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昼時のアパートは、ご飯を食べにくる人たちや、学校終わりの生徒たちで賑わっている。
りゅうと君の両親はまだ見つからない。さすがに二人で探しきれないと判断し、僕らは迷子センターに向かっていた。
あともう少しで迷子センター、というところで、二人の夫婦が駈け寄ってきた。
「「りゅうと!!」」
子供はパッと笑顔になる。
「ママ! パパ!!」
子供はリミさんの手を離し、二人に抱き着いた。
りゅうと君の母親は、ハンカチで涙を拭き、りゅうと君を抱きしめる。
「りゅうと、どこいってたのよ! 勝手にママとパパのそばを離れちゃ駄目でしょ!!」
「だって、ママとパパがどっかいっちゃったんだもん! りゅうと、さみしかった! でも、お姉ちゃんとお兄ちゃんがいたから、僕、頑張った!」
父親は笑顔で僕たちにお辞儀をする。
「りゅうとを見つけてくださったのですね。ありがとうございます」
「いえいえ!」
リミさんはひざをついて、りゅうと君の頭を撫でる。
「ママとパパ、見つかってよかったね」
「うん!」
三人はこれからランチに行くとのことだ。
一緒にどうかと誘われたが、リミさんはウインクをしてこう断った。
「せっかくですけど、私たち、デート中ですので!」
堂々とした発言に、僕はついつい顔が赤くなってしまった。
別れ際、子供は笑顔でぶんぶん手を振る。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん! バイバイ!」
「バイバイ!」
僕もぎこちなく手を振った。
二人になって、リミさんはうーん、と伸びをする。
「りゅうと君の両親が見つかって本当によかったよかった! ごめんね、付き合わせちゃって」
「そんなことないよ」
緊張がゆるんだからか、僕は本音をぽろりと洩らす。
「リミさんは、すごいよね」
「え? 私ってすごいの?」
「うん。行動できるって、すごい」
例え、美味しいと評判だとしても、僕は真っ赤なタコ焼きなんて食べられない。
例え、泣いている子供がいても、僕は目をそらし、誰かが手を伸ばすと思うに違いない。
彼女みたいに、行動に移せない。
「うーん、私は青宮さんの方がスゴイと思うよ。ちゃんと考えて動けるもん。私は何も考えないで動いちゃうからなー」
彼女はニコニコと笑う。
「さてさて! ともかくともかく! ご飯たべにいこうよ! 私、お腹ぺこぺこだよ!」
彼女は僕の手を握る。
「いこっ!」
僕は、彼女の手をつかむ。
次はどこへ連れていってくれるのかと、考えるだけで胸が高まる。
歩いている拍子に、服のなかに隠していた指輪が外に飛び出る。
銀色の指輪は、嬉しそうに、はたまた狡猾に、きらりと輝いた。