第12話 玉座に腰を下ろす者として
「はぁぁぁぁ!!」
両目から血涙を流しながら鴉羽はファフニールを操り、大軍を前に怖気づかず正面から突撃する。
それを確認したオールイーター達はそのARMORを狩りに行く。
「甘いん…だよッ!!」
ファフニールと鴉羽はオールイーター達の攻撃を避けながら一匹一匹潰していく。
大剣、レッグ、アームで的確に数を減らしていく。
「はぁ!はぁッ!!ぐぅぅぅ…あぁぁぁァァ!!ファフニール!次は何処だ!!」
激痛を紛らわそうと頭を左右に勢いよく振り、雄たけびを上げる。
ファフニールの指示を受け、鴉羽は次のオールイーター達を潰しに行く。
(戦っているときだけは…痛みを、紛らわせる!)
両目から血を流しながらファフニールと鴉羽はオールイーター達を潰していく。
そんな姿を見て居た助けられた人たち。
「す、凄い…!」
「見惚れてる場合じゃない。愛染、避難所に逃げるよ!」
「は、はい!」
あの黒と赤のARMORに感謝しながら全員、避難所に逃げていく。
そして避難所に避難している人たちも、テレビの中継でただ一機で避難所に向かってくるオールイーター達を叩き潰している黒と赤のARMORを見て…まるで救世主が現れたかのように見ている。
「一匹も通さねぇぞぉぉぉぉ!!」
コックピットを血まみれにしながらも、彼と龍は戦い続ける。
相対する敵を一匹残らず、潰すために。
ーーー
「着きましたわね、状況は?」
目標地点、レ・ゾーン付近に着地したナンバーズである三人は戦場の状況を確認する。
『現状、オールイーターの反応は南東方向の避難所に集中しておりますが他のオールイーターは既に出撃してた3年生のARMOR’sと戦闘中。そして問題の大型のオールイーターなのですが…現在はレーダーには反応がありません』
「恐らく地中ですわね、あそこに大きな穴が空いておりますもの」
『…オールイーターを感知するレーダーが地下に弱いことを知っているのか?』
「流石に偶然だと思われますわ。それよりも、鴉羽零亜はどうしました?」
『各機の識別コードを確認…』
アウローラは各機の識別コードを確認し、ファフニールを探す。
すると
『あ!ファフニールの反応を確認、単騎で避難所の前で戦っています!』
『なっ!?どうする、加勢に行くべきか?』
「待ちなさい、斑琥。アウローラ、ファフニールと彼の状況は?」
『…すさまじいの一言です。避難所に集中していた数多の小型オールイーターを全て単騎で撃破しながら戦闘中の3年生のARMOR’sの付近の戦場へ突き進んでいきます。このままの勢いで行くとその戦場に参戦するかと思われます』
「であれば、参戦はしなくて良さそうですわ。私たちは大型オールイーターの発見及び殲滅を優先しましょう」
『分かった』
『ラジャー』
ソフィーは彼とファフニールなら大丈夫だと確信し、件の大型オールイーターを探す。
「アウローラ、レーダーの範囲を最大まで引き出して痕跡を探しなさい」
『わかりまし』
『ちょっと待った、どうやら痕跡から出現地を探す必要はなさそうだ』
アウローラがソフィーの指示通りレーダーで痕跡を探そうとしたら斑琥がそれを止める。
「どうしました斑琥」
『…遠くから道路のコンクリートと建造物を破壊しながらこっちに向かってきてるのがいる。しかも地中からな』
「それで間違いありませんわね…!」
『反応がどんどん大きくなっています!』
アウローラが反応をキャッチしたと同時に、付近にあった立体駐車場が破壊されると同時に件の大型オールイーターが姿を現す。
【キキキシャアァァァァァァァ!!】
その外見はムカデのよう。
多脚、黒い外骨格、あらゆる方向にうねる身体。
ただ…それだけでよかったのだが、目の前にいるムカデは違う。
立体駐車場を破壊できるほどの顎と巨体、そしてどんな攻撃を容易に弾き返せそうな外骨格を持っていた。
「想像よりも大きいですわね…!」
『あぁ…これは苦労しそうだな!』
『来ます!』
【キシャアァァァァァァァ!!】
ムカデは三機のARMORを確認し、巨大な口を開き突撃していく。
勿論、ナンバーズの三人がそんな分かりやすい攻撃を簡単に食らうわけがない。
三機は各々の方向に回避し、巨大なムカデに攻撃を加える。
『天ッ誅!!』
八神斑琥の専用機『紫苑』。
紫と白色の装甲を持った中近距離型ARMOR。大型太刀と小型太刀を使った近距離戦とARMORに搭載されている『専用アビリティ』の『斬撃砲』を用いた中距離戦を得意とする。
紫苑と斑琥は大型太刀でムカデの装甲を切りつける。
『食らいなさい!』
アウローラ・ヴァルティの専用機『ヴィオーラ』。
青色の装甲を持った近距離型ARMOR。盾と剣を持ち、AGの周りをシールドビットが漂い、本人の意思でシールドビットを動かすことが出来、防御主体で多人数勢力攻撃特化になる。シールドで受けた攻撃をチャージし一気に跳ね返すフルカウンター主体の機体。
剣と盾を一体化させ、大型ブレードに切り替えムカデの装甲にブレードを叩きつける。
「貰いましてよ!」
ソフィー・ハントの専用機『ロビンフット』。
超ロングレンジ電磁大弓『グリーンアロー』及びツインダガー、ニーブレード持ち、緑色をメインとした装甲で二機の浮遊シールドとスラスターの混合ジェットと膝と膝裏、足裏にジェットが搭載され、機動力及び機体制御が行いやすく、弓で撃ち抜きつつ機動力で相手を翻弄する機体となっている。
グリーンアローの矢をムカデのボディーに穿つ。
ナンバーズ三機の攻撃はムカデに命中した。
しかし
【キシュアァァァァァァァ!!】
「ノーダメージ…!?」
確実に三人の攻撃は決まったが、ムカデに対してはこれっぽっちも効いていない。
ただ、ほんの少しだけ怯んだだけ。
『一部のオールイーターが外骨格を持っていることは把握していましたが、これほど強固な外骨格は聞いたことありません!』
『どれだけ分厚い外骨格を持ってるんだ…!?』
「くっ…!」
怯んだムカデはそのまま態勢を立て直すと同時にソフィーのロビンフット目掛けて身体を鞭のようにしならせ、ボディープレスのように身体を叩きつける。
それをソフィーは回避し、距離を離す。
「想像以上の個体ですわね…今までの戦いが嘘のようですわ」
『だな…どうする?』
『援軍を待つとしても、この個体相手に援軍が意味を成すのかわかりません…』
「…今は私たちで何とかするしかありませんわ」
『だが、どうする。弱点らしい弱点もないし、他のオールイーターに比べて単純に硬い。私たちの攻撃が通じるかどうかわからないぞ…?』
「とにかく攻撃を加えましょう。幾ら無敵のように見てる外骨格でも必ず攻撃は効くはずですわ」
『了解…!』
『分かりました。こちらも様子を伺いつつ有効打を探します』
「期待していますわ、二人とも」
そうして三人と三機はあのムカデ相手にひたすらに攻撃を開始するのだった。
◇◇◇
「はぁーっ…はぁーっ…!!」
網膜投影を解除し、コックピットの背もたれに全体重を預けてひたすらに息を吸い込み続ける。全身から血が噴き出し、コックピット内は赤黒く染まり、俺の視界も殆どが真っ赤で染まっていて目で得られる視界情報もほぼ得られない。
「ファフニール…周囲の敵は…もう、居ないか」
ファフニールが周囲を確認してくれた。
どうやら周囲に小型のオールイーターはもういないようだ。
というより…現存している小型のオールイーターはもういない、全部潰し切った。
いつの間にか他のARMORが周囲に居て、各々別行動を取っているが俺が次に取るべき行動はファフニールから聞いている。
ファフニール曰く、ここから3kmくらい先の場所に大型のオールイーターの反応がある。
多分、俺が聞いた別の声っていうのはアイツの声だろう。
すぐにファフニールを操作して向かいたいところだが…
「…すまん…ファフニール…」
今はファフニールが勝手に動いて、俺をあの場所へ連れて行ってくれている。
今のうちに休んでおけって事だろう。
実際…俺の身体は何で生きているのか不思議なくらい血が吹き出ているし、肉体はこれっぽっちも力が入らない。
けど、俺が…いや俺たちが止まる理由にもならない。
例え避難所の人たちを守れたとしても、あの大型のオールイーターを倒さなきゃれば安心して生活できないし、他のARMOR”sにも被害が及ぶ。
(それに…)
意識がぼんやりしているが、何かが頭の中にちらつく。
何かが見えそうでもどかしい、今までにない感覚だ。
「ファフニール…あとどれくらいで大型オールイーターと戦う?…2分、か。分かった、それまではきっちり休むさ」
例え身体に力が入らなくても、操作レバーは握り続ける。
いつ戦いが始まるのか分からない。それだけは忘れちゃだめだ。
「遠くから…聞こえたな」
遠くからバコォン!と普通じゃ聞かないような音が聞こえた。
例えるなら岩を砕いたような音だ。
「よし…!」
少しだけだが、身体は休まった。
もう戦える。操作レバーを強く握り直して、網膜投影を開始し、周囲の状況を確認する。
大分進んだな。そろそろ…!
「ぐうぅっ…!!?」
追い打ちかの如く、激痛が襲う。
だが分泌されたアドレナリンの影響か、痛みに慣れたのか分からないが痛みはすぐさま収まった。
周囲の反応は、オールイーターの反応しかわからない。
ARMORの認識コードとかそういうのは見れないのか…古い機体以前に必要な機器が結構外されてる気がする。
他のARMORとの通信もできないしな。
(目視の情報が全部だ。きちんと自分の目で見て反応するしかない)
ファフニールの指示、操作、目視での情報判断。
気にすべき項目が多すぎて頭がパンクしそうだ。
――バゴォォォォンッ!!
「!?」
目標の方へスラスターで足を進めていると、遠くで道路の地面が破壊され、巨大なムカデみたいな生物が出てきた。
なんてデカさだ…ARMORの何十倍以上の大きさを誇る。
というか…!!
「がぁぁぁっ!!はぁっ!はぁっ!?」
さっきまでなかったはずの痛みが一気に増幅する。
小型オールイーターの大群以上の情報が頭の中に流れ込んでくるし…ファフニールからの指示の量が一気に増えた。しかも、どれも最善の選択の様でどの指示に従うべきか迷う。
どうする、どれでいく!?
「はっ!?」
あのムカデを追いかけていると戦闘中のARMORを三機見つけた。
二機は的確にかわしつつ攻撃を与えている。もう一機は遠くの建物の上で微動だにせず、巨大な弓を構えている。
ズームして確認すると弓の先に粒子が集まっている、となると電磁系の弓で今はチャージをしている事になる。
得られる情報としては、戦っている三機の技量とコンビネーションはかなり高い。
恐らくあの三機はナンバーズであり生徒会の三人。そして戦略としては二機が囮になりつつ、時間を稼いで遠くでチャージしている一機がとどめの一撃を放つ…という感じだろう。
「そうなると、取る選択肢はこれだな…!!」
ファフニールからの指示を頭の中で並べて、どの選択を取るか判断しり。
この選択が最善になると信じて。
俺がやるべきことは…!
「あのムカデの周りで戦っている二機に助太刀してチャージする時間を稼ぐこと!!」
一気にスラスターの出力を上げてムカデの胴体に切りかかろうとする。
しかし…ムカデは俺の予想とは違う動きをし始めた。
「なあっ!?」
ムカデは俺ともう二機を無視して、チャージしている一機を目指して身体をうねらせながら突撃し始めた。
マズイ、この三機の策が崩壊してしまう。
けど…!
「ギリ間に合う!」
空中でスラスターの出力を一瞬止めて、空中で態勢を立て直し、ムカデの頭部を目指してもう一度スラスターの出力を一気に上げる。
ムカデと並走する形で追従していく。
…ファフニールの指示の指示は三つ。
このまま上方向に飛んでいき急降下して大剣で頭部をぶん殴る。
ムカデの顔を蹴り飛ばして、何とかしてムカデの矛先を俺に向ける。
見殺し。
三つ目は絶対に無い。一つ目、二つ目の選択を取るしかない。
二つ目はスラスターの出力に加え、あんな巨体を蹴り飛ばせるほどの蹴りを入れられるのか分からない。
消去法で1だな!
「行くぜぇぇぇぇ!!」
さっきの応用だ。
一度、前方向に飛んでから空中で全スラスターをチャージしてから…ムカデの上方向へ一気に放出し、空中に飛び出す!!
「ぐっ!?」
上昇による負荷が一瞬かかるが、ムカデの後頭部を捉えた。
狙いを定めて…!
「もう一回ッ!!」
空中チャージ…そして放出!!
一気に負荷が身体を襲うが知ったことか!大剣を構えて、後頭部目掛けて突き刺す!
「ぐぉっ!?」
ムカデの後頭部に大剣が突き刺さり、そのままムカデと一緒に地面から来る衝撃を一緒に受ける。
だぁぁぁ!やっぱり耐衝撃システムが古い影響があるかもな。
衝撃を完全に逃がせてない。生きて帰れたら調整しなきゃな、出来れば最新に!
大剣を無理やり引っこ抜き、弓をチャージしているARMORの隣に着地する。
「よし…ムカデは地面と衝突したお陰で気絶しているのか分からんが、動かなくなった」
この程度の攻撃であの巨体が死ぬとは思わない。
てか、さっきの大剣の手ごたえ…やっぱりファフニールと同じ感想が出た。
大剣自体の攻撃はあまり効いてない。上手く大剣の刃が突き刺さらなかったし、ほぼ急降下の加速力で無理やり装甲を凹ませたくらいだ。
他のオールイーターに比べると外骨格が滅茶苦茶硬い。
「ごほっ!?げほっごほっ!?」
口から血が吹き出る。
短時間とは言え上昇下降を繰り返し、ファフニールの情報処理もしていた。
「そりゃ…こうなるか」
網膜投影を解除し、口元の血をぬぐう。
てかコックピット内が真っ赤だ、よく生きてるな俺…。
「…ん?」
俺の通信端末に着信。
相手が誰なのかはわからないが、大体予想が付く。
「はい」
『大丈夫ですか、鴉羽零亜!?』
相手はやっぱりソフィー生徒会長だった。
「ソフィー…生徒会長。弓を持っている機体ですよね?」
『はい…それよりも、身体の方は?』
「コックピット内が…真っ赤に染まってます」
『本当に大丈夫ですの!?』
「大丈夫です、まだ…動けます」
こんな身体じゃ説得力は微塵もないだろうけどな。
「それよりも、コイツをどうやって倒しますか?」
『…今のところは打つ手なしですわ。アウローラも斑琥も時間を稼ぎつつ攻撃を仕掛けていますが…有効打は見つかっておりませんわ』
「…」
あの時の時間稼ぎは有効打を探す為でもあったのか。
けど、俺もさっきの急降下で確信した。外骨格への攻撃は効果が無いとみていい。
そうなると別の攻撃が必要だ。しかも、対策される可能性も考えると一撃必殺の決め手が。
「ソフィー生徒会長、先程までの作戦を教えてくれませんか?」
『いつ目覚めるのか分からないので、掻い摘んで説明いたしますわ。アウローラ、斑琥が有効打を探しつつ時間を稼ぐ。その間に私のARMORの専用アビリティをチャージ。チャージが貯まり次第、穿つ…これが作戦でしたわ』
専用アビリティ。
専用機にのみ搭載された機能。そのARMOR”sに沿った効力を発揮する必殺技あるいは強化。
今の説明から考えると、ソフィー生徒会長のARMORの専用アビリティはまさに一撃必殺の必殺技の専用アビリティなのだろう。
そして、ムカデがソフィー生徒会長に突進してきている間も動いていなかったという事は、チャージ中は動けないという事。
かなりピーキーな専用アビリティだ。
「俺に、出来ることはありますか?」
『現状は時間を稼げ、としか…』
「分かりました。出来る限りは有効打を探しつつ、時間を稼ぎます」
『無理はしないでくださいまし』
そういったソフィー生徒会長との通信を切り、コックピットの背もたれに身体を預け息を吐いた後、問いかける
「ファフニール。アイツの情報、あるか?」
ファフニールは対オールイーターの戦略及び知力はかなり高い。
というか知り尽くしていると俺は思っている。
何か知らないかと問いかけると
「ぐっ…!?」
頭の中に情報が流れ込んできた。
先程よりも少ない情報だ。
ムカデの体の構造、外骨格、行動パターン、俺とファフニールの次の一手…どれも魅力的だが、俺が知りたいのは弱点だ。
アイツを殺せる決め手が欲しい。
「…口の中?」
ファフニールへの俺の質問の回答は…アイツの口の中だった。
喰われろという意味では無いのは分かっているが…何故、口の中を示した?
何にもないだろう。
「…」
一応、確認でモニター越しにムカデの口を見る。
今は気絶して口が半開きになっているのがわかるが、それ以外には何もない。
外骨格はアイツの目の隙間や口の周りにもついている。これと言って何も…ん?
「口の周り…?」
待てよ…口の周りにしかついていないのか。
「もしかして…!」
ファフニールの回答の真意が分かったかもしれない。
もし、ファフニールの解答が合っているのなら…確かに決め手になる。
「ファフニール、それやろう」
俺はファフニールの言葉を信じて大剣を握りしめ、構える。
狙うは…!
「口の…中だ!」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




