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第13話 狩人の由来

あまりにも急に空からファフニールと鴉羽零亜が急降下してきたときは一瞬言葉を失ってしまいましたわ。


「本当、読めませんわね」

『私とアウローラの戦闘に参戦するかと思えば、ソフィーの方へ向かっていったのを確信した瞬間、方向転換して急降下攻撃…判断力に加え、異常なまでの反応速度だな』

『しかし、お陰様で無事に済みましたね。それで…鴉羽君はなんと?』

「私たちの元の作戦を聞き、恐らく時間稼ぎの方に参加すると思われますわ」

『なら元の作戦通り有効打を探しつつ、時間稼ぎか…ソフィー、専用アビリティはどれくらいまでチャージされた?』

「68%、あと1分程度でチャージ完了しますわ」

『分かった…私を含めた三機で時間を稼ぐ。ただ、鴉羽零亜との連携が取れるかどうかが怪しいがやれるだけやる』

「では、射撃ポイントを変えて再度チャージを開始します」

『了解』

『分かりました』


私は私の専用機である『ロビンフット』を操作し、射撃ポイントを変え、弓とレッグのアンカーを地面に突き刺し…チャージを開始。

ロビンフット専用アビリティ『ライト・ストライク』。

一時的にロビンフットのグリーンアローのエネルギーを一点に集中させて放つ、いうなれば必中かつ一矢一殺の矢。威力はかなり高い代わりにデメリットとしてロビンフットの内部エネルギーを一点に集中させて放つ構造上、反動及び一時的にエネルギー出力のリミッターを解除するため、ライトストライクを放つまでARMORを動かすことが出来ない。


(アンカー無しに穿てば…機体は吹き飛び、制御不能状態で動けなくなる…十分なリスクですわ)


弓の改修により、チャージ状態を維持できるようになりましたが…このまま穿てば大した威力にはならない。

完全にチャージしきらなくては…!


「動きましたわね…!」


モニターのズーム機能で確認。

ムカデが動き出し、アウローラと斑琥…そして鴉羽零亜の三機との戦闘が開始されている。


(今は三人を信じるしかありませんわ)


動けないのがもどかしいですわ。

ですが、ある意味これは三人を信頼しているという行動。

チャージメーターを見つつ、三人の状態をうかがう。

もし何かがあればチャージを止めて、援護に入りましょう。


「アウローラと斑琥は大丈夫そうですわね、鴉羽零亜は…?」


ファフニールと鴉羽零亜の動きを見る。

すると二機から離れて足を攻撃しつつ、あのムカデの頭部を狙っているように見える。

オールイーターに対して頭部を狙うのはリスキーそのもの。

オールイーターは『食べる』事によって個体を増やす、そんな個体の口が付いている頭部を狙うのは…!


『クソ!ソフィー!!そっちに行った!!』

「大丈夫ですわ…!」


モニターの先から身体をうねらせながら口を開き、突進してくるムカデを見ながらメーターを確認する。


(この距離ならチャージは間に合いそうですわ…!)


グリーンアローの弦を握りしめ、構える。

正面から向かってくるのであれば、狙うは頭部しかありませんわ…!!


(残り4%、推定距離は1.7km…!)


心を落ち着けて狙いを定める。

次の瞬間


【キシャアァァァァァ!!】

「なっ!?」

『身体が伸びた!?』


ムカデの口が一気に接近してくる。

どうやらうねらせた肉体を一気に前に伸ばし、私を喰らいに来たのね…!?


『ソフィー!!』

『ソフィー生徒会長!?』

「くっ…キャンセルも間に合わない…!?」


徐々に画面いっぱいに広がっていくムカデの口。

チャージキャンセルも間に合いそうにない…!


(ここで…終わりですの?家族たちの仇も取れずに私は…!?)


操作レバーを握る手が震える。

そして思い出される…忘れられない怨嗟の記憶。


◇◇◇


ソフィー・ハント。

彼女はオールイーターに対してあふれんばかりの憎悪、憤怒、憎しみを向けている。

何故、憎んでいるのか?何故、ARMOR’sになったのか?

それは遡ること10年前。

当時のソフィー・ハントは6歳。家族と共にイギリスの名家として生活していた。

彼女の姿は昔から気品に溢れていた。


「お父様…?」

「おぉ、ソフィー。どうしたのかな?」

「お母様は…」

「そろそろ帰ってくるはずだよ。明日が約束通りの家族みんなでピクニックだ、楽しみかい?」

「勿論!」

「ははは、それは良かった」


快晴の空の元、最愛の父である『アクテオン・ハント』と共に家である人の帰りを待っている。

それは彼女の最愛の母『ロビン・ハント』。家族そろってかなりの立場に居り、仕事で屋敷を離れることはあったが、それでもソフィーに対する愛は本物だ。

どれだけ離れていてもその愛があれば、ソフィーは寂しさなんて感じない。

たくましく、気品に溢れ、家族を愛する。

それこそ、昔のソフィー・ハントを表す言葉だろう。


「…しかし、遅いな。そろそろ帰ってくるはずなのだが」


屋敷につるされている如何にも高級そうな時計をみてアクテオンはそう呟いた。

妻であるロビンは現在、重要な会議中。本来、アクテオンも仕事があるのだが娘の為に休んでいる。時間的にもそろそろロビンの方の会議は終了し、まっすぐ家に帰ってくるはずだが、帰宅予想時間はもう過ぎている。

若干の不安を募らせるが、すぐに忘れて最愛の妻の帰宅を待っている。

すると


「あ、アクテオン様ッ!!」


扉を勢いよく開けて息を切らしたメイドが部屋に入ってきた。


「どうした?」

「そ、それが…ロビン様が今いる場所に『黒い嵐』が発生し始めました…」

「何だと!?」


黒い嵐。

それはオールイーターが現れる前兆とも言われている現象。

それが…ロビンを含めた重役たちが会議している場所で発生したと報告を受けた。


「ロビンとの連絡は…!?」

「…既にしましたが、繋がらず…」

「なん…だと…?」


もうすでに会議していた場所は襲撃されたか、破壊されたのか分からない。

しかし…妻を失ったかもしれないと判断してしまったアクテオンは絶望に打ちひしがれる。


「お、お父様…?」


そんな父を慰めるかのように声をかけるソフィー。

彼女はまだ大人たちの話についていけていない。黒い嵐という存在すらも分からなかった。


「!!!?」


唐突にアクテオンを襲う強烈な寒気、胸騒ぎ。

彼は本能的に動いた。


「ソフィーィィィッ!!」

「えっ」


アクテオンがソフィーに覆いかぶさった。

次の瞬間


――ゴォォォォォォォォオッ!!


耳を反射的に塞ぎたくなるほどの轟音が鳴り響くとともに屋敷が塵のごとく粉々になる。

あまりにも一瞬の出来事でソフィーは反応、そして理解が出来ず…。


「う…うぅ…?」


気が付いた時には…屋敷は無かったかのように瓦礫の山となり、快晴だった空は黒く染まり、綺麗だった庭も抉り取られたかのようにあれていた。


「おとう…さま…?」


瓦礫の隙間で奇跡的に生還したソフィーは最愛の家族を探す。

すると


――ドシンッ…!!


【カァァァァァ…!!】

「…え」


屋敷だったものの上に鎮座する一匹のドラゴン。

全身が黒曜石のような真っ黒な光沢をもつ鱗に覆われ、強靭な前脚と後脚は屋敷を踏みつぶし、翼を大きく広げ翼膜を最大まで開く。

両目は深紅に染まり、口からは紫色の炎があふれていた。

そんなドラゴンを見たソフィーは条件反射で瓦礫の陰に隠れる。


(なに…あれ…?)


訳の分からない事の連続で頭の中が混乱しているソフィー。

そんな彼女に、最悪の絶望が向けられる。


「ごほっ…ごほっ…!?」

「おとうさま…!!」


瓦礫の隙間からドラゴンの様子を伺っていると、最愛の父を見つけた。

しかし、父は血だらけで膝をついている。

そこに…。


【カァァァァァ…!!】

「く…!ばけもの…が…!」


黒いドラゴンは深紅の眼でアクテオンを捕捉。

そして


「があっ!?」


前脚でアクテオンを掴み、持ち上げる。

すると黒いドラゴンから謎の粒子たちが飛び出し、その粒子たちはアクテオンを包み込む。


「あぁぁぁ!あぁ!!?アァァァァァ!!!??」


最愛の父の断末魔が屋敷だった場所に響き渡る。

それを聞いているのは…彼にとっての最愛の娘『ソフィー・ハント』のみ。


「え…ぁ…」

【アオォォォン!!】


やがて父は粒子に包み込まれた後、巨大な狼のような姿となり遠吠えを上げる。

もはや父とは言えない異形となった巨大な狼は何処かへと走り去っていく。


【ァァァァァ…!!】

「!!」


それを見届けた黒いドラゴンは首を左右に傾け、何かを探している。

見つからなかったことを確認したドラゴンは翼を大きく広げて空へと飛んでいく。

ただ一人、遺された少女を置いて。


◇◇◇


(私は…家族の仇を取るために…!!)


震える手を無理やり力で押さえつける。

操作レバーを握りしめ、いつでも穿てるようにトリガーに指をかける。


(距離とムカデの速度…そしてチャージキャンセルした後、ARMOR全体にエネルギーが活き渡るまでの時間もない…!こうなったら、せめて一撃を…!)


心の中で覚悟を決める。

敗者の末路は勝者しか決められない。ですが、私の最期は私が決める!

チャージは完了しきらず、99%で穿つことになりますが…ダメージを与えられるなら…!


『ソフィーィィ!!』

「これが…私の最後の手向けですわ!!」


覚悟を胸に秘め、トリガーを引こうとした。

次の瞬間


――ドゴォォォォォッ!!


「!!?」


轟音と風圧と共にムカデの顔が歪み、モニターに大きく映っていた口はモニターの外へ向かい、ムカデの身体は私とロビンフットから大きく外れた建物に顔をめり込ませた。


「一体何が…?」


急に起きた謎の現象。

そして、それを巻き起こした元凶がそこに鎮座していた。


「ファフニール…!?」


大剣を携え、ムカデが先程までいた場所に彼らは立っている。


『ソフィー!』

『ソフィー生徒会長!ご無事ですか!?』


斑琥とアウローラの機体『紫苑』と『ヴィオーラ』が両隣に着地すると同時に二人からの通信が入る。


「心配をかけましたわね…無事ですわ」

『よかった…それよりも何をしたんだ?急にムカデが方向転換して顔から別の建物に突っ込んでいったが…』

「ファフニールと鴉羽零亜が何かしたようですわ。ただ、何をしたかまでは…」

『あの二人が…?』

「…!」


通信端末に着信。

すぐさま通信を受け取る。


「ソフィーですわ」

『はぁっ…はぁっ…鴉羽、零亜です…!』

「ど、どうなさいましたの!?」


相手は予想通り鴉羽零亜。

ですが、息が絶えず絶えずで先程よりも明らかに弱っている。

あの一瞬で何が起きましたの!?


『それよりも、他のナンバーズの二人にも告げたい情報があるので…ハッチを開けて、そこから話しても…?』

「構いませんが…」

『ちょっと…すぐそばまで向かいます』


幸いにもムカデは顔面や身体を建物にめり込ませ、身動きが取れなくなっている。

今のうちに、彼の情報を受け取らなければ。

ファフニールが私たちの目の前に着地したのを確認し、ロビンフットのハッチを解放する。


「鴉羽零亜!」

「鴉羽零亜!お前が伝えたいことって何だ!」

「待って!ハッチの隙間から…血が…!」


私たち三人がファフニールのハッチの解放を待っているときにアウローラが気が付いた。

ファフニールのハッチの隙間から赤黒い液体が少し漏れている。

私を含めた三人が鴉羽零亜の様子が心配になったと同時に、ハッチが開かれる。

真っ赤な湯気のようなものが吹き出すと同時に、鴉羽零亜が現れた。


「はぁ…はぁっ…!!」

「鴉羽零亜ッ!?」


私は開かれたハッチからファフニールのハッチに飛び移り、コックピットでだらんと座っている血まみれの鴉羽零亜の元へ生き、状態を確認する。

息が浅く、血まみれで、何で生きているのか不思議なほどな様態。


「ソフィー…生徒会長…!」

「変に喋らないでくださいまし!一体何が…」

「一時的ですが…ファフニールのリミッターを外しました…」

「リミッターを…?」


鴉羽零亜の掠れた声を何とか聞き取る。

リミッターを外した…?


「ファフニールは…俺が本来の力を発揮できないことを知っていて、リミッターを付けているんです…俺たちが三人の作戦を知っていたからこそ…攻撃を反らすために、それを…外しました」

「!!」


血まみれの彼を見れば、リミッターを外した際の反動はとてつもない物なのだろう。

そうでなければ、こんなにも血まみれにならない…。


「それよりも…三人に聞いてほしい事があります」

「聞いてほしい事…」

「な、何だそれは!?」

「あのムカデの…有効打です…!」

「何ですって!?」

「何っ!?」

「…あっ!」


鴉羽零亜がムカデの有効打を見つけた事に驚く。


「見てください!ファフニールの大剣に…!」


アウローラがファフニールの大剣を見るようにいう。

そして私と斑琥もファフニールの大剣を見る。その大剣には…黒い液体が付着していた。

そう、あの硬い外骨格を殴り続けてもあふれることが無かったムカデの体液。

つまり…鴉羽零亜とファフニールはダメージを与えたという事実。


「アイツの…口です。外骨格はあくまで外骨格…口の中には存在しない。そして…食うための口は外骨格は纏われていません…!」

「口か!確かに食うための口に外骨格が纏われていたら食事も出来ない…!」

「つまり、口辺りを攻撃し続ければダメージが入るという事ですね?」

「ファフニールの指示と俺の意見では…そういうことになります」


さっきの一撃でムカデの顔が歪んだのは…ファフニールと鴉羽零亜が口を狙い大剣を振り上げて、刃が口を捉えたという事。

なんてパワー…リミッターを外した禁忌機体の性能に驚きつつ、今は有効打を見つけた彼に精一杯の感謝を。


「お手柄ですわね、鴉羽零亜」

「ほぼファフニールのお陰ですが…」

「それでも十分すぎますわ。アウローラ、斑琥…分かっていますわね?」

「あぁ!」

「終わらせましょう、この戦いを!」


アウローラと斑琥は各々のARMORのコックピットに座り込み、ハッチを閉める。


「俺も…行きます…!」

「…流石にやめてくださいまし、そのような肉体で」


私はそんな身体になってもなお、戦おうとする鴉羽零亜を止める。

負傷や出血、生きているのが不思議な彼をこれ以上戦わせてはいけないと思い止めようとするが


「俺は…休みたくないんですよ」


そういって私の手を握る。


「俺はARMOR”sになったんですよ…もう整備じゃなくて戦場で戦える。俺は何度もパイロットの機体を整備し、送り出し、何度も傷つく彼女たちを見てきました。たかが血を吹き出すくらいで負傷者が減るならこのくらいどうってこともないです。それに…」

「それに…?」

「あのムカデを殺し切らないと避難所に避難している人たちも、これから生活する人たちが安心して過ごせないんですよ…それだけは…絶対に嫌です…!」

「!」


私は彼の覚悟を聞いた。

前までは整備科だとは思えないほどの覚悟、気迫、そして絶対にオールイーター倒すという意志。とてもまだ入って間もないARMOR’sだとは思えない。

けれど、そんな本気の彼を私は止めてはいけない気がした。


「はぁ…分かりました。ですが、これだけは約束してください」

「…」

「共に勝ち、絶対に生きて帰ること。いいですわね?」

「勿論…ですよ。俺がくたばったらナンバーズが責任を問われることになってしまいますし」

「ふふっ、冗談を言う体力がありますのね?」

「それくらい…元気ってことですよ」


もはや空元気にしか見えませんが、信じましょう。

私はロビンフットのコックピットに乗り移り、ハッチを閉めて操作レバーを握りしめる。


「ふぅ…」

『行けるよな、ソフィー生徒会長?』

「勿論ですわ」


斑琥の問いかけには即答を返し、グリーンアローを構える。


【キキキキ…!!】


ムカデははまっていた建物から抜け出し、口を広げ私たちを見て居る。

その口元には確かに大きく傷跡が刻まれていて、そこから黒色の液体が流れだしていた。


『あれ、ですね!』

『あぁ、私たちの後輩が死に物狂いで見つけた弱点だ。先輩である私たちがその意思を告がなきゃな…!』

「行きますわよ!」


私はグリーンアローのアンカーを打ち付け、99%チャージされているライトストライクをムカデの口元を目掛けて穿つ。

例えフルチャージじゃなくても、この弓の威力を一番知っているのは私ですわ。

十分な威力は…出せますわッ!!


――ドキュウゥゥゥゥンッ!!


【キキッ!?】


光に反応したのかムカデが身体ごと避けるかのようにしならせる。

ですが、私の矢の方が早かったようです。


【キキィィィ!?】


私とロビンフットの矢はムカデの口を捉え、顔を抉り取った。


『効いてるな!』

『私たちも続きましょうッ!』

「さぁ…反撃の時間ですわ!」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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