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 僕とリミさんは、朝食を食べたあと、公園に向かった。


 過去のトラウマが影響してか、僕はあまり公園が好きではない。小さい規模の公園ならともかく、大きな公園は本当に苦手で苦手で仕方ない。


 けれど、リミさんが隣にいると、公園への恐怖心も薄れて、楽しく感じてくる。


 これが恋、なのだろうか。


 よく恋愛漫画で主人公たちが感じるような、「胸がドキドキ」の気持ちはあまりないものの、それは個人差なだけかもしれない。


 リミさんの好きなバラの花壇を存分に眺めて、僕らは公園内のカフェで休憩する。


 日本庭園や温室まである巨大な公園なだけあって、公園内のカフェも複数あった。そのうちの一つ、和風カフェを選ぶ。


 ちょうど人も少なかったので、店員に窓際の席を案内してもらった。


 大きな窓の外は、青々とした緑が広がっている。癒されるね、なんて話しつつ、僕らは抹茶をすする。


 僕はリミさんの顔色を伺う。


「……リミさん」

「……うん? どうかしたの?」

「えっと、リミさん、もしかして具合悪い?」


 バラを見ているうちは元気だったが、今のリミさんは落ち込んでいるように思える。


「あー……。ごめん、なんでもない! 気にしないでね」


 リミさんは笑う。


 無理やり、笑う。


「……」


 追及した方がいいのか。黙っていた方がいいのか。


 昔の僕だったら、迷わず黙ったままにしていた。本人が話したくないなら、そのままにしておくのが正しいと思っていた。


 けれど、今の僕は悩んでいた。


 彼女が心の底から笑えないのなら、助けてあげたいと、そう感じていた。


 リミさんは黙っていたが、僕がじっとリミさんを見つめていると、小さくため息をついた。


「……ごめんね。……うん。分かった」


 リミさんはさっと辺りを見渡す。どうしてだか分からないが、リミさんは緊張しているように思えた。


 まるで、悪事を働いて親の目を怯える子供のようだ。


 リミさんは誰かに聞かれるのを警戒しているのか、小さな声でいう。


「青宮さん、ちょっとついてきてくれる?」



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