第七話 釣りのやり方
お世話になります。つららのです。
広義での釣りはほとんどしたことがありません。
ご賞味ください。
この世界の通貨は、基本的に国ごとに硬貨が流通している。硬貨の種類は、安い順に銭貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、星貨だ。金貨までは、それぞれ一つ前の硬貨の十倍の価値があり、星貨のみ100倍の価値がある。
市井に出回っているものは、基本的に大銀貨までで、金貨ですら貴族時代に何度か見たぐらいだ。
銀貨が大体1000円ぐらいの価値なので、ハンター登録が2500円ぐらいだな。ちなみに、宿は素泊まりで銀貨3枚だった。
今の俺の所持金は、臨時収入含めて銀貨7枚、大銅貨17枚、銅貨以下がある程度ってぐらいだ。このままじゃ三日と暮らせない、、、
早速ハンターとして働くしかない。
目下の目標としては、ハンターとして一人前と言われるC級を目指しつつ、装備を整える。そして、一番の目標は、はある程度の手練れに勝てるよう、経験値と手札を蓄えることだ。
そうと決まれば、体を動かし、ある程度戦闘経験が積める、獣や魔獣の討伐依頼があれば受けたいな。
俺の武器は、ゴブリンから奪った短剣2本とこの身一つだ。正直、切れ味も悪い粗雑なものだ。だが、俺は滅多なことじゃぁ死なない、多少無茶して効率よく働こう。
俺は、ホロと一緒にハンター組合所に向かう。
組合所は、昨日と比べると人は少なめだった。多分、昨日は仕事終わり後の時間で人が多くて、今の時間は、皆出払っているのだろう。
昨日、俺を襲った奴らとグルであろうあのグループは居なかった。どうせ報復に来ると思うが面倒なことにならなければいいが、、
まあ、考えても仕方ない、依頼を見繕おう。
掲示板には様々な依頼がある。薬効成分のある植物の採取や畑を荒らす害獣の駆除など簡単なものから、果ては北の極地でのフィールドワーク同行一年や龍種の討伐まである。
基本的に簡単なものはこの街の依頼で、難易度が高いものは、国内全土からの依頼になっている。
ハンター組合所は国内に多数あり、各組合は魔具によって通信ができるみたいだ。それを使って全土から人を集めたい高難易度な依頼も共有しているらしい。
今のところ俺ができるのはD級依頼だから、採取系がほとんどだな。依頼外の獲物とかは別で換金できるから、採取しながら小型の魔物でも狩ろう。
そうと決まれば早速受注しよう。
「すみません。」
「はい!受注ですか?」
昨日の元気なお姉さんだった。基本的にこの人が受付なのかな?
「はい、この依頼をお願いします。」
「わかりました!受注承認するのでライセンスの提示をお願いします!」
ほお、ライセンスはこういう使い方もするのか。
「はい、お願いします。」
「承認できました!この薬草は、街から出て、西の森によく生えているのでそちらに行かれるのがおすすめです!」
俺が来た方とは反対側みたいだ。
「ありがとうございます。ちなみに西の森にはどんな魔獣がいますか?」
「魔獣ですか、森の浅いところにはほとんどいないですが、奥の方にはゴブリンやボア系の魔獣がいるみたいです!でも浅いところにはあまり数いないみたいなので、お気になさらなくても大丈夫だと思います!」
ボア系か、皮も牙も肉も全部価値があるからいい魔獣だ。もし見つけたら狩ろうかな。
「ありがとうございます。」
「では、お気をつけて!」
「あ、俺の行き先を聞いてくる人がいたら教えてくれて大丈夫なのでよろしくお願いします。」
「??、わかりました!」
よし、初仕事気張っていこう!
と、息巻いたはいいものの、目的の薬草が見つからない、、
ホロは薬草を見たことがないみたいで、匂いで探すこともできないし、俺もどこに生えてることが多いかなんて全く知らない、、
初めから上手くいくんだったら、ハンターなんて言われてないよな、、
ハンターとは多くの人が呼ぶハンターの蔑称だ。街中で危険がないハンター仕事といえば、道路整備や外壁整備の公共事業か誰もやりたがらないような仕事しかない。公共事業なんて常にやってるわけでもないから、結果的に誰もやりたがらない「ドブさらい」、つまり下水処理しかないわけだ。
この世界では、まだ上下水道はほぼ普及してない。帝都や大都市ではままあるのかもしれないが、多くの街ではまだ肥溜めが一般的だ。そこの清掃仕事が常に人手不足、だから戦えないハンターなどが皆そこで働く。つまりそういうわけだ。
「上手く行かないもんだなぁ。」
「ワン?」
「植生とか調べて行くのが良かったか、、、タイミングもいいし、もう少し深いところに行こうか。」
「ワン!」
「俺のそばから離れるなよー?」
他のハンターに採取されてないのかもしれないから、深いところを探すことにした。都合もいいし。
「大分奥の方まで来たな、何かいそうだったら教えてくれ。」
「ワン!」
薬草が生えていそうなところを二人で探していると不意に他のハンターから声をかけられた。
「よう、何探してるんだ?」
「あ、どうも、クモハコベという薬草なんですけど見当たらなくて。」
「あぁ、あれはあまり木が生えていないところにあるんだ、帰り道にあるから案内してやるよ。」
「グルルルル、、」
ホロが興奮し始めてしまった。
「ホロ落ち着いて、大丈夫だから。」
「お前の犬、躾がなってないな。」
「すみません、まだ人に慣れていなくて、、、」
「攻撃してきたら殺すからな、どのハンターだってそうするから気をつけろ。」
「すみません、、、」
「まあいい、こっちの方だ、ついてこい。」
男は少しホロを気にしながら俺を案内する。
男の案内に俺がついていくと、五分ほど進んだ所で群生地を見つけた。
「ほらここだ、周り見ておいてやるから早く取ってこい。」
そう言って男は俺の後ろで辺りを見渡し始めた。
「ありがとうございます。取ってきます。」
俺はしゃがんで目的の薬草を採取し始める。それはすぐの出来事だった。足首を剣で切られたのだ。
「うぁぁぁぁぁぁっ!」
血が溢れる、俺は後ろを振り向きホロを背に隠し後ずさる。
「え、なんで!?どういうことですか!?」
男が気持ちの悪い笑みを浮かべたまま声を出した。
「お前ら出てきていいぞ。」
男の背後から3人の男が出てくる。昨日俺を襲った奴らとグルの男たちだった。
そして、リーダー格の男が前に出て話し始めた。
「お前、俺たちに歯向かってよく生きてられると思ったな?しかもテメェ!衛兵がどうとか俺らを脅すような真似しやがって!舐めてんじゃねぇぞッ!」
これは、ブチギレですね。
「お前みたいなゴミ、死んでも誰も気にしやしねぇ。舐めたこと言ったんだ覚悟しろ。」
俺の足を切った男が話し始める。
「馬鹿みてぇにホイホイついてきて、笑いを抑えんので必死だったぜ!誰がお前を親切に案内してやるかよ!脚の腱切ったからもう逃げられねえ、大人しくやれとけ!」
周りの男どもやかましく騒ぎ立てる。
「さっ、流石に殺しはまずいんじゃないですか!?俺を殺したことが衛兵にバレたらただじゃ済まないはずです!」
「ハンターが死んでも、誰も探さねぇ。よくあることだ、魔獣にやられたと思われて終わりさ。だからお前を殺しても問題無いんだよ、バカが!」
俺は俯き、押し黙る。
「、、、、、」
「絶望で何も言えねえか、舐めたことするから悪りぃんだよ!」
そう言って俺に近づいてきたリーダー格の男が腰の剣を抜き放ち、俺の太ももに剣を突き立てそのまま下がる。
「これで両脚まともに動かねえ、お前ら殺さない程度になぶっていいぞ。」
「、、、、、」
仲間の男たちが寄って来て、解体用であろうナイフを持って俺を取り囲む。
「こいつ悲鳴もあげねぇ、気でも狂ったか?」
「とりあえず手脚落とそうぜ、ヒヒッ。」
「俺脚やる
ヒュッ
わぁ?????」
男の1人の声が尻すぼみに消えた。俺が脚に刺さった剣を抜き喉を切り裂いたのだ。
ゴボボッ!ゲボッ!
喉を切られた男が溺れるような音でのたうち回る。
「てめぇ!なんで動けんだよ!」
普通は痛みで動けないだろうが、あいにく俺は痛みをあの場所に置いて来てしまってるんだ。よし、腱も繋がったみたいだしいけるか。
「これぐらいじゃあ、俺は止まれないみたいでね。よし、ホロやるぞ。」
リーダー格と仲間2人が武器を取り出す。槍と短剣とナイフだ。リーダーは、メインの武器を俺に奪われているからナイフみたいだな。
リーチのある槍の男が二段突きで突っ込んでくる。頭を狙った突きは首を捻って避ける。腹の突き、よし、これだ。ドスッ!
槍が当たり、気が緩んだ男の首にホロが飛び掛かる。バランスを崩され倒れ込む男の首を噛み頭を振り傷を広げる。
リーダーは俺から距離があり、横並びで立つ仲間の男2人が障害になって一直線にはこちらに来れない。
横の倒れた男を助けようと、短剣の男がホロに向き直る。こいつ、俺のアキレス腱を切った男だな。
俺は、剣を地面に突き立て腹の槍を抜き槍へ持ち変える。短剣の男が、ホロを引き剥がそうと掴みかかるその瞬間を狙い、男の足首目掛け槍を振り下ろす。上手く当たり、振り下ろしで速度の乗った切先が男の伸びたアキレス腱を断ち切る。
「ッッッッ!?!?」
膝から崩れ落ちる男の首に再度槍を叩き込む。切先は当たらなかったが、柄の部分が当たる。頸椎が折れたようで痙攣し始めた。
遅れて到達したリーダーは、もはや圧倒的な人分差を覆された衝撃と、目の前の惨劇への驚きでまともな思考ができておらず、無策に飛びかかりナイフを上段から振り下ろすことしかできなかった。
そのナイフを完全に避けれるほどの戦闘経験がない俺は、肩口にナイフが突き刺さるが、そんなものは障害にならない。腰の短剣を抜き、リーダーの腹に突き立て横に裂く。内臓が腹圧で吹き出し、リーダーが倒れ込む。
俺はリーダーの髪を掴み、顔を覗き込み話しかける。
「俺が、お前らが襲ってくるのを想定してないとでも?」
「俺の行き先を受付から聞いて、チャンスとでも思って襲いに来たんだろ?宿屋の人に聞いたよ、西の森はクモハコベぐらいしか取れるものがなくて誰も行かないらしいな。だから、誰にも見られることなく俺を始末できると思ったんだろ?」
リーダーの顔が徐々に青くなっていく、血が溢れているからだろうか、計画がばれていたからだろうか。知る由はない。
「あぁ、でも、あの話は聞けて良かったよ。」
「お前ら殺しても、誰も気にしないんだろう?」
リーダーの顔が青を通り越して白くなっていく。
「いやぁ、また逃げないといけないのかと思っててめんどくさかったんだよなぁ。でも、殺しても問題無いならそれに越したことはない。バカみたいに釣られてくれて嬉しいよ。」
「た、すけ、て、く、、れ、、、」
「俺から奪おうとするからだ。そもそも、その傷じゃポーションでもないと助からない。さよなら、じゃあまたな。」
首筋に短剣を突き立てる。リーダーの体から力が抜ける。
ひと段落ついたので、片付けをしよう。
「ホロー?大丈夫かー?」
「ワンッ!」
「お前、、口の周りが血まみれだぞ、、、。」
「???」
「はぁ、まあいいか、他の奴らの処理するか。」
ホロに噛みつかれた男は死んでいた。首周りの肉が明らかに無いのは見なかったことにして。
一番最初に喉を切った男は、仰向けで喉を抑えながら痙攣していたがまだ生きていた。流石に可哀想なので、心臓を一突きしてとどめを刺す。
首を折った男は、完全に首の骨が砕けたようで呼吸が止まっていた。
全員から金を回収し、武器は剣と短剣とナイフを回収した。短剣はゴブリンから拝借した二本は捨て一本だけ持つことにする。ゴブリンの短剣は売ったとしても金にならないぐらいボロボロだったからな。
4人の死体は森の深いところに捨てた。下手に街に近いところに捨てて他のハンターに見つかったり、魔獣が寄ってきたりしたら危ないからな。
よし、依頼の品も見つかったし、目下の問題も解決した。達成報告に町に戻ろう。
呑気に蝶を追いかけるホロに声をかける。
「ホロ、街に戻るぞ。」
「ワフッ!」
ホロを見て思い出した、、、、俺ら血だらけだ。
この森には川も池もないらしい、、、。
さあ、どうやって誤魔化そう、、、。
ご拝読ありがとうございます。
次話以降もゆっくり更新していきます。
お付き合いくださると幸いです。
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