#8 猫は店長ともめる。
「あ~もう疲れましたぁ……」
「2時間で限界か。凄い凄い」
ポテトが皮肉る。
大陸に渡るために勇者一行は海を目指していた。今は延々と草原を歩いている。
「一回休むぞ」
各々で草の上に座り込む。
「この調子じゃ時間がかかるな……」
ポテトが呟いたその時。
チュウ
「ん? 田中と魔王のキス音か?」
「違いますよっ、ネズミです」
田中の指差したところに確かにネズミがいた。何かに怯えているようだ……。その時また音が。今度は轟音だ。
ドーン
「今度は何だ。田中が壁ドンしたのか」
「壁ありませんって!! 敵ですよ!!」
田中の指差したところに確かに敵がいた。頭が猫で体が人間の敵だった。
「クソねずみがっ、ちょこまかと……」
ポテトはしばらく黙っていたが、急に銀のナイフを投げてその敵の頭に命中させた。
グサッ
「ゴッ……何だおめーら!! 変な格好しやがって」
「そのセリフそっくりそのままお返しできるんだが」
敵はニヤリと笑い、
「俺様の名は帝王パストラの手下、ネコフ
ルンだ!!」
「切れてるせいで格好つかないな。よろしくネコフ ルン」
「( ゜Д゜)ハァ? 何で切れてるんだよ!! ネコフルンだ!!」
「キレてるのは名前だけじゃなかったか……」
~♪
ネコフルンが現れた!!
ポテトの攻撃!! ネコフルンにダメージ!!
ネコフルンの攻撃!! 田中にダメージ!!
魔王の魔王斬り!! ネコフルンにダメージ!!
ネコフルンの攻撃!! また田中にダメージ!!
田中の攻撃!! ネコフルンにダメージ!!
ネコフルンの攻撃!! やはり田中にダメージ!!
チエの魔法攻撃!! なぜか田中にダメージ!!
ネコフルンの攻撃!! 例によって例の如く田中に大ダメージ!!
「……って何で全部私に!?」
「おかしいな、一番後ろだから一番当たりにくいハズ」
「しかもチエさんの魔法も私に!?」
「ごめんなさい、少し間違えちゃって」
「……なんか、すまない」
「ネコフルンさんに謝られたし!?」
隙をついたポテトのポテトカット!! ネコフルンに大ダメージ!!
ネコフルンを倒した!!
「……金とか経験値とか、無いのな」
「ちっ……ならネズミだけでもっ」
ネコフルンがネズミを捕まえようと動く。しかし……。
「敵キャラならやられたら黙って消えろっ!!」
魔王が巨大な剣でネコフルンを真っ二つにした。
「いやいやいやさりげなくグロいことしないでください」
「全く。敵キャラの風下にも置けないやつめ……」
「風上」
ポテトが訂正する。一方のネコフルンは
「ちっ……覚えてろ」
「君のことは永遠に忘れないよ!! ああ、私、泣いちゃダメだ、泣いちゃダメ、笑ってお別れしなきゃ」
「チエさん……あまり煽らない方が良いですよ」
ネコフルンはそのまま消えた。
「何だったんだアイツ。ん……?」
チュウ
「お~ネズミが俺に懐いたぞ!!」
「わ~何てご都合展開!!」
魔王は満面の笑みでネズミを手に抱えている。ポテトはため息をつき、「行くぞ」と声をかけた。
× × ×
「私ネズミはダメなんだよなぁ」
「田中さんは嫌いですか? 私は好きですよ。ハリネズミとか」
「チエ、豆知識を教えてやる。ハリネズミはモグラの仲間、ハリモグラはカモノハシの仲間、ヤマアラシはネズミの仲間だ」
チエ は こんらん している !
「よし、名前を決めないとな……」
魔王が言い出す。
「可愛い名前が良いですよね」
「何だかコイツ、俺には輝いて見える。それにチュウと鳴いていた……よし、ピカチュ……!!」
「やめてくださいN社に怒られます!!」
「ああ? 何だよ……だったらジェリーはどうだ? 俺と合わせてトムとジェリ……」
「M社に怒られます!!」
「うるさいな。あっ、ミッキーはどうだ?いや、昔俺の家にいたネズミに似ているから、ミッキーハウスだ!!」
「うわぁ恐怖のD社がやってくるっ怒られるっ」
「魔王、お前狙ってるだろ……」
× × ×
勇者一行の前に突如誰かが出現!!
「ひえっ誰ですか」
「青い流星のサック・シャアだ」
「なるほどつまり作者と」
田中が納得する。作者は頷き、
「大陸まで行くならこのエメラルドの道を行くのが近道だ」
「なんだかカカシとかブリキとかライオンが仲間になりそう」
ポテトが作者に尋ねる。
「近道にリスクは?」
「途中に中ボスがいる。しかも強い」
「近道しよう」
全員がズッコケる。
「本当に良いのか」
「行ける行ける。ポテちゃん頑張る」
作者が深~く頷く。
「それでこその勇者だな。ならば行きなさい」
「何だか偉そうだな」
「そんなこと言うと消しゴムで消すぞ」
「いやパソコンで作業してるでしょ」
× × ×
「途中色々あったがついに中ボスの砦に着いた」
「その色々を書かないで何が小説なのかと言ってはいけません」
さて、とポテトが言う。
「無駄にデカイ砦だな」
「辺りに村は無かったですし、余程強いんですよ」
全員で扉の前に立つ。生温い風が吹く。
「作者も強いと言っていた、油断するな」
ウィーン……
扉が横にスライドして開いた。
「……自動ドア」
全員で中に入る。
「やいやい中ボス……」
「いらっしゃいませ~」
ズダーン
「何だその挨拶はっ」
「はい、ここはコンビニですので」
なるほど周りには商品が陳列しているし、中ボスはレジにいる。黒髪のイケメン中ボスであった。
「でも何でコンビニ!?」
「カトリーマートです」
チエと魔王が早速レジに向かっている。
「あっ唐揚げ美味しそう、唐揚げください」
「じゃあ俺はおでんが良いぞ!!」
「少々お待ちください~」
田中が呆れる。ポテトも流石に怒りの表情で、
「そんなことやってる場合か!!」
レジに歩み寄り、
「メルカ〇の発送お願いします」
「承りました~」
田中がコケる。
「勇者様!!」
「はいはい。真面目にやります」
今度こそ中ボスに聞く。
「ここを通してもらおう」
「はい、承りました~」
ガクッ
「えっ帝王の手下でしょ?」
「いえ、仕事が肌に合わなかったので昨日付けで辞職願を提出しまして、退職金で砦をコンビニに改装しました。ここらはコンビニが無いので、これで生活しようかと」
「あら。しっかりした中ボスだこと……」
なぜかオネェ口調で魔王が言う。
「あっ申し遅れました。私、香取店長です」
「はぁ。ご丁寧にどうも」
全員拍子抜けしてしまった。
「ミセナガぁ!!」
入店音と共に突然ネコフルンが入ってきた。
「いらっしゃいませ~」
「いやマジでコンビニやってんのかよ!!」
急展開についていけない勇者一行。
「ミセナガって誰?」
「あ、私です」
「香取店長って、カトリミセナガって読むのか!!」
「はい」
逆に展開に置いて行かれるネコフルン。
「店長、今まで一緒に仕事してきただろう?」
「ええ。しかし仕方がありませんでした」
「何で急にこんなっ」
文字だけ読めば閉店間際のコンビニでの会話だ。
「ならお前を倒すぞミセナガ!!」
「何から何まで急だな」
ポテトが呟く。
× × ×
ネコフルンはボロボロになっていた。
「スレが移行する間に何があった」
「私がやりました」
香取はあくまでも飄々としている。
「くっ勇者ども、許さねぇぞ」
「何もしていないのに恨まれる私達」
田中が呆れる。
「クレイマーには出て行ってもらいます」
香取がホウキでネコフルンをさっさかさっさか払ってしまう。
ポーイ
「……」
「裏口から出れば先に進めますんで。またのご来店をお待ちしております」
こうして勇者一行はあっさり関門を突破した。
× × ×
砦を出た一行。田中が首を傾げる。
「あの……何で名前変わってるんですかね」(※再掲時注:ここで私のハンドルネームが変わりました)
「入力しづらいし、覚えにくいからなぁ。そろそろと思って変えたらしい」
魔王が言う。
「あとは近々Twitt〇rのアカを作るって」
「へぇ……何ででしょうね。どうせ低浮上になるのに」
チエも首を傾げる。
「お、海が見えて来たぞ」
「もう!?」
「今の会話をしているうちに10kmは歩いた!!」
「どんだけスローモーな会話!?」
ポテトは無視し、
「いよいよ大陸へ向けて出港だぁ!!」
「港町がありますから、寄りましょうよ」
~港町 ウミチカ~
「何っしばらく船は出ない!?」
「そうなんですよ、最近海賊が出没していて」
「海賊を倒せば船が出る!?」
「え、あっはい」
「海賊倒すぞ」
「えええ!?」
周りに人がいないのにコンビニ建てて大丈夫なんでしょうか……。