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戎橋勇者1万人

勇者(1万人):『阪神優勝やぁ!』

作者: 鴉野 兄貴

『阪神優勝やぁ!』



 そう叫んで道頓堀飛び込んだら魔法陣開いた。


「だ、そうです王様」

「一万人も勇者いらんのじゃ!」



 王様はキレた。ケチな王と言われたくないと万全の支援用意をしたのに一人あたり棍棒一つくらいしか支給できない!



「なんや飲みすぎたわ。空にドラゴンみえるで」

「窓から見えるアレ巨人? フナだけおらんな」

「ねーちゃん美人やなあ」


 召喚士の少女は戸惑いつつ、『一応、エルフが親族にいますので』と勇者の一人に答える。


「エルフ? 最近のコンカフェレベルたけえな」

「これはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度高けーなオイ」


「ねえよそんな武器! なんだよそれ二度言ったけど!」


 騎士団長もキレた。仕方ない。



 1300人体制で道頓堀飛び込み阻止を図った大阪府警の皆さんもキレていた。


「なぜ我々まで異世界へ」

「ははは! おれが飛び込んだからでっけー魔法陣が開いたみたいで、巻き込まれ召喚ってやつ? おつかれすー!」


 ライオットシールド装備の大阪府警、ヤクザより怖い。

 ボコす府警たち止めるヤクザたち。勇者の治癒能力は半端ないので大丈夫!


 マジなんなんやこれ、わてらいつ日本帰れるねん。阪神優勝して騒ぐために戎橋いったんやで!



「いや、やめてくれ。大変なんだから」

 警察と警備員たちがボヤく。早く帰宅したかった!



「阪神てなんですか」

「タイガースや!」


「とら?」

「虎がどうしたのだ」


 召喚士と騎士団長たち王国側と、勇者たちの意思がいまいち通じていない。翻訳魔法が機能していないのか。



「巨人ボコして倒して、やった! って時にどうなってんな試合!」

「だから勝ったんやで」

「最近のスマホはワンセグついとらんからな」


「パネエなお父さん。でも俺オリックスファンやねん」

「えっと、私たち野球わかんないんだけどどうなってるの!」


 グリコ下のキッズたちも戸惑っている。



「えっと……そのハンシン? 優勝がなんだか私にはよくわからないのだが」

「情報! 情報!」


「魔王のことなら調べることができる限り」

「阪神のことじゃボケェ!!」



 激怒する大阪人、帰れなくなりキレる府警! 宥めるヤクザ!



「テレビ見れんかったらなあ! 盛り上がりにかけるんしゃ!」「せめてラジオな!」『Abemaでもええわ!」



 召喚士の少女が戸惑いつつ答える。

「魔王の首が勇者を元の世界に戻す魔法のために必要なのです」


「なんやそいつ!」

「え、阪神の試合見れへんて?!」

「殺すわそいつ!」


「やめろやめろ」


 府警たちはキレているが元の世界に戻りたいのは同じである。


 大阪人たちは旅立った。全員バット持って。


 ……怖すぎるんだが。



 なお、ヤクザのひとりはなぜか長ドス持っていたので絶賛正座中で府警のお姉さんに詰められている。



 サイクロプスがあらわれた


 一斉発砲。


『巨人や! こ◯せ!』


 巨人が違う。

 可哀想だから虐待やめて!



「魔王様! サイクロプスがやられました!」

「え、初手で最強のやつ送ったのに?!」


「なんか『巨人、殺せ』とかバチクソキレてますよ。あいつら」

「え、巨人族のみんなの保護急いで」


「なんかバット? ていう棍棒もってものすごい勢いでやってきました」


 南港の族はドリフト族でガチ。



「勇者って一人でしょ。どういうこと?」

「いえ、一万人です」


 魔王は驚いた。


「いちまんにん! どうなってるのよ!」

「ガープが倒されました」


「え、あいつ竜人よ! そんな簡単に倒されないわよ!」

「シキュウもサティとかなんとか……ホエイもやられました」


「えー! あいつ鯨人よ!」

「グランシャトークラッシュとかなんとか」


「スワロは? スワロは帰ったの?!」

「先程焼き鳥になりかけて帰ってきました! 最後の伝言は、曰く『ソースハニドヅケキンシ』!

 スターズ、ミノタウロス、グリフィン、ミネア、ハマーンもやられました! 海兵団も壊滅です! 『キャバレーサンがナクナッテザンネンムネン』と敵よりメッセージ!」


 驚愕する魔王のおもてが凍っていく。


「『大阪府警』っていう千三百人の猛者がシャレならん強さです。『給料よこせこらあ!』とワケわからんことを叫んでます!」

「やけに軽くて硬い盾と銃という武器と高速で動く馬なし車で迫ってきます魔王様。お逃げください!」



「魔王どこじゃボケカス! いてこますぞ!」


 勇者たちが攻めてきた!

 大量のラッキーセブン風船とともに!



「みんな逃げて、奴らの狙いは私だから」

「魔王様を残して逃げれますか!」

「私は一介のメイドですがあなたが乳飲み子のときからお世話しています! 最後までお供します!」



「阪神の試合見れへんのじゃゴラァ!」


 阪神の試合を見るために、魔王城の悪名高いトラップ踏み越えなみいる猛者をバットでボコす大阪人!


「USJに比べたらたいしたことないアトラクションだったわ!」(トラップ解除に従事した女子高生の発言)



 怒涛と共に詰め寄る大阪人軍団。

 だんじり引いて逆らう奴は建物ごと。建物壊れたらハイ拍手!


 やっぱ滋賀県民が琵琶湖の水止めて道頓堀を空堀にしたのが不味かった。

 身体が闘争を求めてアーマードコアの新作も出た勢いの暴徒ぶりに魔族もドン引きだ!



「よくきたな勇者ども! 私が魔王だ!」


 人間の齢にして十三歳ごろ。

 胸は発達しだしたころお腹は少しハリが残っていてくびれ出した頃のまだ幼なげ残る少女は青ざめつつも、毅然と叫んだ。



「魔王? あんたが?」


 おばちゃんたちが取り囲む!


「あめちゃんいる?」


「かわいいねぇ。どっからきたん」

「魔界ですけど……」


 ほんわかしてるおばちゃんたちにさしもの虎チキたちも遠慮した。こっちが虎ならあっちはヒョウだ!



「私も若いころあんたみたいにかわいかったんやでー」

「それはどうやろ」


 迂闊なことを言ったオリジナル勇者はホームランされた。

 夜勤明け看護師勇者たちが蘇生に励んでいる。



【……勇者相談中】


「……結論。まお子ちゃんをぶっ殺して首取らな阪神の試合見れへんてことやな」


 タイガースキャップを被ったおっちゃんが戸惑いつつ呟く。この道40年の阪神ファン。阪神酒場オーナーでもある。



「ま、まお子ちゃん……」

「魔王様はそのようなお名前では」


「それはあかんな」

「うちの孫と変わらんで」

「さすがにフィリピンの某ルフィ容疑者じゃあるまいに、子供やおばあちゃん殴れへんわ」


「こんな可愛い子が女の子のはずがない!」

「お巡りさんこいつです。はよ」



 勇者1万人もいれば文殊の知恵。



「なんかええ手はないかね」

「あるで」


「なんや言えや」

「次は日本シリーズやろ」


「うん」


「なら大阪一は世界一や。つまり神さんなぐりにいこで。みんなで」


 意味不明であるがそうなった。


「おらぁ! 神出てこいやゴラァ!」



 ドンドンバンバン!

 どっかの8頭身AAみたいに扉をたたく大阪人たち。

 ドン引きの王国軍魔王軍。



『“かみ 事務所”

 営業時間はAM9時からPM3時

 今、かみは *在室中*』



「え、えーと、空いていますし、ノックすれば出てくれるかと……』


 召喚士の少女が戸惑いつつ意見すると、ボールをガンガン棍棒で叩き出した。


「何やってるのだこいつら……」

 魔王と王様戸惑いなう。


「ノックさん死んだからなあ」

「だれですその人」

 スワロさんも戸惑いなう。


「そもそもなぜ魔族の私たちが天界に入れるのかしら」

「そういう展開やからや」


 多分ダジャレ。ガチャンとかガチャポンだかして扉が開く。



「はい」


 女神がポテチ咥えてBL本片手に出てくると、チェーンソーもった大阪人たちがぐるり。



「な、何よこいつらー!?」

「えっと、この世界に物申すということらしいです」


 ミノタウロス、お前焼肉になったのではないのか。



「……え、何、今そんなことになってるの、最近飽きてBL本見てたらいつのまにか魔王死んでたのねー」

 ポテチ齧りつつ女神がぼやく。


「いいやつだったのに……そっか、あの時の子供がきみかあ」

「女神様、その、うちあんま戦争したくないのですよ。実は先日金鉱出たんです。そっちに注力したいのです」


 王様も困っている。


「うーん。確かに魔王勇者戦は飽きたかも……」


 どうしたもんかなあと女神。


「野球や!」

「野球で決めるんだ!」

「そや! 維新といえど大阪市解体は許さんで!」



「何言っているのですか勇者さん」

 メイドも呆れているが、とりあえずそうなった。


 勇者たちは女神の手で帰還することになった。


 何故か腕組み六甲おろしを熱唱する勇者たち見送る異世界の人々。


「じゃわてらかえるわ!」

「みんななかようせえや!」

「今度鶴橋にたべにきてや!」

「天満にもきてや! 東洋ショーは日本一やで!」


 勇者たちは無事帰っていった。


「さあ日本シリーズみなあかん」



「めちゃくちゃ賑やかな連中だったな」

 王はため息。

「全くだ。ところでニンゲン。お前妃候補はいるか」

 魔王が王の視線を受けて少し視線を逸らせた。尖った耳が赤い。


「ロリ趣味はな……」

「私はお前の倍は生きているわ! 見てろよ! 母上のようになったころにはお前は壮年だ! 死ぬまで絞ってやるぅ!? お前の寿命が尽きるまで若く美しく聡明な妻を持てるのだから嬉しいよな! 嬉しくないはずがない!」


 王は魔族基準ではイケメンだった。

 良縁祝して、大量の羽をつけた魔族女性たちが大階段から降りてきてレヴュータイムに快哉する人間たち。



「皆のものであえ……」

「お幸せに」「やっとぼっちゃんも良縁に」


 王は家臣に見捨てられ、そうなった。

 彼は幸せな一生を妻である妃と過ごし、そして二十五人もの仲の良い男女に恵まれた。

 魔族と人間。二人の子孫たちが異世界野球の礎となる。



 今日も異世界セントラルリーグは熱く燃えている。


 恒例の巨人族VS虎人族戦は古を再現する大祭として今なお人気が高い。

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