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第20話 太陽の由来

「捨てられた…?」

「うん…」


愛染さんの話に耳を傾ける。


「な、何で…」

「それを話す前に私のアイドルになった理由を話すけど…私は『妹の為』にアイドルになったの」

「妹…」


愛染さんに妹がいたこと自体、驚きはしないが…次の一言に俺は言葉を失った。


「きっと、空から私の事を見守ってると思うけどね…」

「―――。」


俺はその一言で察したと同時に、愛染さんは捨てられた訳を話し始めた。


◇◇◇


愛染珊瑚あいぞめ さんご

彼女は今は亡き、妹の為にアイドルになった。

何故妹の為に?何故アイドルを目指したのか?

それは遡ること10年前。

当時の愛染珊瑚は5歳。父、母、妹そして愛染珊瑚の4人家族として生活していた。

…表上は。


「…」


今の明るい太陽のような愛染珊瑚は昔は太陽のかけらもないほどボロボロになっていた。

笑顔のかけらもなく、輝かしさもなく、ただ薄汚れ…独りぼっち。

何故こんなことが起きてしまったのか。それは…彼女の親のせいだった。

まだ幼い5歳の少女を物置小屋に閉じ込め、妹である『愛染碧海あいぞめ あおい』を溺愛する、偏った愛情を持った親だった。挙句の果てには珊瑚の願いを悉く打ち砕き、碧海の願いをかなえるような行為を何年も繰り返してきたが…珊瑚と碧海の姉妹としての仲は良好だった。

時に守り、時に助け合う。

まさに、理想の姉妹。

しかし…それはある時に崩れてしまう。

時は遡り、愛染珊瑚が4歳の頃。最高の転機であり、最悪の転機が訪れる。

ある事務所で行われた子役オーディション。

愛染珊瑚はやってみたいと願い、親の二人は渋々許可を出しオーディションを受けてみたのだ。

すると…愛染珊瑚の実力はすさまじく、他の子役のオーディションに受けに来た子供たちを圧倒し、無類の表現力、演技力、そして…キラキラと輝く笑顔。

その結果、子役オーディションを一次選考で突破した。

事務所の審査員も『彼女は確実にトップに咲ける。』と高らかに宣言できるほどの逸材だと。

…だが、それがいけなかった。

彼女は…珊瑚は示してしまったのだ、碧海よりも素晴らしい子供だと。


――溺愛しなかった方がよく育ったと。


その現実は珊瑚を蔑ろにした親に対して深く突き刺さり、屈辱に見えたのだろう。

珊瑚の輝かしい笑顔が。

それから珊瑚に対する家庭内暴力はエスカレートしていった。

暴力は勿論、愛染珊瑚という子役としての存在価値そのものを汚す行為に走り出した。

それでもなお、碧海は珊瑚を支え続けた。

例え3歳でも、今の現状を理解できていなくても、姉を思う気持ちは本物だった。

それに答えるかのように4歳の子役になった愛染珊瑚は無類の力を発揮し、ありとあらゆる場面で活躍していった。

とても子供とは思えない演技力、表現力で親の二人の願いを翻すように活躍していった。

だが…それは打ち砕かれる。


「クソッ!!何なんだよ…何なんだよオマエは!!」

「…」


珊瑚の父親は近くにあった灰皿を怒りを込めて愛染珊瑚を狙って投げつける。

幸いにもギリギリ当たらずに済んだ。


「俺たちの教育が悪いっていうのか…あぁ!!?」

「やめなさい。全く…何で珊瑚なのかしら」


怒りのままに、愛染珊瑚の首を絞める父親。

とても親とは思えない発言、行動。

実の子なのに家族のように接しず、忌み子のように珊瑚を痛めつける。

しかし、それはできない。

幸か不幸か。今の裕福な生活を送れているのは珊瑚のお陰なのだ。

ろくに働きもしない親二人を養っている。しかも変に珊瑚を傷つけ、家庭内暴力がバレれば、この生活は一瞬で消え失せる。

狂愛の如く愛する碧海すら消えかねない。

いつも通りに物置小屋に珊瑚を閉じ込めてから二人の親は話し合った。


「はぁ…んで?どうするんだ?」

「どうするもないでしょ…嫌だけど珊瑚を育てるしかないわ」

「なんで育てねぇ方が一人前に輝くんだよ…クソが!!」


自分の教育はあっている、あっているはずなんだと思うたびにあざ笑うかのように珊瑚が功績を着きつける。

そのたびに親は理不尽に怒り、珊瑚に理不尽な暴力を与える。

なんて腐ったサイクルなのだろうか。


「…!そうよ…良いことを思いついたわ」

「あぁ?…なるほどな…!」


親の二人は何か良からぬことを思いつく。

それと同時に物置小屋では


「ねーね」

「あおい…」

「へーき?」

「だいじょうぶだよ…」


4歳でありながら、もう空元気を覚えている。

流石の英才教育だ。

そんな日々を繰り返す、珊瑚。

しかし…子役としての日常、愛する妹である碧海の日々は一瞬のうちに砕ける。

なんと彼女たちの親は珊瑚の功績、地位、名声の何もかもを碧海に譲渡させた。

勿論、珊瑚の許可も貰わず、物置小屋に閉じ込めたまま。

事務所の方も珊瑚を欲していたがそのたびに親の二人が暴れまわり、どうしようもなくなった結果…渋々碧海を受け入れた。

だが…碧海は珊瑚の何もかもを貰ったとしても名を残すことはできなかった。

それもそのはず。何せ碧海は家庭内で平気で暴力を振るい、自分の気に入らないことがあれば我慢もせず自分の意思で全てを捻じ曲げる。

とても親の名を持つ者とは思えないような奴らのもとで育ったのだ。

子供に罪はないが…表現力も、演技力もない。そんな子供が子役になれるのか。

答えは『否』。

またしても二人の親に対して『お前たちは間違っている』という現実が突き刺さる。

そんなわけが無いと言い聞かせ、碧海に教育し続ける。

結局は珊瑚に変わる金づるとして輝かせるために。

碧海自身の成長するための機会という機会を全て捨ててまで。

結果は…言うまでもない。

過剰なまでの暴力、教育、休憩もない。

そんな4歳が…まともに生きれるはずがない。

愛染碧海は4歳という若さで身体が追い付かず…死亡してしまった。

二人の親は…娘たちを捨てて逃亡。未だ行方知れず。

…最愛の妹を失ったことも知らない珊瑚はただ一人、物置小屋に閉じ込められたままだった。

やせ細った身体、艶の無い肌。

物置小屋にあった水や非常食用の食べ物で何とか食いつないでいたが、珊瑚も珊瑚の方で限界が近かった。


「―――。」


助けも来ず、支えも来ず。

ただ一人で薄暗い暗闇の中、一人で待ち続ける。

…すると


「―――?」


外から轟音が鳴り響いたと同時に、断末魔、悲鳴が巻き上がっていく。

愛染珊瑚はその声に反応し、物置小屋の閉じられた扉の隙間から外を見た。

そこには…建物という建物から火が巻き上がり、人たちは一目散に何処かへと逃げて行っている。

珊瑚は何かを察したが…どうすることもできなかった。

物置小屋の扉を開ける者が居なければどうしようもできない。

再び、休もうとする。

そこへ。


――ゴォォォォォォンッ!!


「!!!?」


耳を反射的に塞ぎたくなるほどの轟音と共に地面が大きく揺れ、物置小屋の中にいた珊瑚は反射的に物置小屋の奥に隠れた。

この扉の先に何かがいると感じ取って。


――メギャアッ!!


その予感は的中する。

物置小屋の鍵のかかった扉は抉り取られるかのように千切られ、残骸は何処かに投げ飛ばされる。

久々の外の景色を見た珊瑚は何も考えずに物置小屋の外に出る。

そこには。


【―――】

「あ…」


そこに居たのは一匹のドラゴン。

全身が黒曜石のような真っ黒な光沢を持つ鱗に覆われ、強靭な前脚と後脚は彼女たちの庭に脚を降ろし、翼を大きく広げて翼膜を最大まで広げる。

両目は深紅に染まり…口は縫われているかのように開かず、元々口がない生物かのようにシャープな曲線を描いたような顔つきをしていた。

そんなドラゴンを見た珊瑚は状況を理解できないまま、深紅の瞳をじーっと見ていた。


【―――】


ドラゴンは珊瑚を凝視する。

まるで何かに耐えているかのように前脚と首を震わせながらずっと珊瑚を見続ける。

珊瑚も同じようにこの黒いドラゴンをじっと見続けた。

すると


――ドカァァァァン!!


「!」


ドラゴンは片方の前脚だけ、上に振り上げて愛染珊瑚の家に爪を振り下ろした。

家は真っ二つになり、すぐさまガラガラと音を立てながら崩壊していき…ドラゴンは何かを掴んで瓦礫の中から引き抜き、珊瑚の前にそれを落とした。

ドラゴンが珊瑚の前に落としたのは…冷蔵庫、毛布、そして洋服だった。

もうほぼ死にかけていた珊瑚は冷蔵庫の中にあった物をとりあえず、食べたり飲んだりしていると…その珊瑚にドラゴンは毛布を掛けた。


「あ…りがとう」


ある程度、満腹になった珊瑚はドラゴンが落とした洋服を身に着けてドラゴンに感謝を告げる。

ドラゴンはその言葉と姿を確認したと同時に、別方向に首を傾けてからまた片方の前脚を上げて、ある方向に爪を伸ばす。

それを珊瑚は本能的に理解した。

ドラゴンは【あっちへ行け】と言っていると理解し、珊瑚は毛布を被りながらドラゴンが爪に指示した方向へと足を進めていった。


【―――】


それを見届けた黒いドラゴンはまた空へ飛び、適度に空中で悶えながら別方向へ飛んでいった。


◇◇◇


「――ってことがあったの」

「…」


俺は愛染さんの話を聞いて理解をしたと同時に、少し複雑な気持ちになった。

愛染さんが俺が記憶を失ったことを羨ましく思った理由は、過去を忘れているから。

思い出したくないものも完全に忘却されているからこそ羨ましく思ったのだろう。

それと…愛染さんの親に対する鎮まることの無い怒りの感情と、デイブレイクの元凶とも言われた黒い龍が人を助けるのかという疑問が混在していた。


「まぁ…今でも暗い所は怖いんだけどね」

「当たり前だろ…そんな経験したら」


そりゃそうだ。

誰だって物置小屋に閉じ込められ、死にかけるっていう経験をしたら愛染さんの様に暗闇がトラウマになる…最も、俺には昔の記憶がないから暗闇が怖いとかわからないが。


「…」

「それでね、私がアイドルを目指したのは…私の頑張りのせいで妹…碧海が大変な思いをしたからと夢をかなえる為なの」

「いや…大変な思いをしたのは愛染さんのせいじゃないだろ…?」

「うん、そうかもしれないけどね。私は碧海が今でも大切なの、唯一の家族だからね」

「…」


何も言えない。


「だから私は碧海の夢をかなえたい。いつだって目指してたのはアイドル、あのステージの上で輝く人たちになりたいって聞いてたから…私が代わりになって碧海の想いを紡ぎたくて、頑張ったの」


その言葉に全てが詰まっている気がした。

黒い龍に助けてもらってから、5歳で家族も居ないのに必死に頑張ったのだろう。


「…凄いな」

「ううん、全然すごくないよ」

「いや本当にすごい。妹の為に行動するのもすごいが、それを殆ど叶えている」

「まぁ…うん」

「…まだ何か不服なのか?」

「実はね。私が鴉羽君にボディガードをお願いした理由にも繋がるけど…実は次のライブの日が、碧海の誕生日なんだよ」

「あー…もしかして」


愛染さんのライブの話。

あと1週間後にあるライブの日が妹の碧海さんの誕生日。


「そこで成功させて夢を完全に叶える…とか?」

「正解」

「そりゃ…焦るよな」


あの時に愛染さんの焦りの意味を理解できた。

妹の為にアイドルになった人間が、妹の誕生日の日に行うライブ。

そんなの絶対に成功させたいに決まってる。


「確かに成功させなきゃダメだな。ストーカーとか迷惑なファンにも負けずに止まっちゃいけない」

「うん…でも、妙なんだよね」

「妙っていうのは?」

「最近、迷惑なファンやストーカーとの遭遇がものすごく多いの。今までも何回かあったけど片手で数えられるくらいしかないのに、今じゃその何十倍」

「確かに妙だな」


トップアイドル故に空気も読まず、先に事も読めない迷惑なファンとの遭遇は仕方のない事だとは思うが…その件数が何十倍も増えたとなると確かに妙と感じ取れる。

それにボディガードになるときに聞いた話もそうだ。ボディガードとして愛染さんに接触しようとした人がグループで居たことも気になる。

想像以上に大きい問題かもな。


「…ね、鴉羽君」

「うん?」

「鴉羽君はさ…相手が強大な敵だったりしたら諦めたりするの?」

「質問の意図が分からないんだが…」

「ちょっと、ね」


多分、愛染さんも感じ取っているんだろう。

今回の件は迷惑なファンだけのせいじゃない、もっと大きな何かが動いてるって。


「俺の意見ってことを念頭に置いてほしいんだが…俺はそんな奴らを相手にしても諦めはしない、折れはしないって豪語するよ」

「それは…何で?」

「俺にはまだやり残したこともあるし、やりたいこともある。それに…俺がやりたいことを勝手に相手に決められるのは何か嫌だろ?自分の道は自分だけのモノだしな」

「…」

「けど、この言葉は愛染さんに向けた方がいいな」

「え?」


俺は愛染さんの手を握り返し、目を合わせてから背中を押すために自分の意見をぶつけた。


「俺は愛染さんの夢への道を曲げさせはしない」

「!」

「愛染さんの夢は妹への懺悔でもあり、変わりに叶えるべき使命だと俺は感じ取った。んでボディガードになった俺がすべきことは愛染さんの道を守ること。相手がどれだけ強大でも、どれだけ多くても…俺は絶対に守る。夢も、愛染さん自身も、関係者たちも全部守って、敵どもを全部ぶっ潰してやる。だから、愛染さんは自分の夢の道を歩むと良い」

「鴉羽君…!」


これは俺への決意表明でもある。

俺は愛染さんたちを守る。ボディガードとしても、一人の男としても…叶えなきゃいけない夢を守る。

その夢を汚す奴はどんな強大でもぶっ潰す。


「…ふふっ、ちょっと元気出たかも」

「そ、そうか?」

「うん。それにボディガードがぶっ潰すっていうのはどうかと思ったしね」

「それも…そうか」

「でも、ありがとう」

「!」


愛染さんの握る手が少し、緩まる。

安心…したのだろうか。ほんのちょっぴり、頬が赤く染まってるし。


「もっと早く鴉羽君と会えたらよかったな。そうしたら前のボディガードたちがいた時よりもスムーズに事が進んでたと思うし」

「うーん…俺がパイロット科に行かなければ愛染さんと会っていないしな。ある意味、運命みたいなやつか…?」

「ふーん…意外と鴉羽君ってロマンチスト?」

「へ?何処がだ?」

「あー…なるほど」

「???」


愛染さんの言葉がいまいち理解できずにいると…パッとエレベーター内に電気がともった。


「戻った!?」

「うぉっ!?」


愛染さんが俺の手を握りしめながら立ち上がる。

左肩がぐわんとしなり若干、痛みがあるがそんなことはどうでもいい。


「はぁー…助かっ…ん?」

「どうしたの?」


ファフニールの声が聞こえたと同時にエレベーターのランプが見えてしまった。

俺たちは1階のボタンを押した。

1階だけを押したはずなのに、3階のボタンが点灯している。

となると3階にエレベーターが止まることになるのだが、問題はもう一つ。

…3階のエレベーターの扉の前に作業着を着た男がいる、とファフニールが言っている。


(やっぱり敵じゃねぇか…!!)

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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