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第24話 訓練という名の決闘

翌日、俺は自分の部屋のベッドの上でのたうち回っていた。

久々の休みというわけで英気を養うのもそうなのだが…最近、ずっと動いていたからいきなり休みってなっても何をすればいいのか分からない。

…どうやって休んでたっけ俺。

もう二度寝もしたし、眠気はこれっぽっちもない。

挙句の果てにはまだ午前中。

さて、何をしようか。


「…とりあえずファフニールの所に行くか」


現状、出来ることが何にもないのでとりあえずでファフニールの元へ向かう事にした。

扉を開けて、そのまま整備室に向かう。

すると


「ん?」


そのさなか、後ろから視線を感じる。

後ろを振り向くとそこには誰も居ない。気のせいかと思っていたが。


「…」


俺にはファフニールが居る。

…居るんだな、そこの曲がり角に。

俺の事を後ろから付けてきそうな人…学園で俺の知り合いの中にはそんな行動をするやつは流石にいない、一人を除いてな。


(気が付いていないフリをするか)


付けられていることを一旦、忘れそのまま整備室に向かいながら考える。

まぁ…愛染さんだろう。十中八九。

だが問題は何故愛染さんがAT学園にいる?

ライブ前日だし、昨日の阿達さんの話的にも家で過ごしていると思っていたが…。

なんて考えていると俺の携帯電話が鳴り始めた。

相手は予想通り愛染さん。


「もしもし、鴉羽です」

『私、珊瑚さん。今』

「俺の後ろにいるんですよね」

「え」


そういいながら俺は後ろを振り向き、隠れていたであろう曲がり角から顔を出す。

そこには携帯を握り、俺を見ながら驚いている愛染さんがいた。

初めてみる顔だ。


「き、気が付いてたの?」

「俺にはファフニールが居るから」

「そういえばそうだった…」


ガクンと首を折り、明らかに残念がる愛染さん。


「それはそうと、何で学園に?家にいるんじゃ…」

「そのつもりだったけど。やっぱり家だと危ないから」

「?」

「…マネージャーがね、私の家の周りを一応見てたらしいんだけど不審な動きをしてる人がいるって聞いて」

「!」

「そのまま家の戸締りはしっかりして、マネージャーにAT学園に送ってもらったんだ。ここなら安全でしょ?」

「そうだけど…とんでもねぇな」


まさか家すらも安全地帯にならないとは。

しかもまだ動く奴がいるのに驚きだ。もう前日だぞ?例え非公式のファンクラブの会員でもライブは見守ってやれよって思う。


「てか、阿達さんもそうだけどその不審なやつは?」

「もう警察が対応してくれたし、阿達さんも家に戻ったって」

「ならいいが…」


前の記憶を失う前の時を思い出す。

阿達さんが殴られ、暴走したらしいあの時の事を。


「じゃあ今度は私の番。鴉羽君は何をしようとしたの?」

「久々の休みでいっぱい寝たけど、眠気はないしやることもないからファフニールの所に行こうかなって」

「あ、なら私も行く」

「愛染さんは」

「休んで…でしょ?」

「まぁ合ってるけど」

「もう休んでるし、明日の事を考えると緊張しちゃうから別のことしてないと気がすまなくなってるから」

「緊張、するんだな」

「するよ!?」


ちょっと意外だった。

愛染さんってこういうライブとかめっちゃ緊張しないタイプだと思ってたけど、するんだな。

そんなわけで、これ以上説得しても無駄だと確信したので二人で俺のファフニールの元へ歩いていく。

その道中も…色んな人たちに愛染さんはファンサービスを振りまいていた。

流石、アイドル。


「本当、凄いな」

「慣れてるからね」


説得力が凄い。


「そういえばさ、鴉羽君のARMORってどういう機体なの?」

「完全に近接特化で禁忌機体っていう種類に分類される機体」

「き、禁忌?」

「細かく言っていいのか分からないけど、普通の機体よりも数値は良いけどパイロットへの負荷がすごい」

「例えば…?」

「俺が初めて愛染さん達を助けたときにはコックピット内で俺は痛みに悶えてたしな」

「えぇっ!?」


まぁ愛染さんの反応は普通だ。

こんなパイロットに悪影響が出る機体なんてファフニールに乗るまで俺も知らなかったしな。


「そ、そんな機体でレ・ゾーンも?」

「あぁ、血まみれになりながらもな。でもこれで良いんだよ、俺にとってはな」

「え?」

「俺は元々は整備科だ。今までずっとARMORを整備し続け、パイロットたちを送ってきたが…パイロットが傷ついても俺に出来ることはなかった。けどファフニールは俺に玉座に座っていいって言ってくれた。それに俺とファフニールで犠牲が減らせるなら、オールイーターをぶちのめして平和になれるのなら、俺の記憶探しにも繋がる」

「鴉羽君なりのメリットと思いがあって乗ってるんだね」

「まぁな」


なんて話しているうちに整備科の整備所にたどり着き、俺のファフニールが眠っている格納スペースに向かう。


「おぉ…初めて整備所に来た」

「俺はずっとこっちにいたけどな。そういえば愛染さんってパイロット科だし、ARMORがあるのか?」

「あるにはあるんだけど…今は使えないって感じかな」

「?」


ずっと疑問に思っていたことを聞いた。

愛染さんはアイドルでありながらパイロット科。つまりARMOR”sでもある。

ということは専用のARMORがあるはずだ。

しかし、今は使えないとのこと。


「実は専用機の改造が想像以上に時間がかかるみたいで」

「か、改造?」

「鴉羽君は私の操作技術とか知らないでしょ?実は結構高いんだけど…私の場合、操作盤で動かすよりもモーションキャプチャーによる『リンク操作』の方が良いって」

「リンク操作か」


ARMORはコックピットで動かすのが定石、しかし愛染さんの言っているのはコックピット内のパイロットの動きをキャプチャーし、それをARMORの動きとして操作する。

それが『リンク操作』。

ただ欠点として普通の操作よりも肉体的に消耗が激しいこと。

並大抵のパイロットじゃリンク操作は無理だし、何よりもパイロット自身の身体能力が高くないとリンク操作の効力が薄まる。


「コックピット内の操作盤をリンク操作用に換装して、私の実力を発揮できるようにするためには様々な改造とか追加武装が必要みたいで…ライブの日程が決まったと同時に改造が始まったの。だから今はないの」

「なるほどね」


でも分かるかもしれない。

愛染さんをリンク操作にすれば物凄く強くなると確信できる。

そりゃ、あれだけ歌って踊れればね。


「よし、ここだ」


ファフニールの格納されているスペースにたどり着き、パスワードを入力してシャッターを上げる。

そこにはピッカピカに磨かれたファフニールが鎮座していて


「ん!?」


俺には身に覚えがない武装と追加のスラスターが天井から吊るされていた。


「どうしたの?」

「いや、ファフニールって背面のホルスターに付けられている大剣みたいな大型のブレードしかない」

「よ、よくそれで戦えるね…」

「まぁその差を埋めるほどの色々があるってことだよ」


とは言え、流石に身に覚えのない武装があるのはちょっと驚く。

まぁこれをやってくれるのは一人しかいない。

俺は通信端末である奴に通話をかける。

その通話は2コール目で繋がった。


『…んん、もしもし?』

「すまん明楽、寝てたか?」

『れ、零亜!?』

「あぁ零亜だ」


勿論相手は俺の親友であり、俺の専用整備士である西園寺明楽だ。

俺が任務で学園から離れている間にファフニールに触れられるのはコイツ以外いない。

というか明楽以外がファフニールに触れればファフニールが俺にそのことを伝えてくる。

ふと思ったけど、ファフニールが明楽にARMORの整備をされても何にも俺に報告してこなくなったってことは明楽の事を認識してるってことか?

…協力関係だから、か。何でそんな不服そうに言うんだファフニール。


『ど、どうしたの?任務中じゃ…』

「いや今日は休み、明日が本番だから」

『そうなんだ…それでどうしたの?』

「いや今日は休みで寝てたりしてたんだが…眠気も覚めてファフニールの所に来たら身に覚えのない武装とかスラスターとかあったらからさ」

『あー…それ?』

「明楽が作ったのか?」

『まぁね、整備科の授業の一環で武装の作成があったから色々やってみたんだ』

「おぉ、凄いな」

『でもまぁ、使えるようになるには当分先かも。今のままだと運用は難しいし』

「そうか…その武装が使えるようになったらすぐに言ってくれよ?明楽の作った奴なら信頼できるしな」

『…またそういうこと言う…』

「ん?」


明楽がボソッと何かを言ったが、よく聞こえなかった。

何て言ったんだ今。


「でも武装とスラスターの事を知れてよかったよ。それと、起こしてごめんな?」

『大丈夫…じゃあ僕は二度寝するから』

「あぁ、おやすみ」


そういって通話を切った。

にしても…これを明楽が作ったのか。

ブレードとは違い、遠距離攻撃が出来そうな銃、パイルバンカーにバックパックスラスターか。

つまり、明楽は今のファフニールに足りない部分を補う為の武装たちってことか。


(本当に凄いな、明楽は)


心の中で明楽を褒めたたえる。


「鴉羽君?今の相手は?」

「整備科の俺の親友だ。今は俺とファフニールの専用整備士になってくれてる」

「おぉ親友なんだ…女の子?」

「男だぞ。いやまぁ女でも男でも親しくなるが」

「ふーん?」


何故、愛染さんは電話相手の性別を聞いてきたんだ?

何かそういうのがあるのか?


「てか、明楽が整備したんならやることないな…どうしよ」

「元々はどうしようと思ってたの?」

「いや普通に整備」

「あー…そっか。鴉羽君って元整備科だもんね」

「まぁな」


御大層な二つ名があったが愛染さんは知らないみたいだ。

ここは掘り返さないようにしよう。

しかし、どうするか。整備をする必要もないし、勝手に武装をいじるのもあれだしな…。


「あ、鴉羽君ってシュミレーターをやったことある?」

「シュミレーター?」

「パイロット科にある訓練室に訓練用のシュミレーターがあるんだよ。決闘場みたいにARMOR同士で戦えるけど…ゲームみたいに戦えるから現実味がないからあくまでシュミレーターって言われてるけど」

「愛染さん」

「なに?」

「何でパイロット科の施設のことは俺より詳しいんだ…?」

「だって入学時からパイロット科だから、流石に鴉羽君よりも詳しいよ」


俺が知らない事をしっているとは…おかしいな。

俺の方が学園にいる時間は多いはずなのに、何か負けた気がしてならない。

でも、今の状況ならシュミレーターも良いかもな。


「なら、そのシュミレーターをやってみたい」

「わかった!じゃあ一緒に行こう」

「!」


と言いながら愛染さんは俺の手を握って引っ張り整備所から出ていく。

何故、俺の手を握る必要が?と疑問に思っていたら


「…何でそんなに文句を言う?」


…ファフニールからの抗議の声が頭の中に響く。

やれ『ずるい』だの『コックピットに乗って』だの…どうしたファフニール。


ーーー


そんなわけで愛染さんに引っ張られながら件の訓練室に付いた。

中にはまぁまぁデカめのスーパーコンピューターに、コックピットのようなデバイス。

その周囲を見回せるようにスクリーンが円を描いてコックピットに被さる様に設置されている。

本当にコックピットだけがここに存在しているようだ。

それにしても…訓練室って校舎内にあったのかよ。

任務を無事に完遂したら一回、パイロット科の校舎内をきちんと回ったほうがいいかもな。


「…ん?あ、鴉羽君に愛染さん!」

「え!?任務は終わったの?」

「明日が本番で今日はオフなの。それで鴉羽君がシュミレーターをやりたいって」


既にシュミレーターで訓練していた他の女子生徒が反応し、それに連鎖して他の生徒が集まってくるが愛染さんはそれに怯まず、理由を普通に話す。

すげえな本当に。


「おぉ、鴉羽君がシュミレーターかぁ…」

「ダメか?」

「いやいや全然!むしろ気になるんだよね、レ・ゾーンの戦闘でオールイーターを一番多く倒したARMOR’sの実力的みたいなの」

「あぁそういう…」


そういえば…そうだったな。


「よし、じゃあ鴉羽君…私と戦ってみない?」

「俺と愛染さんで?」


愛染さんはシュミレーターで俺との決闘を望んでいるようだ。

別に決闘するのは良いんだが、うーん…。


「む、もしかして相手にならないって思ってる?」

「いや!?そういうわけじゃなくて…多分、俺は本来の力を出せないと思うぞ」

「?」


いやさ、これって普通のARMORのコックピットのシュミレーターなんだよな。

ってことはさ。


「網膜投影、無いよな」

「も、網膜…なんて?」


禁忌機体専用のシステムのドラゴンスローンシステムがあるわけがないよなぁ…。


「さっき、ファフニールに向かう道中で話した禁忌機体についてなんだけど、普通のARMORにないシステムがあってそれがちょっと影響してくる。特に今言った網膜投影が一番かな」

「網膜投影って?」

「俺の網膜投影に直接ARMORのカメラの映像やレティクル、情報が投影されるんだよ」

「お、おぉ…何かすごそうだけど大丈夫なのそれ」

「大丈夫じゃなかったら俺が困る」


そんなわけで、俺と愛染さんでシュミレーターでのARMORの決闘を行うことになった。

コックピットに被せられたモニターが上に上昇し、コックピットの座席が姿を現し、それに座り込み操作レバーを握る。

そしてモニターが被さり、俺の周りのモニターに色々表示されるが…そんなことよりも


(全然違ぇ…!?)


ファフニールのコックピットとシュミレーターのコックピットは操作レバーを含め、殆どの形状が全然違う。似てるところを探す方が早いくらいだ。

で、でも…ベストを尽くす。


『機体のスペックを選択してください』


コックピット内に響く音声。

機体のスペック…近距離、中距離、遠距離、中遠距離、近中距離と様々ある。

お、専用機の項目もある。

俺は操作レバーを操作し、専用機の項目にカーソルを合わせてボタンを押す。


(凄いな、専用機ってこんなにあるのか。しかもロビンフットってソフィー生徒会長の機体だ)


もしかして専用機の枠って学園内の専用機だけではなく、今も戦う軍のARMOR”sの専用機もあるんだろう。


「…お!」


カーソルを動かし、どんな専用機があるのか、ファフニールがあるのかと探していると…なんとファフニールがあった。

マジか、ファフニールがあるんだ。正直、無いものだと思っていたが…でも俺の専用機があるのならこれしかないだろ。


『鴉羽零亜専用機、ファフニールが選択されました』

「出力数値も俺が使っているファフニールと一致している。凄いな、訓練用のシミュレーターって…実戦に近いようにするためにデータの一致化もされている」


この辺の技術力は本当に賞賛に値する。


『武装を選択してください。なお専用機が選択されている為、大型ブレードが装備されます』


今度は武装の選択か。

専用機の場合はその武装が絶対に装備されるってことはシュミレーターでも変わらず大型ブレードを振り回せる。

まぁあくまで訓練だ、他の武装は要らない。

大型ブレード一本でやる。


『武装選択がされていません、よろしいですか?』


俺はそのまま『了承』でカーソルを押す。


『相手の準備が完了しました。ステージ投影します』


画面が真っ白に染まり、徐々に画面に場所が映り始める。

壁、窓、マンション、道路…これは市街地か。

すっごいリアリティのある画面…本当に市街地にARMORで立ってるみたいだ。


『ファフニールだね』

「愛染さんのは…?」

『私の専用機はまだシュミレーターにインプットされてないから元々の機体に近いのを選んでみたんだ』

「なるほどね」

『じゃあ…早速始めようか』


画面に『ready』と表示され、カウントダウンが始まる。

5から始まり、1へと近づくたびに心臓が鼓動する。

そして…軽く深呼吸する。


「行くぞ、ファフニール…!」


0になったと同時にビーッとブザーが鳴り響く。

その瞬間、操作レバーのスラスター解放を押して正面から一気に距離を詰める。

愛染さんの乗る機体はぱっと見だと、ライフルとたった今展開されたビッド。

十中八九、遠距離機体だろう。相性が悪いが…それ相応の修羅場を潜り抜けてきたんだ。


『いきなり正面から!?』


なんて愛染さんは驚きつつもライフルとビッドの一斉射撃。

それを横にスライドで避けつつ、大剣で横に薙ぎ払う。


『すごいね…!』

「避けるのかそれを…!」


しかし、愛染さんの機体は避ける。バックステップしつつ、空中で姿勢制御し空中から射撃してくる。

俺も射撃を避けつつ、スライド移動しながら愛染さんの機体を見る。

本当に凄いな、絶対に当たると思っていたのに。

それと愛染さんが言った通り操作技能はかなり高い。あんな動き…並大抵に出来る物じゃない。

これは…かなり苦戦するぞ。


『鴉羽君ってやっぱりすごいね…!』

「そっちも…な!しれっと偏差撃ちしてて回避しずらいよ…!」


お互いを称え合いながら剣と銃を交える。

賛美という名の斬撃を振りかざす度に、賞賛という名の弾丸が飛んでくる。

ARMOR同士の決闘ってこういう物なんだな、そう考えるとあの鈴木とかいう奴がどれほど堕ちているのかがわかる。


「ふふっ!いいねぇ!シュミレーターとはいえ手に汗握る戦いだ…!」

『私もだよ!いつもは鴉羽君に守ってもらってるけど、今くらいはちゃんと勝たないと!』

「俄然、やる気が出てきた!愛染さん達の刃としても負けられねぇな!」


◇◇◇


「いよいよ、明日ですわね」

「そうですね。鴉羽君、愛染さんの山場は明日でしょうし…」

「とは言えだ。鴉羽が居るなら何とかなる気がするな」

「それはそうですわ。でも油断は禁物ですわ、とにかく私たちは二人の無事を祈りましょう」

「あぁ」

「はい」


ナンバーズの三人は明日に起きるライブの事と、鴉羽の任務のことを気にしている。

ライブの成功と任務の遂行を期待しつつ二人の無事を祈りながら彼女たちは歩いていた。


「それと…あの『オールイーター』は?」

「はい、愛染さんのライブ会場から30km先で行動を停止しているオールイーターですね」

「眠ってはいたな」

「えぇ、活動再開する様子もなく死んでいるようにしか見えませんでしたが…」


アウローラは手元にあるタブレットを操作し、件のオールイーターを表示させる。

そのオールイーターは建設現場の地下深くから掘り出されたオールイーター。

見た目は蟷螂のような姿をしていて、巨大な鎌、巨大な胴体と普通の蟷螂とは違い大きさが逸脱していたが…問題なのは目覚めていないという事だ。

いつ行動を再開するのか不透明。しかしAT学園含め軍のARMOR’sは建設現場の付近から民間人の避難を優先し、現在は周囲に人はいない。

居たとしてもよほどの命知らずか、オールイーターの様子を伺いに来た馬鹿者しかいない。


「…もし、動いた暁には私たちや上級生。そして軍で対応することになっていますが」

「距離が離れすぎている、だろ?」

「えぇ。レ・ゾーンの時とは違って距離も離れているせいで到着まで時間がかかりますし、何よりも目を覚ますと大変な事になるでしょうね」

「そこも目を覚まさないことを信じましょう」

「あぁ…それにしても願う事が多いな」


なんて話しながら歩いていると前から他の生徒たちが歩いてくる。

ただ歩いてくるのなら良かったが、気になる話をしていた


「ねぇねぇ聞いた?今、愛染さんと鴉羽君が訓練室のシュミレーターで訓練してるんだって…!」

「うそ…!?本当に?」

「見に行かない?」

「行く行く!」


といって訓練室に向かって歩き始める。


「…何やってんだあの二人」

「束の間の休息でしょうか?」

「でも、気になりますわね」

「行くか?」

「行きましょうか」

「そうですわね、私個人としても気になりますし」


そんなわけでナンバーズの三人も訓練室に向けて歩き始める。

訓練室に近づくたびに人が増えていく。


「とんでもないくらいいるな」

「そうですわね…」


そして訓練室につくと凄い数のギャラリーにモニターには二機のARMORが戦っている。

片や遠距離機体、片やファフニール。

物凄い拮抗勝負。


『クッソ…!今のを避けるか!』

『こっちのセリフだよ…!何で当たらないの…!?』

『場数が違うからな!』

『説得力ありすぎ!』


鴉羽と愛染の声が響く。


「二人とも凄い集中していますね」

「あぁ、マジなんだろうな」

「…」


ナンバーズの三人は二人の戦いを見つつ、二人がどのように動くのかを見ていた。

やはりと思ったのが愛染の操作技量はかなり高く、普通じゃできない動きを平然とやってのけている。鴉羽も操作技能がかなり高いのもそうだが、何よりも戦い方がしっかりしている。

ヒットアンドアウェイしつつ的確な距離感を取っている。

お互いの一挙手一投足がいつ敗因、勝因になってもおかしくない。

まさに熱い試合。


『なら…ここで替え玉といくか!』

『!!』


鴉羽がそう宣言すると同時にファフニールの大剣の刃が地面を撫でながらそのまま上に振り上げられる。

愛染の機体に向かって瓦礫と砂埃が舞い上がる。


『何を…する気…!』


愛染の視界は砂埃でいっぱいになるが、それは鴉羽も同じ。

お互いに砂埃の中でお互いの動きを気にしている。


『くっ!?』


先に動いたのは愛染。

ARMORのスラスターを解放し、砂埃を消しながら空へと舞う。

次の瞬間


『そこだ!!』


鴉羽の声と共に大剣が飛んでいる愛染の機体に向かって飛んでいく。

やがて投擲された大剣は愛染の機体を貫く。


――ガキィィィン!!


『嘘っ!?』

『うぉぉぉぉぉ!!』


反応できず、貫かれたと同時に今度は砂埃の中からファフニールが空へと飛び、そのまま愛染の機体を両腕で掴み、一緒に地面に落ちる。

そしてファフニールは愛染の機体に馬乗りになり、拳をARMORの頭に叩きつける。

バキバキという音が鳴り響き…ブザーが鳴り響いた。


『愛染珊瑚の機体の致命的損傷を確認。戦闘続行は不可能と判定。勝者、鴉羽零亜』

『しゃあぁぁぁぁ!!』

『そんなの…アリ…!?』


鴉羽の勝利の雄たけびと愛染の今起きたことが信じられないような声が訓練室に響く。

プシューッと音が鳴り、コックピットのモニターが上に上がり勝者と敗者が共に降りてきた。


「よっしゃあ…!」

「あんな行動、予想できないよ…!」


鴉羽と愛染は額に汗を浮かべ、かなり集中していたことが見てうかがえる。


「けど、当てれてよかった…外したら負けだったしな」

「もしかして絶対に当てれる確証ってなかったの…?」

「あぁ…ぶっちゃけ動きに対応された瞬間、俺の負けだったよ」

「あ、あそこで賭けたの!?大胆すぎるよ…」

「まぁな…これくらいしないと勝てないって思ったからな。それに俺は愛染さん達の刃だ。そう簡単には負けられない」

「むー!」


よほど悔しかったのか愛染は立ち上がり鴉羽をぽかぽかと叩く。


「ダイレクトアタックはズルくない!?」

「ズルくない!」

「何でぇ!?」


そんなわけで二人の決闘は大胆な奇策に転じた鴉羽の勝利で幕を閉じた。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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