第五話 一人と1匹
お世話になります。つららのです。
少し明るくなります。
ご賞味ください。
焼却炉の長い煙突を抜けると夜空があった。
煙突があったのは、何の変哲もない納屋の屋根だった。
納屋は村の外れにはあったが、不自然なところはなくうまく村に溶け込んでいた。
のどかで、豊かではないが、逞しく生きる人々がいる村にあんな悍ましい実験施設があり、平然と稼働していることがとても恐ろしい。
ドクやその関係者に見られてはまずいと思った俺は、方角もわからずただひたすらに村から離れた。
夜が明けるまでただひたすらに走った。そして、走れなくなった俺は最後の力を振り絞って木に登り、木の上で寝た。
何時間経っただろうか、いや一日中寝ていたのかもしれない。目が覚めると太陽は真上にあった。
「うぅ、何時間寝たんだ、、?てか、ここはどこなんだ、、?」
周りを見渡しても森しかない、、、
「なんにせよ、喉が渇いた、、、川でも探そう。」
当てもなく森を歩いた。もちろんサバイバルの知識なんて前世でも今世でも習ってない。だから川がどこにあるかなんて見当もつかなかった。
当てもなく森を歩いていると先の方から唸るような音と叫び声が聞こえた。叫び声と言っても、人間じゃあない。
音を立てないように風下から近づいていくと、やはり邪妖精がいた。ゴブリンは魔狼の群れと戦っているようだ。
魔狼の群れが4匹に対して、ゴブリンの群れは17匹もいる。見た感じ、魔狼が体格でも戦闘能力でも優っている感じだが、ゴブリンは数の暴力と粗末だがしっかり金属でできた武器を使って、魔狼を少しずつ削っていっていた。
俺は、巻き込まれる前に逃げようとしていた。でも、気づいてしまった。魔狼の群れが1匹2匹と倒されていくなか、魔狼が小さな子供の狼を守る為に戦っていることに。その弱点をつくように下卑た笑いを浮かべるゴブリンたちが攻撃していることに。
「あのゴブリンども、汚い戦い方しやがる、、」
無性に腹が立った。まるで俺たちを襲ったあいつらみたいだったからだ。戦えない使用人を必要もなく殺すあの夜の盗賊のように見えた。
怒りで、憎しみで、もう理性なんかなかった。
「ぶっ殺す。」
最後の大人狼が倒され無防備になった子供狼に先頭のゴブリンが襲い掛かろうとした。その瞬間、これから訪れる、弱者への殺しの愉悦を想像し、油断していたゴブリンへ俺は石を持って突貫した。
驚きで数瞬動きが止まる他のゴブリンどもに目もくれず先頭のゴブリンに突き進む。驚いた先頭のゴブリンは、振り向きざまに手に持った無骨な短剣を俺の腹に刺した。
鋭利な金属が、俺の皮膚を突き破り、臓器へと達したのが感覚でわかる。だが、痛くない。痛みはとうの昔に無くしてしまったんだ。
「残念、俺はこんなもんでは死なない。」
腹の傷を無視して、手に持った拳大の石をゴブリンのこめかみに殴りつける。
ゴブリンが衝撃でよろける。
もう1発後頭部へ叩き込む!
「倒れろっ!」
脳震盪でも起こしたのか、ゴブリンはうつ伏せで倒れ込んだ。周りのゴブリンも突然の新たな敵に驚きつつも戦闘体制を取ろうとしていた。
「石じゃ攻撃力が足りないな」
腹に刺さったままの短剣をを引き抜き、振り向きざまに右足の踵で倒れ込みピクピク痙攣するゴブリンの首を踏み砕く。
ゴシャッ
「皆殺しだ。」
1匹2匹と殺到するゴブリンどもを、体への傷と引き換えに倒していく。
脇腹への刺突と引き換えに首へ一撃。
顔面への殴打を左手で受けながら腹を一文字に裂く。
太ももへの切りつけを受けながら心臓に一突き。
そんな感じで半分を殺し切ったあたりでゴブリンの様子が変わった。おおよそ死に至るようなダメージを受けながらもそれを省みず同族を殺戮する俺に恐れをなしたのか、1匹が逃げた途端、堰を切ったように散り散りになりながら逃げていった。
「くそがっ!逃げやがった!」
でも俺も動けない、死なないとはいえ、一瞬で傷が治るわけではない。戦闘も始めてだ、少し休みたい。
「あぁ!喉が渇いた!!何でこいつら水筒の一つも持ってないんだよ!くそっ!」
自分の出血と返り血まみれの体で地面にできた血溜まりに座り込む。
ベチャッ
ふと気づいた、水分あるじゃないか。
「んー、こいつがいいかな。」
1匹目に脊椎を踏み抜いて殺したゴブリンだ。
「首からヴァンパイアみたいにいきますか。」
手に持った短剣で首の動脈を切り裂く。紅い水分が吹き出てきた。
味は正直まずい。しょっぱいし、ドロドロしてるし、感染症もあるかもしれない。でも、喉の渇きには耐えられないし、俺は感染症如きじゃ死なない。血もたくさん流したから鉄分も取れて一石二鳥だと思うことにしよう。でなきゃやってられない。
「っはー。まあまあ飲めたか?」
体の傷も回復してきたみたいだ。急場は凌いだので、再度川を探しに行こうとしたとき、うずくまる灰色の毛玉を見つけた。
「あ、そうだった、お前大丈夫か?」
「クゥン」
魔狼の子供が1匹この場に残されていた。よく見ると、左後ろ足が折れているようでうまく歩けないようだ。だから、群れはゴブリンどもから逃げることもできずに戦ってたのか。
「ちょっと我慢しろよ。」
近くにあった木の枝を添え、骨を正しい位置に固定する。
「キャンッ!?」
「暴れるな暴れるな、必要なことなんだ。よし、これで良さそうだ。じゃあ、うまいこと生きろよ。」
やることはやったし、行きますか。子狼は、、まあ、元々野生動物だし、うまいこといきていけるか、、な?
そんなことを考えて歩いていたら、後ろから脚を引き摺りながら子狼がついてきた。
「お前、ついてくるのか?世話はできないぞ?」
「クゥン?」
「、、、。わかるはずもないかぁ、、。まあついてくるだけなら、好きにしな、、。」
「ワンッ!」
〜2時間後〜
「お犬様!ありがたやぁ、、」
「ワンッ!」
そこには、ドヤ顔の子狼に土下座する青年がいた。それは俺だった、、、。
二時間探し回っても川は一向に見つからなかった。
そして、子狼も必死でついてきていた。
どうしようもなかった俺は藁にもすがるつもりで、どうにかバカみたいなジェスチャーで水が飲みたいことを伝えた。伝わったのか、、?まあ何にせよ、察してくれた子狼は俺を川へと案内してくれた。その結果がこれだった。
「っぷはぁ!うめぇ!やっぱ飲み物は水に限るなぁ!」
「ワンッ!」
「にしても、まじで助かった、、お前がいなけりゃ俺はまたゴブリン狩りをしないといけないところだったよ。」
「ワン?」
「ははっ、まあ、助かったよ。えーっと、名前がないのもアレだから、なんか名付けとくか。」
狼、、オオカミ、、魔狼、、毛は白っぽい灰色、、んー
確か昔、北海道に行ったとき狼の話を聞いた気が、、、何だっけホッケカムイ、、?ホロケウカムイ!よし!
「お前の名前、ホロでいいかな?」
「ワンッ!!」
「お、気に入ったかな?」
「ワフッ!」
「よしよし、ホロ、お前もちゃんと水分補給しておけよ。」
「ワン!」
「にしても、家族を亡くしてひとりぼっちって俺と同じだな。お前は憎くないのか?」
「???」
顔が水でびちゃびちゃだ、、
「お前は元々、弱肉強食の世界で生きてたもんな。全くその歳でその強かさは尊敬するよ。」
「ワンッ!」
「じゃあ、そろそろ日も傾いてきそうだし、晩飯と寝床を探そう。明日にはどこかしらの集落に着きたいな。」
晩飯の木の実や小動物を探しながら、森を進む。サバイバルの先輩も出来たことだし、何とかなるだろう。
家族を亡くした一人と1匹は、川に沿って歩き始めた。
俺の足取りは少しだけ軽かった。
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ここで主人公とホロの外見を紹介します。
アイン(人族)15歳
身長 177cm
細身だが肩幅はある。
赤毛ストレート
実験中髪を切っていないので肩甲骨までぐらいの長髪
元々目は茶色だが、右目は他人のものを移植されているので碧眼
左腕肘から先のみ魔獣の腕が移植されており肌の色やバランスが違う。(そこ!ぬーべーとか幻想殺しとかいわない!)
人種としてはゲルマン系です。
ホロ (魔狼:種族不明)
体高 40cm強
白っぽい灰色の毛
尻尾は長め
目は灰色
好きな食べ物は意外とキノコ類、もちろん肉も好き
今の所サイズ感とか見た目としては灰色の豆柴です
ご拝読ありがとうございます。
主人公は、先の経験を受けて、いい意味でも悪い意味でも色々と吹っ切れてます。前世ではいつも仮面をかぶって人と一定の距離を取るタイプでしたが、今世では仮面の形が少し変わったみたいです。今は仮面かぶってます。あとキレたり焦ると口が悪くなります。
ホロは最初シフになりそうでしたが、あまりにも捻りがないのでこの名前になりました。
次話以降もゆっくり更新していきます。
お付き合いくださると幸いです。
誤字脱字、わかりづらい部分のご指摘、感想にていただけるとありがたいです。
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