#9 海賊は名乗りを上げる。
進んでいく船。いつの間にやら巨大海賊船が後ろにいる。
「えー!!」
「何で気付かないんですか!!」
あっさり海賊に乗り込まれる。まあお決まりの流れである。
「でも5人しかいないぞ」
「それもそのはず、俺達は少人数の海賊だからな」
茶髪で片目を隠した海賊が言う。
「なるほど、君はエスというんだね」
ポテトが指摘するとエスは驚く。
「なぜ分かったっ」
「服に名前の刺繍がしてあるから」
「……!! くそっ母ちゃんいつの間に」
「母ちゃん?」
「う、うるせぇ」
何だか微妙な雰囲気が流れる。
「ま、とにかく名乗ってくださいよ」
田中が促した。まずは茶髪君。
「短剣担当、エス!!」
痩せ型で根暗な印象のある奴。
「拳銃担当、キラ……」
少し小太りで明るい顔の奴。
「料理担当、シークトです」
右目に眼帯をした、絶対強い奴。
「刀担当、エースレッド」
灰色の布で体を纏った、紫髪。
「魔法担当、ドランディア……」
エスが号令をかける。
「7つの海を制覇する!!」
それぞれがポーズをつくる。
「海賊集団、パイレーツ!!」
……沈黙。いたたまれなくなったチエの拍手の音だけが甲板に響く。ポテトが呟いた。
「痛い、な」
「痛い、ですね」
「おいそこっ、うるさいぞっ」
エスが喚く。
「だからこの挨拶やめようって言ったのに……」
言ったシークトはエスに殴られる。残りのメンバーは暇そうだ。
「俺らの領域に入ってきたってことは、倒しにきたんだろ」
「まあ、そっすね」
「だったらお前らも名乗れ!!」
「じゃあ同じように名乗ってやるよ。芋の名前を付けられた、勇者ポテト!!」
「超絶オタク、田ごふっ!!」
「え」
田中、キラに思いっきり撃たれとる。
「何で紹介の途中で……」
「なんか嫌な顔だったんで」
魔王が怒る。
「よくも補助魔法担当を!!」
「よくも大事な仲間を、ではなく……」
戦いは始まった!!
ポテトとエースレッドが剣を交え、(刀とナイフだけどね)ドランディアとチエが魔法対決。魔王田中とエスキラで乱闘、シークトはウロウロしている。
こんなんで戦いが書けるのか!? 作者の腕に読者は期待していない!!
× × ×
「今回から改行ナシだっ‼」(※再掲時注:原文ではなぜかここから改行を無くしていました)
叫ぶ魔王はエスに向け大剣を振るう。エスは素早く動いて攻撃を避けた。
「読みにくいようでしたらお手数ですが小説準備・会話掲示板まで‼」
田中が叫ぶと
パーン
銃声がし、キラが放った銃弾が田中の首を掠める。
「ひぃっ」
慌てて田中は物陰に隠れた。また叫ぶ。
「あと50レスおめでとうございます‼」
「これからも勇者ポテトの大冒険をよろしく頼む‼」
「――お前ら読者に語りながら戦うなよ‼」
エスがキレた。短剣を振るってくるので魔王は「おっと」と躱す。急所を正確に狙ってくるのが厄介だった。
「くそぅ、チエは大丈夫か……?」
× × ×
魔法は灰色の布に当たった、ように見えた。しかし光は標的を虚しく通過する。
「おっかしいなぁ、当たってるハズなのに……」
チエは田中魔王組とは反対側の甲板でドランディアと交戦していた。深い紫色の柔らかな髪が揺れ、彼は童顔に笑みを浮かべた。
「そんなんじゃ甘いよ、僕には勝てない」
「あっ天然記念物のトキがいる‼」
「えっ」
ドランディアが思わず振り返る。
「今だッ、レモーブ‼」
灰色の布と紫の髪が、赤と橙の爆炎に包まれた。
「やった⁉」←フラグ
白煙を手で切り裂いて無傷のドランディアが現れる。
「……っ、強い」
「教えてあげる。僕の名前はドランディア・シリウス」
「はぁ。ご丁寧にどうも」
「そうじゃなくて、昔名を馳せた魔法一族シリウス一家は知らない?」
「ごめん知らない」
ため息をつくドランディア。それを見て、思わずチエも少しだけ気を緩めてしまった。閃光が炸裂し、慌てて指を動かす。魔法が当たる寸前で、簡単な結界を張って防いだが、少しでもタイミングが遅れていたら吹き飛んでいた。物語中盤で消えるキャラにはなりたくない。
相手と一定の距離をとりながらチエは呟く。
「ポテトさん、大丈夫かな……」
× × ×
刀と剣がぶつかり合い、金属の擦れる音が響く。ポテトとエースレッドは海賊船の甲板で交戦していた。いつ海賊船に移動したとかポテトって剣持ってたっけとか言わない。
「くっ……かなりの刀の使い手だな」
距離が詰まり、小競り合いになる。ポテトの目の前のエースレッドの目が鋭く輝く。右目が眼帯で隠れている分、長めの前髪に隠れた左目が光るのだ。
「(距離を一旦取らないと、斬られてしまうな)」
隙を突いて後退しようとするが連撃がそれを許さない。高い金属音が何度も鳴る。
「……」
ポテトは突然ムーンウォーク‼
ズザアアアァァァ……
「⁉」
一気に距離を取ったポテト、満面のどや顔。エースレッドは呟く。
「距離が遠ければ刀が届かないと……」
「ん~? 投げれば届くよ」
「そんな原始的な方法を使う海賊がいるか」
「ウソ〇プのファンを敵に回したな」
エースレッドは刀を構え直した。
「だが……俺は届く」
刀を甲板の床につける。
キィィ……
何かが滑り軋むような音……?
「っ!」
ズシャァ
ポテトが横に跳ぶ。一瞬遅れて白い光が炸裂し……宙が裂かれた。
「な……遠距離攻撃⁉ まさかあいつ……」
エースレッドの左目が怪しい赤に輝く。同時に耳から目の下にかけて、刀の形の赤い紋様が浮き出た。
「ファントムか……」
ファントムって何だっけと思った方は正解だ。作者の思いつきなので今までに出てきてはいない。次回、キャラの独白で都合良く説明する。
× × ×
「ファントムは異能使い! 以上! そして僕はナイフを出現させられる能力をもつッ!」
「……待て、雑だ」
冷静にツッコむエースレッド。
「いや、本当だったらもっと説明したいんだが、今小説準備・会話掲示板で企画しているリレー小説が異能もので、被るのも嫌で。しかも今、投稿ペース、ガタ落ちしてるだろ? 物語の質をいくらか落として、物語を少しでも早く進めようかと思ってな」
「おい待て、動機が素晴らしく不純だ。泥水のように濁っているぞ」
「と、いうわけでお前と長く戦ってるわけにもいかなくなった」
「え?」
一気に走り出すポテト! 慌ててエースレッドが刃の異能を使う! しかし毎度毎度のご都合主義でポテトにはノーダメージ!
「いやおかしくないか!?」
「大人の事情に口出しすんな海賊風情が! 謝罪は準備・会話掲示板でしてやる!」
ポテトの攻撃! エースレッドに999ダメージ!
エースレッドを倒した!
「ふぅ……」
爽やかな青い空を見上げ、安堵のため息をつくポテト……。そしてそれを横目に、起き上がってゆっくり逃げるエースレッ
「逃がすか」
「やはりバレたか」
ポテトが剣をエースレッドの首に当てる。
「海賊は放っとくと何をするか分からん。今から縛らないとな」
エースレッドは素早く頭を回転させた。名案が思い付く。使い古されながらも、効果の期待できる方法……。
「あっUFO」
「えっ」
ダダダ……逃げるエースレッド。
「……? ? ん? え?」
まだ探してるポテト。甲板からポテト達の舟へ戻るエースレッド。
「おい、未確認飛行物体はどこにいるんだ」
振り返るポテト。……ようやく気付いたようで、ハッとして必死にエースレッドの後を追う。
× × ×
再びポテトの船に全員集結……。揺れる甲板の上、エースレッドはエス、キラ、シークトと合流。結局シークトは何かしたのだろうか。
それはともかく、ポテト達と睨み合う海賊……。ポテトが口を開いた。
「もうおしまいだな。悪いが、尺の都合上ここで負けてもらう」
「……そうはいくか」
エースレッドがマスト(船の甲板の柱のことです)を見上げた。
「ドランディア!」
「!?」
マストの横柱にドランディアが座っていた。
「あいつ、チエと戦っていたはずじゃ……」
「ごめんなさい!」
見れば後ろにチエがいる。
「尺の都合がどうのって、途中で戦闘を中断させられました!」
「相手も同じ言い訳使ってるんですか!?」
勇者一行がやや慌てているのを横目にエースレッドがドランディアに呼びかける。
「逃げるぞ。魔法を頼む」
「了解――」
ドランディアが何やら呪文を唱えた。
ドカァッ――
ドォ――ン
瞬間、巻き起こる爆発、飛び散る粉塵。
「!?」
「ハハハ、ああ滑稽だねぇ!」
困惑する勇者一行と海賊達の頭にドランディアの声が降りかかる。
「教えてあげよう、僕は――」
「あ、尺の都合で次回に回してくれ」
「……」
× × ×
「僕は帝王パストラの手下、ナゲット・シリウスだ」
ドランディア改めナゲットが名乗りを上げた。
――沈黙。
ポテトが大爆笑を始めた。
「いwwwやwwwナゲットwwwってwww」
勇者一行、海賊達は一部は拍子抜けし、一部は笑いをこらえている。
「な、なな、なんだよおい、人の名前笑うなよ、ポテトとか田中の方がよっぽどおかしいだろ、人のこと全然笑えないだろう、なあおい」
分かり易く動揺するナゲットにチエが
「レモーブ」
ドッカアアアァァァンッ
「わー当たった当たった」
「尺の都合で爆発の描写は擬音だけだ、すまない」
魔王が読者に向けて謝罪する。ナゲットは甲板に墜落。乙。
「ナゲット……パストラの手下とはどういうことだ」
エースレッドが尋ねると
「はっ……この地界を調査していたのさ……新たな支配に相応しいか、そして新たな勇者がいるのか……。勇者ポテト……君達は確かに強いね……ククク」
「そんなのどうでもいいから、さっさと縛るぞコイツ」
ブレないポテト。縄を出す田中。
「残念だが僕は帝王様の元に戻らないとね……調査は終了だ! エザク!」
呪文によって風がビューっと吹き荒れる!
「畜生、逃げる気か!」
「いや、ナゲットさんも風に煽られてます」
「自滅してるの!?」
展開の都合上ナゲットにはここで帰っていただいた。by作者
田中がポテトを見た。
「これで大陸まで船で行けますよ!」
「おい、まだやることがあるだろう」
「何かありましたっけ」
「港町観光だ」
× × ×
魔界。帝王パストラの城――。
ナゲットがククッと笑う。
「勇者と一戦交えてきたよ……なかなか面白い奴らだ」
ネコフルンが顔をしかめる。
「ふん……ああいう奴らが俺は大嫌いなんだよ」
暗い大部屋にネコフルンの舌打ちがこだまする。
「ところでネコフルン、君、あのネズミを逃がしたんだよね?」
「作者が書き忘れて最近出てないけどな」
「ハハハ、ゴミのようだ!」
蒸すか大佐が笑う。
「ラピタ王の力を見せてやろう」
「2人で行って来てよ。勇者御一行は、間違いなく大陸に渡る」
ナゲットは舌なめずりした。
「大陸で目にもの見せてやってくれ……戦力はあるだけつぎ込んで構わないから」
2人が返事した時、
グオーオーオーォ――
3人は思わず肩をすくめた。帝王パストラの叫び声には、部下でも慣れることはできない。
「帝王様もそろそろ我慢の限界だろうから、ね……とにかく大陸に急いで欲しいな」
その頃、勇者一行は港町観光を満喫していた。
唐突に出てきて特に活かされない新設定。中二小説を読む醍醐味ですね。それにしてもファントムて。