブ会場から30km先でオールイーターが』

「知ってます、それに…俺は、いや『俺たちは出撃済み』ですよ」

『え?』


通信端末からソフィー生徒会長の出撃命令が下ったことが告げられるが、言った通り俺は既に出撃済みだ。


「ナンバーズで出撃済みって…どういう事よ!」

「言った通りだ、お前らの行動は把握していたし何よりボディガードとしての俺の役目は」


◇◇◇


『愛染珊瑚さんとその関係者全員を守り、ライブを完遂させること』

「!」


カメラが拾った鴉羽の声がライブ会場に響き渡る。

ボディガードとしての鴉羽の役目は『守る』どんなことをしても、何が何でも守り切ること。

愛染珊瑚のライブを完遂させて、碧海への歌を、思いを、夢を届ける。


『お前たちは知らないだろう。珊瑚さんがどれほど努力し、お前たちが仕向けた刺客のせいでどれほど傷ついたのかを』

『そんなの…知ったことじゃ』

『知ったことじゃなくても知ってしまうんだよ。お前たちのクズのような行為は』

『何ですって!?』


キーキーと喚く女性の声に耳も向けず鴉羽は歩く。

やがて光が差し込み、外に出た。


『ぐえっ!?』

『無力化はさせてもらう』


鴉羽は担いだ二人を地面に叩き落とし、意識があった女の顔面に拳を叩きこみ気絶させた後、周囲を見回してから軽く咳払いをする。

そして


『来い!ファフニーィィィィィィル!!』


彼は名を叫んだ。

自分自身の相棒であり、愛機を。

やがて、名を呼ばれた魔龍は


――ドッシィィィィィンッ!!!


その呼びかけに返答するかのように、空から赤と黒のARMORが降ってきて風を舞い上がらせ、着地する。


『ありがとう、俺の考えを汲んでくれて』


何を隠そう鴉羽は、もしもの時に備えてファフニールをライブ会場の近くで待機させようとしていた。

その結果、相手の最終兵器のようなものとしてオールイーターであり、計画ではARMOR’sの到着が間に合わないはずだったが…鴉羽の考えを汲んでファフニールは既に出撃済みだった。

故に既に一機のARMORとパイロットは出撃済みで今すぐにでも戦える状態へとなり、珊瑚の親である二人の計画は鴉羽とファフニールにより、完璧に破壊された。


『さてと』


鴉羽はファフニールを見る。

その視線と考えを読み取ったファフニールはレッグを曲げてコックピットのハッチを開けてからレフトハンドを鴉羽に伸ばした。


『ファフニール、俺たちがやることは変わらず守ることだ。けど今回は守る物が大きい』


ファフニールの手に乗ってから鴉羽は話し始める。

その言葉が愛染珊瑚やその場にいる全員に聞こえているとは知らずに


『愛染珊瑚さんに、阿達さんを含めた関係者、そして何百万人のファンたち。俺たちはそれらを守り、愛染珊瑚さんの夢を、想いを、歌を空へと届けさせないといけない。それこそが俺が交わした約束であり、完遂しないといけない任務だ。俺たちは愛染さんの夢への道を曲げさせちゃいけない』

「あ…」

『だから俺たちで目覚めたオールイーターをぶっ潰す、良いな?』


鴉羽の声に反応するかのようにファフニールのカメラアイが輝くと同時に手が動き始め、展開されたハッチに鴉羽が飛び込み、ハッチが閉じられた。


「鴉羽君…」


その光景を見ていた愛染珊瑚は二人でエレベーターの中に閉じ込められた時の事を思い出す。

彼は恐怖やトラウマを思い出していた愛染珊瑚に寄り添い、彼女の思う道を絶対に曲げさせないと言ってくれた。

更にそれを有言実行するかのように相対してきた敵たちを倒し、やがて元凶すらも薙ぎ倒した。

残っているのはライブを完遂させることのみ。

だが、最後の障壁としてオールイーターが目覚めてしまった。

それでも、彼女の心には恐怖という文字はなかった。


(ずっと…ずっと私の事を守ってくれる)


もう彼女の心のトキメキは誰にも止められない。

ステージで輝く彼女は誰にも止められない。

愛染珊瑚の歌を止められるものは何一つとしてない。

もう、あとは夢を叶えるだけだ。


「!!」

「愛染?だ、大丈夫なの?」

「大丈夫!」

「!」


心配する阿達の声をかき消すかのように明るく返答し、マイクを握りしめる愛染。

その声と笑顔をみた阿達は自然とホッとする。


(この調子なら…大丈夫そうね。でもオールイーターが目覚めたことは確かに一大事だけど…)


舞台袖に戻っていく阿達は今の状況を整理してから問題があることを知ったとしても、彼なら大丈夫だろうという考えに成っていた。


(頼むわね、鴉羽君。愛染のライブを守ってあげて…!)


両手を握り、鴉羽と愛染珊瑚に祈るが祈っているのは阿達だけではない、もう一人いる。

姉の成功を祈り、そのボディガードを信じる天からの祈りが。


「…よし!」


愛染は握りしめたマイクを構える前に、一呼吸入れてから…自分自身の歌声をマイクに乗せて会場全域から空へと響かせる。

同時にその空を舞う魔龍と玉座に座るモノも操作レバーを握りしめて


「ふぅっ…!」


激痛に悶えながらも目的を見失わず


「アレ、か!」


目標を視界の中にとらえて、ファフニールを操作しブレードを構えた。


◇◇◇


近くの建物の近くで着地し、建物の陰に隠れながら件のオールイーターの様子を伺う。


『鴉羽零亜、ただいまからナンバーズ含めARMOR’sが出撃します。ですが該当箇所までかなりの時間を有します。出来る限りは臨機応変に動き敵を殲滅してください』

「わかりました」

『…死なないでくださいまし』

「それは勿論です」


ソフィー生徒会長からの通信を受け取り、これからの動きを決める。

まず…俺以外のナンバーズの三人は到着まで時間がかかるとのこと。

つまり殆どの時間はあの蟷螂と単騎で何とかしないといけない。


「居る…でも、動きがのろいな」


ぱっと見は蟷螂のような見た目をしている。

細身の身体に異様なほど発達した前脚に鎌のような刃が備え付けられ、首を左右に振りつつゆっくりゆっくりと何処かを目指して動いている。

前のムカデに比べると質量は圧倒的に少なく、何よりも外骨格のようなものがない。

多分、ムカデよりも脆いと考えられるが…異様な雰囲気を感じるのもまた事実。


「慎重に動かないとな」


出撃するARMOR”s全員に送られた情報によると付近に人はおらず、唯一最短距離で人が集まっているのは愛染さんのいるライブ会場のみ。

ある意味、好き勝手暴れられるが…まぁ被害を出来る限り抑えて敵を殺す。

それだけでいい。


「…あぁ…分かってる」


今はまだファフニールからの指示による出血はないが、情報伝達によって生じる痛みがある。

ムカデに比べるとコイツの情報があまりにもなさすぎる。

…仕掛けるべき、か。


「分かった…!」


操作レバーでスラスターのスイッチを押してスラスターを展開し、ホバー移動しながら蟷螂に横から接近していく。


【キキ…?】

「ん?」


すると蟷螂は首を左右に振っていたが、急にこちらに顔を向けた。


【キキキッ…!】


少しずつ前脚の鎌を上にあげている。

これは…!


――ガキィィンッ!!


【キキキッ!!】

「やっぱりか!!てか…早!?」


攻撃の前兆だと俺とファフニールは感じ、ホバーを止め、地面を両レッグで踏みしめてからブレードで防ぐ。

蟷螂の鎌と俺たちのブレードから火花が散る。

パワーはあるがファフニールと同じくらいで鍔迫り合いもお互いに引くこともないが…問題は相手の動きの俊敏性だ。

攻撃予兆を感じ取れたからこそ防ぐことが出来たがあまりにも早すぎて驚いている。

目で追えるが…限度があるだろう!


「ぐぅっ!!分かっ…てるッ!!」


ファフニールの指示が俺の頭の中に襲い掛かってくる。

とにかく、鍔迫り合いを中断させるためにレッグで蟷螂の胴を蹴り飛ばす。


【キキッ!?】


ファフニールの足は蟷螂の胴の中心を捉えることができ、蹴り飛ばされた蟷螂は道路を転がっていきビルに背を叩きつけた。


「脆い…?」


今の蹴りでレッグフレームに蟷螂の血であろう黒い液体が付着していた。

予想通りムカデと違い、あの蟷螂には害骨格がない分、身体は脆い。

蹴りですら出血するのであれば、ブレードでぶった切れば一撃で殺せる。


「ファフニール、一気に決め…あ?」


俺は一気に決めにかかろうとしたが、ファフニールがそれを制止する。

なぜ止めるのかと思っていたら…その答えはたった今、知ることが出来た。

先程、ぶっ飛ばした蟷螂は鎌を周囲に振り回し、回転しながら元の姿勢に戻った。

鎌を振り回したおかげで周囲の建物は真っ二つに切り裂かれ、瓦礫が舞う。

もし一気に決めに行っていたら巻き込まれていたかもしれない。

ありがとう、ファフニール。俺を止めてくれて。


【キキッ!!キキッ…?】


舞った瓦礫の先に蟷螂は先程と同じように首を左右に振ってからゆっくりと動き出す。

だが…蟷螂の進んでいる方向には俺たちは居らず、明後日の方向へと行進を始めた。


「どういうことだ…?」


ついさっき攻撃を与えたのにその方向を見ずにどこかへと歩いていく行動の理由が分からない。どういうわけで明後日の方向へと歩き始めた?何故俺たちを見ない?

てか…さっきの蹴りの傷がもう塞がっている。

ムカデに比べて再生能力がものすごく高いのか?


「…ファフニール」


一応、ファフニールに聞く。


「アイツの情報とか行動の理由に何らかの目星はないか?」


正直、正面から戦っても俺に勝機はない。

実力差はなく、拮抗した勝負である為…このまま殴りあってもジリ貧で俺たちが負ける可能性が高い。

だからこそ、今は何でもいいから情報が欲しい。

有効打や決定打じゃなくてもいい。

ただ、アイツを知れる情報を。


「ぐっ…!?」


激痛にさいなまれる俺の頭の中でファフニールの予想が大量に流れて来て、それが一つずつ処理されていく。

可能性がある物と可能性がない物。

やがて…ファフニールは俺に一つの指示を出した。


「…投げろ?」


ファフニールは近くにある瓦礫を蟷螂の近くに投げてほしいとのこと。


「当てなくていいのか?」


…当てなくていいらしい、むしろ当てないでほしいとのこと。

とにかく、ファフニールに言われた通り近くの大きめの建物の残骸を開いている手で掴み蟷螂の近くに投げ飛ばす。

空に浮かんだ巨岩は地面に着地し、轟音を響かせたと同時に


【キキィッ!!!】


蟷螂は先程の瞬足で動き、着弾した岩に鎌を振り下ろし真っ二つに切り裂いた。


「投げた岩に反応した…?」


今の行動の結果として蟷螂は投げた岩、というより着弾した岩を目掛けて攻撃した。


「…次は直接当てろ?まぁ、分かった」


今度は『岩を直接当てろ』という指示。

これでいったい何がわかるって言うんだ、なんて思いつつもう一つの残骸を蟷螂目掛けて投げつける。

すると


――バギャアッ!


【キキキッ!!?】

「当たった!?」

【キキキッ!!】

「!!」


岩が当たったと同時に蟷螂は動き出し、俺たち目掛けて鎌を振り下ろしてくる。

間一髪、スラスターを横に放出し回避した。

一気に距離を離してから着地する。


(どうなってんだ…!?)


俺はさっきの行動がよく分からない。

蟷螂はあんな見え見えの攻撃を避けず、そのままくらってから俺たちに攻撃を仕掛けてきた。

あえて受ける理由も無いし、堂々と投げたから俺の位置もわかるはず…。


「いや…違う!そう言う事か!」


このタイミングで、俺は確信すると同時に決定的な証拠をファフニールが提示してくれた。

あの蟷螂は…『目が見えていない』。

そもそもの前提が間違っていた。

俺への最初の一撃はファフニールのホバーの音を拾い、向かってきていると確信してから攻撃を仕掛けてきた。

次に着弾した岩を攻撃した理由はそこから轟音が発せられたから攻撃を仕掛けてきた。

最後に直接岩が当たった理由は空から音もなく飛んできた岩に反応できなかったからで、飛んできた方向を予測し、鎌を振り下ろしてきた。

んで、ファフニールの決定的な証拠として、目の前にいるオールイーターの蟷螂は『音で目を覚ました』。

つまり、得られる答えは一つ。

あの蟷螂は『耳はいいが、目が見えない』

これしかないだろう。


「よし…音に反応するのなら静かに攻撃は…できないな」


蟷螂の特性はわかったが、残念ながら有効打は俺にはない。

というかARMORに乗っている俺たちにとってあまりにも相手が悪い。

何らかの駆動音を聞かれた瞬間、攻撃されるし、何よりもバレる。

そうなるとロングレンジの攻撃が有効打になるが、残念ながらファフニールにはロングレンジの武装はない。

俺の候補だとソフィー生徒会長の専用機のロビンフットの一矢が有効打だと考える。

となれば、俺がすべきなのは時間稼ぎなのだが…コイツは音の鳴る方へ動く。

俺も動かなければ音が鳴ることはないが…この蟷螂は何処かへとゆっくりと進んでいく。

だがこのあたりで音が鳴っているところなんてどこにもないはず…?


「あっ!?」


音が鳴っている候補…というより答えに気が付いた。

コイツがさっきからゆっくりと向かっている行く先、それは…!


「ライブ会場…!」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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