第1話 眠る龍
いつもの通りの授業を受けて昼食。
整備科の食堂にて焼肉定食を食べる。
「美味い…」
「食べる時、いつも感想を言ってないか?」
「こういうのはあえて言うんだよ、こっちは命喰ってるんだから」
俺の向かいの席に座る明楽。
今日はざるうどんのようだ、今日みたいな暑い日にピッタリかもな。
「あ、この後の授業ってなんだっけ」
「ARMORの中身の話じゃなかったっけ」
「あれかぁ…あー怠い」
頬杖を付き、ため息も付く。
「はは…整備科の希望の星がそんなんでいいのかい?」
「星だって休みたいときはある。それに明楽だって同じだろ?」
「まぁね…」
俺が次のARMORの構造の授業をダルがっている理由。
それは俺にとってもう既に熟知している内容を繰り返すだけだからだ。整備科への入学試験の内容にもARMORの中身の話がほぼ確実に入っているほど避けては通れない重要な分野。
故に整備科に入学するあるいはした面々は授業で習うまでもなくARMORの構造の勉強は絶対にするし、整備する際に勉強して培った物は活きる。
だから授業でもう一度同じことを聞く気にならない。
もうストレートに言うならメンドクサイ。
「そういえば聞いたかい?あの話」
「あの話?」
「ほら、あれだよ。オールイーターの被害の話」
「うーん…最近のは聞いてないな、また何かあったのか?」
「別の国の話だけど…また一個地域が喰われたみたい」
「…そうか」
また一つ喰われたのか…。
オールイーターの食欲は留まることを知らず人も、物も、歴史も食っていってしまう。
このまま喰い尽くされれば建造物はおろか人っ子一人も残らなくなってしまう。
「…」
「零亜?」
「ん?」
「どうしたの、考え込んだりして…」
「いや、何でもない」
俺が今悩んだところで何の解決にもならない。
対策も何もない、新しい武装とかを作ればいいかもしれないがそんな簡単な話じゃない。
現状、資材も限られているしまだ俺たちは新武装の開発まで学んでいないしな…。
勉強しても新武装を作るのに許可証やらなんやらが必要なのでどちらにせよ何も出来ない。
「いつになったら本当の平和は訪れるのやら」
「当分、先だろ」
そう言って俺は肉を食べようとした。
次の瞬間。
――ビーッ!ビーッ!ビーッ!!
「ゴホッゴホッ!?」
「な、何だ…?」
急に鳴り響くサイレン。
あまりにも急すぎてむせてしまった。
『緊急事態発生!AT学園正面橋よりオールイーターの大軍を検知!付近の市街地も襲われている!パイロットは専用機に乗り込み迎撃せよ!非戦闘員は避難シェルターに避難せよ!緊急事態発生!――』
「は!?」
「大軍だって!?」
食堂のランプが赤く点灯をし始め、サイレンと共に避難勧告とパイロットの出撃が命じられたようだ。
「明楽!」
「と、とにかくシェルターに逃げ込もう!」
食堂で食事をしている最中だったがそんなことをしている場合じゃない!
流石に命の方が大切だ。
俺と明楽だけではなく、他の食堂で食事をしていた整備科の生徒全員が一斉に一方向へ走る。
すると。
――プルルルル。
このタイミングで俺の携帯端末が鳴り響く。
相手は…紅のパイロット?
「もしもし!?」
『鴉羽君!アサルトライフルって整備完了した!?』
「昨日のうちに終わらせたが…」
『今どこにある!?』
「今は武装用の整備所にある!」
『そうなると…ライフルは取りに行けないか、ごめんね急に!』
「大丈夫だけど…お前はどうする!?」
『ライフルが無くてもブレードがあるからそれでなんとかするよ!じゃあね!』
「ちょ、ちょっと!?」
そういわれ一方的に通信を切られてしまった。
「…!」
どうする…!
あの紅の人の実力は知らないが、昨日受け取ったアサルトライフルの使い古した感じを見るに一番使い慣れているのがあのライフルだろう。
それがない状態で戦いに行くなんてしたら…!
「零亜!何で止まってるんだ!?早く避難を…!」
…いいのか、このまま避難して。
俺は今後も支えるためにも今を生き残りまた整備することが大切だ。
だが…それをすれば人を一人、命の危険にさらしてしまう。
俺は助けられるかもしれない人を見捨てて逃げるような…そんなことはしたくない。
それは…!
「嫌だ…!」
「え?」
「明楽、すまん先に避難しててくれ!」
「ちょ、零亜!?」
俺は明楽の静止を無視して避難所ではなく…武装用の整備所に向かって走り始めた。
走りながら先程の紅の人に連絡する。
『鴉羽君?どうしたの?』
「はぁ…はぁ…!今からトラックに載せてアサルトライフルを届けに行く!」
『な、何言ってるの!?そんなことをしたら…』
「危険にさらされようがどうでもいい、お前の一番使い慣れている武器がない状態で戦場に出させる方が辛い!」
『でも!』
「いいから!正面橋に一番近いところまでトラックで運搬するから、それを受け取れ!」
と言い残し、通信を切った。
…俺の行動はAT学園にとって違反行動そのものだろう。
整備科でありながら戦場に近づき、避難勧告を無視しているからな。
だとしても、行かせてもらう!
夢中で走っているうちに武装用の整備所にたどり着き、すぐさま中に入る。
「トラック…トラック…!あった!」
俺が持ってきたアサルトライフルはすぐ届けられるように昨日、牽引貨物の上に乗せておいたのが功を奏した。
鍵を差し込みエンジンをかけて…!
「行くぞ!」
――ブロロロロ!!
学園内のスピード制限はあるが…緊急事態だから多めに見てくれよ!
「もう…戦ってる!」
運転しながら昨日見た景色を見る。
建造物の先でARMORたちが禍々しい見た目をしたオールイーターたちと橋の上で戦っている。見た限りでは特にこれといった戦況の変化はないが急がないと。
アクセル全開でギアも4速に入れたまま向かう。
「見えてきた…!」
正面橋が門の先に見えてきた。
右手でハンドルを操作しながら左手で通信端末を取り出し、連絡する。
これもやっちゃだめだけど、今日くらい許せ!
「紅のパイロット!持ってきたぞ!」
『今どこにいるの!?』
「AT学園の正面橋の前だ!」
『了解!』
ギリギリまでAT学園の正面橋に近づいたのでブレーキをかけ、止まった瞬間トラックから降りて固定していたロープを取り外していくと。
――ドゴォンッ!!
『お待たせ!』
真っ赤な機体が近くに着地し、風圧が俺を襲う。
「整備は完了している!ただ弾やマガジンは装填されてないからリロードしてから戦え!」
『OK!!』
強靭な手が牽引貨物に乗せられたアサルトライフルを握りしめて持ち上げる。
ゴーッと重々しい音が鳴りつつ、紅は正面橋を見た。
『あっ!!鴉羽君逃げて!!』
「え?」
次の瞬間。
――ドゴォォォォン!!
「がはっ!?」
トラックが大爆発して俺の身体は地面を転がっていく。
「いってぇ…!何が…!?」
『小型のオールイーターを正門に入れるな!!』
「!!」
そして見えてしまった。
今、他のARMORが戦っているオールイーターとは違い通常よりも小柄の個体を。
背中に結晶と鋏、そして針を持った尻尾。
「まるでサソリじゃないか…!」
そのサソリと目が合った瞬間、サソリは他のARMORなんて気にせず何匹つぶされようがお構いなしに俺の方へ向かってきている。
(逃げないと…!)
重い体を起こして走る。
トラックはだめだ、謎の遠距離攻撃によって爆破され使い物にならない。
となれば走るしかない!
だがどこに逃げる!?
ARMORの性能は知っている。大型のオールイーターに対しては強く出れるかもしれないが、小型は難しい。
ARMORの大きさの関係で大柄な物ほど狙いやすいが、あのサソリは他のオールイーターに比べれば小柄ですばしっこい…突破してくる可能性も十分にある。
それにここから避難所までもかなりの距離があるし、俺の足じゃ先にサソリに追いつかれて終わりだ。
どうする…!
「!」
そうだ!ARMORの整備所!
あそこの通路は緊急用の通路封鎖も可能。逃げつつ通路封鎖していき時間を稼いで避難所に逃げ込もう!
それしかない!
「走れ…!」
俺の身体に多少の擦り傷はあるが大丈夫だ。
とにかく逃げろ!走れ!死んでも走れッ!!
『鴉羽君!多分突破されるかも…出来る限り数は減らすから逃げて!』
「分かってる!」
紅のパイロットが出来る限り削ってくれる。
今のうちに出来る限りARMORの整備所に走れ!!
振り返るな、とにかく走り続けろ。
そして使える物は全て使え。
「…ッ!」
口の中に広がる鉄っぽい味。
…いい、気にするなこんなこと!!
(まだ死ねない!)
身体が疲労を感じてきたが知ったことはない。
それに…!
(あった…!)
俺がトラックで下った坂の下には非常用の通路がある。
この通路は避難所までつながっているが、サソリが侵入してくる可能性も十分にある。
非常用通路でARMORの整備所に最も近いところで出よう。
すぐさま非常用の通路に逃げ込み、近くのコンソールを操作し通路を封鎖する。
ついでに近くにあったドラム缶も転がしておこう。
「…よし!」
すぐさまARMORの整備所に足を進めたと同時に。
――ドゴンッ!!
「!!?」
そ、想像以上に近くまで来ていたんだな。
しかもこの鋼鉄の扉をたたいた音とその向こう側から聞こえてくる足音を聞く限り…1匹じゃない。最低でも3匹くらいいるな。
ってこの場でとどまって考えてる場合じゃない。
さっさと向かおう。
ーーー
「はぁはぁ…あー疲れた…」
壁に背を預けて息を整える。
な、何とか…ARMORの整備所にたどり着いた。
道中に色々と時間を稼げるようにして正解だった…ドラム缶転がしたり、あえて通路を分断したりね。
さて…ここからが本番かもな。
整備所の正面から入ってるからここから裏口に向かっていく。
んで、その道中で俺が通った道だけをコンソールを動かして封鎖して走る。
「…」
壁に背を預けながら前を見る。
そこには出撃されていないARMORが鎮座していた。
(俺も…アレに乗れたら)
こんなところでたらればを心の中で語っている場合じゃない。
「…行くか」
立ち上がって裏口に向かいつつ、コンソールを動かして封鎖。
それを繰り返しながら向かう。
「…封鎖」
押したと同時に。
――ガキンッ!!
封鎖した鉄の扉から棘のようなものが貫通して来た。
これは…あのサソリの背中に生えてた結晶か!?
ということは…!
「想像以上に近くまで来てたのかよ!!」
すぐさま走る。
一個一個封鎖しようとしたが、流石にダメだ。
このまま距離を詰められ続ければ…より逃げられる可能性が無くなっていく。
距離を離すたびに封鎖を繰り返そう。
でもとにかく今は逃げる!
そうして足を進めた次の瞬間。
――バガァン!!
「はぁっ!?」
俺の頼みの綱であった封鎖した壁がぶち抜かれ、破片が飛び散る。
「くっ!?」
そこで足を止めてしまった俺。
この選択が命取りになってしまった。
「「「キュルルルル…!」」」
「マジ…かよ」
俺が一瞬足を止めただけでサソリのオールイーターは俺の周囲を囲んだ。
逃げ道がないし、ここはARMORの整備する区画。
全体的に広く、遮蔽物も少ない…!
万事休すか…。
(…ここでくたばるのか俺は)
ゆっくりゆっくりと俺に一歩ずつ近づいてくるサソリを見て俺は…『死』を悟っていた。
周りがゆっくりに見える。
俺は…最善の選択をしたんだよな…?
(…後悔しても遅いか)
あぁ、最善の選択をした。
そのおかげであの紅のパイロットは戦えるし、俺を追ってきたサソリの数もたったの三匹だけだった。
これで良かったんだ…。
深く深呼吸をし、覚悟を決める。
「これで…終わりか」
俺は死を受け入れた。
◇◇◇
地下の底の底。
運命の青年を待ち、願いを想うのを願った一匹の龍。
――ィィィィ…。
錆だらけの肉体を動かし、近くにあった不発弾を握りしめ…。
上に向かって投げつける。
――ドォォォォォンッ!!
「!?」
急な地面の爆発に驚いた零亜。
少し上に吹き飛んだがすぐさま風穴があいた床の中に落ちていった。
彼は驚く反応をする間もなく、下へと落下していった。
「わぁぁぁぁぁぁ!?!?!」
空中でまともにバランスを取れずに落下する。
――ィィィィィン…。
錆だらけの龍は膝をつきながら両の手で彼を受け止めた。
「ッ…?」
そして零亜はそれを見る。
自分自身を助けてくれた命の恩人であり…。
運命の龍を。
「黒色と赤色の…ARMOR…?」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




