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第26話 反撃の狼煙が歌と共に舞い上がる

夜のとばりが上がり、いよいよ本番の日が訪れた。

阿達さんからの迎えの車に愛染さんと共に乗り、ライブ会場に向かう。

その道中、他の関係者の方からあるプレゼントを頂いた。

まぁスーツなんだが…普通のスーツとは違い裏地と表地に防弾の生地が縫われており、多少の弾丸を貫通せずに受け止められるし、伸縮性もある。

あと革靴もこれもオーダーメイドのようで革靴でも走ったり飛んだりできるらしい。

本当、何から何まで至れり尽くせりってやつだ。


『ゲート、異常なし』

『入場ルート及びレベル1箇所、異常なし』

『会場ない、レベル2箇所も異常なし』

「最終防衛ライン、異常なし」

『了解、このまま警備を続ける。最終防衛ライン担当、鴉羽零亜はもしもの場合は臨機応変に動いていい。警戒を怠らず、自由に動け』

「了解」


左耳につけたインカムで他の警備員と連携を取る。

どうやらあの社長さんが雇った警備員はかなりの手慣れ。驚きなのが全員女性と来たもんだ。スキャンダル云々を気にした結果なのだろう。

しかも、女性と侮ることなかれ。その技量は…ファフニールのお墨付きだ。


「…」


軽く深呼吸しつつ、周囲を見回すとともに舞台の方を見ると


――♬~♪~!


愛染さんは歌って踊っている。

ちょっと場所的に表情は見れないが、びっしりと居る他のファンたちの様子を見るにきっと満面の笑みで歌っているのだろう。


「本当、凄いよ」


舞台裏で待機する俺は小さく、呟く。


(誰だって手にしたくなるさ、あんな輝かしい光を)


すると


『…む?監視から伝令。ライブ会場3階のスポットライトなどのメンテナンス室に誰かが入ったぞ。本日のメンテナンスの予定は』

『本番にメンテナンスがあるわけがないだろう。敵だ、付近で対応に行ける者は?』

「俺が行く、舞台裏からなら俺が一番近い」

『なら代わりの者を舞台裏に向かわせる。対応してくれボディガード』

「了解」


インカムの通信が終わり俺は舞台裏から消え、件のメンテナンス室に走り出す。

来たか…正直、このままライブが終わってくれることを願っていたがそう簡単にはいかないよな。

階段を駆け上がり、件のメンテナンス室の扉の前についた。

俺は懐から非殺傷弾が装填されたハンドガンを取り出し、マガジンを取り出してきちんと装填されていることを確認し、再度マガジンを装填した。

非殺傷弾のハンドガンの所持は…まぁ銃刀法違反でアウトだが今回に関しては特例で許可を頂いている。

遠慮なく、使わせてもらおう。


「ふぅ…よし」


扉に手をかけて、開ける前に一度問う。


「…何人見える?」


先にファフニールからの情報を聞く。枷を通して中に何人いるか教えてくれ。


「…一人?」


え、マジで一人?

一人だけ動いたってことか?こういうのって結構団体で動くイメージがあるんだが…いやいい、敵が一人ならさっさと鎮圧して元の場所に戻る。

それだけでいい。

扉を小さく開き、クリアリングしつつハンドガンのバレルを向けながら中に入る。

息を殺しながら素早く静かに動く。


「!」


奥に進んでいくと、メンテナンスするためのコンソールを動かすところに誰かがいる。

ライブ会場の上の方は流石に光が少ないが…服装はどうみたって関係者じゃない。

絶対に敵だ。

俺はハンドガンのバレルをソイツの後頭部に向けながら出来るだけ忍び寄り


「動くな」

「なっ!?」


声をかけた。

男は急に声をかけられ驚くとともにその相手が銃を所持して、バレルの先を向けている事に気が付き両手を広げる。


「何者だ、お前」

「い、いや…俺はただの」

「関係者ではないな。格好もそうだが何よりも本番当日にメンテナンスの予定はないし、本来は前日に行うはずだ。もう一度聞くお前は何者だ」

「…」


返答はないが


「くっ!」


男は懐から何かを取り出す。

そしてそれが俺に向けられると同時に俺は回し蹴りで取り出したものをはじく。


「があっ!?」

「水筒に見えるが…中身は催涙スプレーか。なるほど…考えたな」


そもそも危険物をここに持ち込むことはできない。

金属探知機とかそういうのがあるからな。だがこの水筒は金属でできている。

逆に金属の中身をすり替えれば怪しまれない。しかも荷物の透過が透過させられると考えてあえてナイフではなく催涙スプレーを仕込んでいる辺り…結構アウト寄りだな。


「抵抗を確認、捕縛するぞ」

「く、クソ…!?」


男は一歩一歩と後ろに下がっていくが一歩下がるたびに俺は二歩近寄る。


「お前を気絶させる前に問う。何でこんなことをした?」

「そ、それは…」

「非公式ファンクラブに一斉送信されたメールか?」

「!!?」


男はギョッとした表情をする。


「既にほかの奴から聞いたよ。メールで動いた奴もいるって話もな…お前もその類か」

「…いいや、俺は違う」

「ん?」

「ある人たちにバックの中に入っている物をメンテナンス室に置けって言われたんだ…!」

「言われた?」


前の奴からの情報と違う。てか待て…!言われた!?

コイツ…会っているのか!?恐らく元凶に。


「あぁ言われたんだよ!しかも前払いも貰ったんだ…!」

「いくらだ」

「…300万」

「御大層な大金だな。それで、そのバックを置いたらどうするつもりだったんだ?」

「この会場の裏口で待機していろって」


会場の裏口…。

一度、会場の見取り図を思い出すと同時に気が付いた。

なるほどな、会場の裏口は舞台から一番近い出口、愛染さんの避難を狙っての待機って事だろう。


「どちらにせよ、お前は害する物だ。鎮圧させてもらうぞ」

「い、いや…!?」

「先に言っておくが情報を話せば見逃すなんて一言も言ってないからな。お前は俺の質問に勝手に答えただけだ」

「が、がぁっ!?」

「俺が非情と思うならそう思えばいい」


そう言って俺は男の首元を掴み、背負って地面に背中を叩きつける。


「がはっ!?」


男の肺から全ての空気が抜けると同時に男はピクリとも動かなくなった。

背負い投げなら大したダメージは入らないが、ここの地面はフローリングや畳のような衝撃を周りに分散させるものは無いし、カッチカチの床で受け身も取れないならそりゃこんな大ダメージになる。


「鴉羽から全警備員に通達。メンテナンス室に侵入した者の抵抗が見られたが鎮圧を確認、先に侵入者の持ち込み物を確認する」

『了解、侵入者はメンテナンス室の入口に置いておけ』

「了解」


言われた通りに俺はその男を担いで、一度メンテナンス室から出てその付近で寝かせる。

そうして再度入室し、男の持ち込み物を見る。

見た目はただのバックだが、何が入っているんだ?

ジッパーを開けて中を見ると…そこにあったのは


「!?」


四角い形状、括りつけられたパイプのような円柱の何か、そして…カウントダウンが進んでいるモニター。

これって…いや絶対に確信して言える。


「爆弾かよ…!てか、何でカウントダウンが始まってるんだ!?」


あの男はバックから爆弾を取り出してなかったはず…まさか侵入前に既にカウントダウンのスイッチを押していたのか!?

クソが…!何でこういう所で用意周到なんだよ!


「どうする…!?」


爆弾の事を報告すればライブなんて一撃で潰れる!

しかも偽情報の爆弾設置じゃなくて本気の爆弾設置とか…ライブ云々の話じゃねぇぞ!?

下手すれば死人だって…!


「いや焦るな落ち着け…!!」


心臓を軽く叩き、深呼吸して無理やりにでも落ち着きを取り戻す。


「どうするか…?」


俺が落ち着いたところでカウントダウンは止まらない。

カウントダウンは残り『00:56:89』。もう一分を切っている。

どうやってこれを持ってきたのかを知りたいが…まずはコイツをどうするのかが先決だ。

正直、時間的にも爆弾を解除できる奴を呼んでも間に合わない。

逆に一分以内に何処かに持っていくことは可能だが…何処で爆発させても何らかの被害は出る可能性が高い。

何をやっても、何かしらの被害が出る可能性がある。


「どうする…?」


すると


「…え?」


ファフニールからの声。

…この爆弾を該当する箇所に持って行って欲しいとのことだ。

解除できるもしくは被害を出さない所があるのかと思ったのだが、どうやら違うらしい。


「…二人?」


このライブ会場の地下…確かもう使われていない非常用の避難経路だったか。

前にコンサート周囲のパトロールをしていた時に確認したがかなり傷んでいたし、何も無いと思っていた…あの地下から二人来ているらしい。

しかも、ファフニール曰く『関係者でも何でもなく悪意がある者』だと断言している。

その自信が何処から湧いて出てくるのか分からないが、今は信じるしかない。


「わかった…ファフニール、案内してくれ」


俺はメンテナンス室の扉を蹴破って外に飛び出し、ファフニールの案内に沿って走り出す。

残り時間28秒。

間に合わせるしかない!それしか道はない!

とにかく走れ、両足がちぎれても走り続けろ!

止まるな、腕を振れ、足を伸ばせ。

ボディガードとしての責務を果たせ!


「くぅっ…ァァァ!!」


息を吐きながらライブ会場から出て、走る。

全身から力が湧いて出てくるが


――プシュッ。


きっとそれは『火事場の馬鹿力』だ。


「アト…11秒!」


指定された場所までもうちょっとだ!

廃れた地下通路に侵入し、ファフニールが示した場所である『コンクリートの壁』に左手に力を込めてから


「ウォォォォォッ!!」


その拳を壁に叩き込む。


――バギャアッ!!


俺の叩きつけた拳を中心に周囲にヒビが広がっていき、大穴が空いた。

そしてその穴の中に爆弾を放り込み、走って逃げる。

やがて


――ドッゴォォォォォンッ!!


大爆発。

出来る限り体勢を低くして、爆発に巻き込まれないようにする。

地下トンネルが揺れると同時に、上から小石や塵が降ってきた。

それをスーツから振り払い、立ち上がる。

先程爆発した箇所には人が一人、立って通れるほどの隙間が出来ていた。


『こちらは侵入者の拘束を確認。鴉羽、今は何処に?』


警備員の通信を聞く限り、爆発には気が付いてい無いようだ。

ってことは…『間に合った』って事だろう。

軽く深呼吸してから


「別の場所にいる。また別の侵入者を目視で確認した…そっちの対応をする」

『了解した、頼む』

「あぁ…」


インカムの通信を切ってから座り込む。


「はぁっ…!?はぁっ…!?」


息が途切れ途切れになりつつ、呼吸を整える。

生きた心地がしない。


「とにかく、成功は成功だ…早く件の二人を見に行かねぇと」


こんなところで休んでいる場合じゃない。

未だに愛染さんは舞台の上で妹の為に歌って踊っているんだ。


「俺がこんな場所で止まれるかよ…!」


膝に手を添えて立ち上がり、俺は爆発で生じた隙間から新しい通路に足を踏み入れる。

てか、銃とか置いてきちゃったな。


「まぁいいか、この手で潰せばいい」


手首を軽く回す。

ゴキッゴキッと骨の鳴る音が響く。


(いつでも来い。俺『たち』はいつでも戦えるからな)


警戒しながら俺は前に進み始める。

例え先が見えなくても、



◇◇◇


「はぁ…はぁ…」

「お疲れ様、愛染。はい、水とタオルよ」

「ありがとう、マネージャー…他のみんなは?」

「せわしなく動いているわ」

「そっか…」


一度、ライブは小休憩。

例え完全無欠の太陽のようなアイドルでも休息が無ければ死んでしまう。

阿達からスポーツドリンクを貰って水分補給。


「…そういえば鴉羽君は?」

「対応中、だそうよ。多分、今も頑張ってるわ」

「…!」


阿達からの一言に今、どんな状況なのかが分かってしまう。

確かにこのライブ会場には何らかの敵が来ていることも確実。

同時に鴉羽はライブを滅茶苦茶にさせないように戦っている。


「大丈夫、なのかな」

「彼の言っていた通り、今は信じるしかないわ」

「うん…」


愛染は鴉羽のことを気にかける。

彼にボディガードをお願いしてから様々な苦難を正面から叩き潰す鴉羽の姿を見てきた。

言わずもがな、その背中や姿を見てアイドルでありながら好意を寄せていた。

そんな彼を心配するのは仕方のないことともいえる。


――ジジッ…。


「ん?あ、あれ!?」


ステージのモニターを操作している関係者の一人の声色が焦りに変わっていくと同時にカチカチとスイッチや他のコンソールを動かす。


「も、モニターが動きません!というか外部からのハッキングです!」

「なんですって…!?」


なんとモニターがハッキングされ、こちらからの操作を受け付けなくなり、動かなくなってしまった。


「モニターが…?」

「えぇ…でも何故モニターを?」

「わ、分かりませんが…あ!映像と音声が強制的に再生されます!?」


何故モニターだけがハッキングされたのか分からぬまま、謎の映像が再生され始める。

愛染は舞台裏から飛び出し、モニターの映像を確認するとそこには顔が見えないが誰かが二人座っている。

突然、愛染がステージに戻ってきた事と謎の映像が再生されることにより、会場は若干騒がしくなる。


「誰なの…?」


と疑問に思っていたのもつかの間。


『珊瑚…!』

「えっ!!?」


一人の男の声が聞こえたと同時に愛染の背筋が凍る。


『お前がまさかそこまでの地位と名誉、そして金を手に入れるとはな。流石俺たちの娘だ』

「…」

『今なら帰ってきてもいいぞ?死んだ使えない碧海の代わりにな』

「…誰が帰るの?」

『何…?』


愛染のマイクから声が漏れると同時に映像に映る男の声が反応した。

この時点で録画された映像ではなく、ライブ放送されている映像という事。


「私に酷いことをした挙句に溺愛した妹を殺しておいて何が家族なの…いい加減にしてよ!私は二人を親だと思ってないし、思いたくもない!」

『珊瑚…お前…!』


珊瑚の怒りの叫びが観客と舞台裏にいる阿達を含めた関係者たちを驚かせる。

太陽の様に輝いていたアイドルの怒りの焔が滾る姿に。


『まぁいいわ。別に戻らないことも想定通りだし、でもこういえば貴方は首を縦に振らなきゃいけない』


今度は男の横に座っていた女性の声が響く。


『このスイッチ見えるかしら。これはある場所の爆弾を起爆させるスイッチ』

「!」

『本当は会場を爆破させようと思ったけど、失敗したしね。本当に使えないファンよ』

「…何をする気?」

『このスイッチを起爆させればその場所のオールイーターが目覚める』

「えっ!?」

『そうすれば少なくとも何らかの被害は出るだろうし、被害が出る前にARMOR’sが到着することもない…貴方に出来ることもないわ』


その提案は…いや脅しはまさに外道の極みだった。

普通の提案は受け入れられないとわかったうえで、映像に映る二人はあえて愛染本人ではなく『愛染の周り』を狙った。

愛染はアイドルであり、優しい少女でもある。

そんな少女の周りだけが傷つけられれば…愛染は傷つく所ではない。


「うそ…」

「愛染!」


顔が徐々に青ざめ、座り込んでしまう愛染に阿達は駆け寄り肩に手を添える。


「私じゃなくて…私の周りがまた…!」


今まで、鴉羽のお陰で紛らわされていた恐怖が内側から広がっていく。


「愛染、落ち着いて!」

『もし貴方が私たちの元に戻ってくるのならこのスイッチは押さないわ。でも戻ってこないのなら…』

「人でなし!自分の娘に手をかけて挙句の果てには脅して何が親なのよ!」


今度は今まで支えてきた阿達の怒りが二人に向けられる。

愛染の為に恐怖を御し、今まで支えてきた。

それなのに元凶が愛染の実の親であるという理不尽極まりない事象に怒り、憎悪を向ける。


『貴方は関係ないわ。私が聞いているのは珊瑚によ』

「貴方に愛染の親を名乗る権利はない!」

『…部外者に親を問われても説得力がないわね』

「くっ…」

『もう一度聞くぞ、珊瑚。戻ってこい』

「はぁっ…はぁっ…!?」


二人からの脅しに過呼吸になり、蹲る愛染に追い打ちをかける親二人。

阿達は今ここに鴉羽が居たら何とかできたかもしれない。だが今、鴉羽は別の事に対応している。今、呼び寄せても間に合わない可能性もある。

そして


(もうヤダ…ヤダよ…!) 


脅しに屈しかけている愛染珊瑚。


(助けて碧海…助けて阿達さん…助けて…!)


彼女は自分自身が信頼できる人物の名を心の中で呟く


「…鴉羽君…!」


偶然にも最後に信頼できる名を口で小さくつぶやいた。

その名がステージと二人のいる場所に響いたと同時に。


『分かったッ!!』

『ぐあっ!?』

「!!」


映像から三人目の男の声が聞こえて来て、愛染珊瑚は顔を上に勢いよく上げる。

そこには


『だ、誰よ!?』

『通りすがりの…ボディガードだよ!』

『うぐっ!?』


男の方を一撃でノックダウンさせ、もう一人の女の方は首を掴んで持ち上げるスーツ姿の男。

それこそ彼女たちの刃でもあり、彼女たちを守る盾でもある。

そして


「鴉羽君…!!」


太陽の様に輝く少女が惹かれる姿でもあった。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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