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第16話 ナンバーズ加入

翌日、俺はきちんと休みを取り退院した。

今日は日曜。マジで出撃したのが土曜日で安心した…もしこれで今日が月曜日だったら、昼から授業に参加することになるし、何よりも午前の授業が受けられないのがキツイ。

まだ完全に授業の内容とかさっぱりなのに…。

まぁそれはそれとして、今俺が向かっているのはファフニールが格納されている整備科の格納スペース。

朝に明楽から連絡があり『戦闘直後の状態で送られてきたから整備しておく。もし来るなら整備所のC区画の201に来て』と言われたので、手伝いついでにC区画に向かう。

本当はもう少し休もうとしたが…ファフニールから『来てください』って言われたので仕方なく向かう。

というか若干、貧血気味だ。

病院の帰りで買っておいたビタミンCが入ったレモン味のタブレットをボリボリと貪りながら整備科の格納スペースに脚を踏み入れる。


「あ、ねぇねぇ…!あそこにいるのってさ…!」

「あ、鴉羽君だ…!聞いた?昨日のレ・ゾーンでの戦闘の話」

「確か討伐数ナンバーワン、なんだよね…?」

「あぁ~…私のクラスに来てほしかったな~…」


整備科とパイロット科の女子生徒が小さな声で話しているが、俺の耳に全部入ってきている。

マジで討伐数ナンバーワンなのか俺…ってダメだ、今はファフニールの整備の手伝いに来たんだ。

下らん話に耳を傾けるよりも先にやらなきゃいけないことがある。


「くっ…分かってるから…!」


ファフニールが早く来いと急かしてきたので、若干小走りで向かう。

まるで躾のなってない動物に振り回される飼い主のようだ…流石に俺とファフニールはそんな堕ちた関係じゃないが。


「ふぅ…あ、零亜。来たんだね?」

「まぁ…」

「…どうしたの?」

「ファフニールが早く来いって急かしてきたから…」

「た、大変そうだね」


ファフニールが格納されているスペースに着くと、丁度休憩中の明楽がファフニールの傍に座っていた。

…一瞬で俺の疲労に気が付くのは本当に流石だ。


「まぁ来たからには手伝う。どこまでやったんだ?」

「とりあえず、これ」

「ん」


ファフニールの損傷部位と整備箇所などが記されたデータが入っているタブレットを投げ渡される。

データを見ながら明楽に問題の事を聞く。


「コックピット内、アーム、レッグ…装甲も結構ボロボロだな。結構酷使してたんだな俺」

「他のARMORに比べたら修理の量は多くないよ。今は特に損傷したアームとレッグの装甲の修理中。本当は付け替えたかったけど…問題があってね」

「問題?」

「変わりになりそうな装甲がないし、そもそも付け替えられない」

「変わりの装甲がないのはわかるが…付け変えられない?」

「ネジ穴とか結合部位が何処にもなくて…外そうとしてもフレームと装甲が直接繋がってるみたいで外せない。だから装甲を修理してる」

「…」


明楽の意見はもっともだろう。

データを見る限り、装甲を取り外そうとしていたであろう跡が付いているし…ファフニールも装甲の交換を拒否している。


「零亜?」

「ファフニール自身が装甲の取り外しと付け替えを拒否してる」

「な、何で?」

「…?解答できない…らしい」

「えぇ…困るんだけどな」

「それに関しては俺も同意見だけど、どうしても嫌みたいだ」

「じゃあ装甲は修理に舵を切るよ。それと零亜はコックピットをお願い。血まみれもそうだけど、全体的なシステムも結構古いし全部最新型に付け替えていいって東雲学園長から言われたから」

「お、マジか」

「あそこにあるから」

「わかった」


そんなわけで俺はコックピットの整備含め、全体的なシステムを全部最新型に変えていいことになった。

まずはコックピット内の清掃だ。

人間運搬用のドローンの取っ手に捕まり、ハッチの開いたコックピット内に入る。


「うっ…」


鼻をへし曲げるほどの鉄臭いにおいが充満し、所々真っ赤に染まっている。

我ながら…よく生きているな、本当に。

とにかく掃除だ。特殊な絶縁液を使ってほぼ使っていないモニターを掃除してから操作盤、操作レバーなどから血をふき取る。

真っ白な布がどんどん真っ赤に染まっていく。


「…?」


自分の血を拭いていると急にファフニールが声をかけてきた。

…どうやら一昨日の戦いの戦績を話したいとの事。

一応、掃除中だが話に耳を傾けながらでも出来るだろう。


「頼む」


そうつぶやくとファフニールが戦績を話し始めた。

俺とファフニールは単騎でオールイーターを292体倒したらしい。ARMOR”sにある基本戦術を全てかなぐり捨てた戦い方でここまで戦えたみたいだ。

凄いと言うべきなのか、ファフニールの情報のインプットや機体性能のお陰なのかというべきなのか迷うが…そもそもの話、この292体という数が参考の数字がない分、多いのか少ないのかが分からない。

一旦、数の事は忘れよう。

次に被害について。

ショッピングモール『レ・ゾーン』の建造物はあのムカデのせいで軒並み破壊されたものの、そこまで被害は大きくなかった。どちらかというとレ・ゾーンの周囲の建造物がかなり破壊されたとのこと。

最後に…戦闘の評価について。

ファフニール曰くかなりよかったとの事。

操作技能はかなり向上し、リミッターを外すこともでき、小型オールイーターを大量に叩き潰し、大型オールイーターの討伐に貢献した。

そして今後の課題としては『リミッター解除に耐えれるようになる』『対オールイーターとの戦いを学び、情報に対する負荷に耐えれるようになる』『肉体強化』だそうだ。

…まぁ次の目標がある分、わかりやすい。

俺が次の戦いまでにやることは、肉体強化、オールイーターとの戦いを知る事だ。

頑張らないとな。

そう思っていたら


「…え?」


ピピッと急に音が鳴り、操作盤の電源が入り画面が点灯する。


『此方が報酬です』


と表示されたと同時にプログラムのソースコードが凄い勢いで処理されて行き…画面に表示されている内容が変わった。


「何だ、これ」


画面に映る何かを凝視する。

これは…『ドラゴンスローンシステム』の設計図だ。俺が前に東雲学園長からもらった設計図に酷似している。だが色々と違う点がある。

まず、俺の付けられている枷のような黒い輪の事が記されていた。

枷の権能は全部で二つ。一つ目は『一時的にパイロットの力を抑制する』らしい。

何故パイロットの力を抑制するのかは分からないが…そういうことらしい。


「何で俺の力を抑制する必要があるんだ…ファフニール」


俺はただの人間だ。

そんな大した力もないし、能力もない。強いてあげるなら治癒力が高いことくらいしかない。しかもその治癒力も抑制された気もしない。

…考えすぎもよくないか、今あるだけの情報じゃ色々足らない可能性がある。

一応、設計図を写真で保存しておくか。

写真を撮ったあと、設計図を見直す。

枷の権能の二つ目は『パイロットの危機的状況や感情を読み取り自動的に動いたり攻撃を行ったりする』事。

あれか…鈴木を叩き潰そうとしたりした時の奴か。

俺の危機的状況にファフニールは『潰そう』と判断したのか。


「…過激すぎないか?」


そう一人で危惧していると、また画面が切り替わる。

今度は設計図ではなく、一枚の写真が表示された。

一見ただの集合写真に見えるが、その中に一人だけ見覚えのある人が居た。


「この人…!」


やや水色がかった髪、肩から滑り落ちているほどの長髪、整った顔立ち。

あのよく分からない空間で俺を撃った人だ。そっくりさんというより、同一人物だろう。

あまりにも似すぎている。

待て…何でファフニールはこの人が写っている写真を持っているんだ?

あの空間は俺の失った記憶に関連する何かだと俺は予想しているが、その記憶に関係する空間に出てきた人が写った写真をファフニールは持っていた。


「そうなると…」


ファフニールはあの空間に出てきた水色の髪の人を知っているということになる。

じゃあこの水色の髪の人は何者なんだ。

禁忌機体の作成者?ファフニールを作った人?俺の家族?何故俺を撃った?

様々な疑問が頭の中に集中し、軽い錯乱状態に陥る。


「!」


またファフニールの声が聞こえてきた。

…これは俺の戦力向上による報酬、パイロットである貴方がまた強くなったとき、次の情報を見せます、か。

分かった、だが…これに答えられるか教えてくれ。


「俺の過去に…お前は『関係』あるのか」


…少し待つと、ファフニールは俺の問いに答えを返してきた。

まだ答えることはできません、と。


「まぁ、だよな」


ファフニールは俺の知らないことを知っているが、そのすべてを教えてくれない。

それは、それ相応の理由があると俺は思っている。

だが、前と違う事がある。ファフニールは『まだ』答えることはできないと言った。 

つまり、いつかは話してくれるという事。

俺はそこまでせっかちじゃないし、戦力をあげて全てを教えてくれるその時まで気長に待つとしよう。

先程まで止めていた掃除を再開し、何とかコックピット内を綺麗にすることが出来た。

最後にファフニールのコックピットの全システムを最新型に変える。

操作レバーやドラゴンスローンシステムは変にいじれないので、それ以外を全部変えてしまおう。

今度はコックピットに座りながら運搬用のドローンを操作し、必要な機材を工程を挟みつつ持ってきてもらうことする。

まず一番最初にいじるのは…コックピットの耐衝撃システム!これを最新に変えないと俺が辛いッ!

ファフニールの耐衝撃システムをフォーマットし、最新型にアップグレードしている間にコックピットの周囲のパーツを取り外して、外側につけられている耐衝撃用の機器に異常がないかを確認する。

型番や機器自体は古いと言えば古いがわざわざ全部付け替えるまでじゃないが…念には念をで全部付け替えよう。

カチャカチャといじり、元のパーツを取り外してから耐衝撃用のパーツを付け替える。

その間に耐衝撃システムのフォーマットが終了し、最新版の耐衝撃システムがインストールされている。


「はぁ…汗、ヤバいな」


上だけ脱いでタンクトップになり、全身の汗を軽くぬぐう。

こんな肉体労働を繰り返していたら倒れてしまう…時々休憩を取らないと。

そうして休憩も取りつつ、ファフニールの整備、修理、コックピット内のシステムを全て最新型へ変更するのにおおよそ7時間費やした。

その結果…


「はぁーっ!!終わったー!!」

「お疲れ様、零亜」

「明楽もな…本当にありがとう」

「お礼を言うのはこっちだよ。零亜が来なかったらもっと時間かかってたし」


そのお陰でコックピットの全てのシステムは最新型に様変わりし、通信機器も追加され、他のARMORとの通信も可能となった。

そして何よりも耐衝撃システムが最新型になったため…ARMOR酔いが無くなったという事だ。

あぁ…嬉しい…!


「うれしそうだね、零亜」

「そりゃあね、色々あったから…」

「な、何があったの?」

「耐衝撃システムが古くて完全に衝撃が無くならなくてARMORで酔った」

「えぇ…?」


明楽は困惑した顔をして『よく戦えたなコイツ』みたいな眼を俺に向けた。

しょうがないだろと心の中で呟く。


「てか、もう夜か…」

「明日からまた授業だし、これで解散にしようか」

「だな、というか整備は完全に終わったしもう何もないんじゃないのか?」

「大剣だよ。聞いたけどムカデの下顎に投げて突き刺したせいで刃こぼれしてる」

「あー…そういえばそうだった」

「明日の放課後にでも刃を研いでおくよ」

「俺も」

「零亜は授業に専念して。ナンバーズの申請とか授業とかあるでしょ」

「…頼む」

「任せて」


そうして軽く雑談したのち、各々の寮へと戻っていった。


ーーー


翌日。

誰しもが嫌うであろう月曜日が始まった…多分嫌いじゃない人もいると思うけど。

朝のSHRが始まる前に、俺はある場所を訪れていた。


――コンコン。


『はい』

「整備…じゃなくて、パイロット科1年1組の鴉羽零亜です」

『どうぞ』


本当に整備科とパイロット科を何度も間違えてしまう。いい加減、気を付けないとな。

入室の許可が出たので扉を開けて中に入る。


「失礼します」

「来たな」

「おはようございます、鴉羽君」

「待っていましたわ、鴉羽零亜」


ここは生徒会室。

勿論、中に居たのはナンバーズの三人。

ソフィー生徒会長、アウローラさん、斑琥さん。

まだSHRが始まるまであと30分以上あるのに、ここにいるとは思わなくて若干驚く。


「…何故そんなに驚いているんだ?」

「あぁ、何でもありません。えっと要件なんですけど…これを渡しに来ました」


俺は鞄の中からクリアファイルに挟まれた一枚の紙を取り出して、ソフィー生徒会長に手渡す。

渡したのは『ナンバーズへの加入書』昨日の整備の後に記入してから眠った。

不備は無いはず。


「…なるほど。ではナンバーズに加入する意思があるというわけですわね?」

「はい」

「形式上、理由をお聞きしないといけないので一応聞きますが、何故加入を?」

「前に話した通りですが、俺とファフニールの出撃で他のARMOR”sの犠牲を減らせるなら出来る限りは減らしたいです」

「えぇ、確かに貴方が出撃したおかげで犠牲者数は激減しましたわ。ですが、それだけですの?それだけならパイロット科としての出撃でも」

「…それじゃだめなんです」


俺は整備科だったころの苦しみを思いだし、ソフィー生徒会長の言葉に反論する。


「それは何故ですか?」

「たかが一機、されど一機、俺たちが常に戦場に居続ければ犠牲者数を減らし続けられると思っているんです」

「貴方の身体がもたないと思いますが?」

「覚悟の上です」


俺ははっきりと言い切りソフィー生徒会長の目を見た。

すると


「…ふふっ、形式上とはいえ知っていることを何度も聞くのも野暮でしたわね」


少し微笑みながら、机の上にあったハンコを握り俺が持ってきた書類にハンコを捺した。


「認めましょう、鴉羽零亜。貴方はこれからはナンバーズとして学園生活を謳歌することになります。青春とはかけ離れた生活をすることになりますがよろしいですか?」

「構いません」

「わかりました。『ナンバーズ』ソフィー・ハント及び八神斑琥、アウローラ・ヴァルティの名のもとにナンバーズの加入を認めますわ。アウローラ、アレを」

「かしこまりました」

「アレ?」


ソフィー生徒会長がアウローラさんに指示をする。

アレが何なのかわからないままアウローラさんにアタッシュケースを手渡される。


「えっと、これは?」

「開けてください」


アウローラさんに言われた通り、アタッシュケースを開く。

中身は…時計のような紋章が付けられた皮のグローブと手帳だった。


「手帳とグローブ…?」

「手帳の中身はナンバーズの規定、いわゆるルールですね。殆ど学則と同じですが、ナンバーズは他の学生とは違い多種多様な任務の遂行、危険度の高いオールイーターとの戦闘…そしてAT学園の最終防衛ラインとして戦う事が記されています」

「最終防衛ライン…!」

「今のところはそんな大きなことは起きていないが、いつ起きても大丈夫なように私たちがいるんだ。覚悟はしておけよ」


斑琥さんがナンバーズとしての自覚を持てと言わんばかりに俺に話す。


「勿論です」

「期待してるぞ、鴉羽」

「そして最後にこのグローブがナンバーズとしての証になります。これを付けて居ればあの人はナンバーズという証拠になりますので日常生活までとは言いませんが出来る限り付けてくださいね?」

「わかりま…あ」


このグローブを付けないといけないという事に関して一つ思い出したことがある。


「どうしました?もしかして皮素材がダメとか」

「あぁ違います。ナンバーズってことはARMORで出撃しますよね」

「もちろんそうですが、それが?」

「…俺、ファフニールに乗ったら血が」

「あ」

「ナンバーズのグローブから血の匂いがするようになるな…」

「その辺は臨機応変でお願いいたしますわ、血まみれのグローブは流石に…」

「すみません…」


俺がファフニールで出撃する=大量出血なので、グローブが汚れてしまう。

そんなわけで俺はナンバーズとしてAT学園で生活することになり、ナンバーズでありながら特定条件下のみナンバーズの証であるグローブを付けなくていいというルールが追加された。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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