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#4 魔女っ子チエは魔法を使えない。

「生麦生米生卵村へようこそ!!」


 ポテトと田中は村の入口でつんのめる。


「何で到着早々早口言葉な村なんですか!!」


 村人Aはキョトンとしている。ポテトはため息をついた。


「しばらくここへいさせてくれないか」

「でしたら村長のところへご案内します」


 ポテトと田中が村人Aについていこうとすると、


「待て~い!!」


 声がする。振り返ると誰かが駆けて来ているのが見えた。


「ん~? あれ、もしや魔王か」

「あ、トムさん忘れてましたね」


 全速力で駆けて来た魔王は三人の間をあっという間に通過し……。


 ドカーン


「あ、家に」


 ガラガラガラ……


「あ、崩れてく」


 村人Aが叫ぶ。


「村長ぉぉぉ!!」

「えぇぇ!?」


 魔王が破壊したのは不幸にも村長の家だった。



× × ×



「あ~あ、出禁喰らっちゃいましたよ」

「魔王のせいだな」

「すまん」


 魔王トムはスマホをいじって歩いている。


「何してるんですか」

「呟いてるんだよ。出禁ナウ」

「出禁ナウ」


 ポテトが、おい、と二人に声をかける。


「隣村だ」

「こんにちは、この竹垣に竹立て掛けたのは竹立て掛けたかったから竹立て掛けた村です」

「面倒だから竹垣村な」



× × ×



「いらっしゃい!! ここは武具屋だよ!!」


 この竹垣に竹立て掛けたのは竹立て掛けたかったから竹立て掛けた村、略称竹垣村の武具屋らしい。ポテトと田中、魔王はそこで足を止めた。


「竹製のだけかと思ったら割としっかりしたのも売ってるな」


 品揃えはなかなかに豪華だ。剣や刀、槍等の近接武器から、弓矢やボウガンまである。勿論防具も負けず劣らず良質のものが揃っていた。


「おすすめは?」


 田中が尋ねると店主は愛想よく笑い、


「この大砲なんかどうだい」


 1メートルはあろう大砲を出してきた。


「何か特別なのか」


 魔王が聞く。


「それが普通の大砲は一回撃つと30秒くらい使えない。ところがこれは8.6秒間隔で撃てるんだ。これぞ8.6秒バズー……」

「やめてくださいっ」


 田中がギリギリで止めた。


「おうどうした」

「いやいやいや、明らかに懐かしいあのお二人ですから!!」


 ポテトがため息をつく。


「これは強い武器になる。そのバズーカ、買おう」

「毎度あり~」


 大砲を担ぐポテトに、田中は首を傾げる。


「金、どこで手に入れたんです」

「生麦生米生卵村の村長の家からパクってきた」

「俺がな」

「魔王さん何やってんすか!?」


 武具屋店主が他に買う物はないかと聞いてくる。


「じゃあそのムチは」

「これは縄跳びだな」

「それとその洋服は」

「良い防具なんだぜ」

「縄跳びと服、買う」


 その他色々を買って勇者一行は武具屋を後にした。その姿を物陰から見つめる少女がいた。



× × ×



「待って!!」


 勇者一行の後ろから飛び出す少女。


「お願いがあるの!!」


 ……無視して進む一行。


「いや待ってよ」


 少女は慌てて一行の前に回り込んで両手を広げた。


「何だよ。僕達、魔王退治のおつかい頼まれた上に、これ以上何を……」


 ポテトは少女をよく見た。


 背は低く、その身に纏った白い衣装は少し大きいようだ。小さい右手に杖を持っているので、魔女らしい。髪型は所轄おかっぱ。子猫を彷彿とさせる琥珀色の目に不安の色がある。


「……」


 唐突に円陣を組んで話し合いを始める勇者一行!!


「え、何、何」


 あたふたする少女。


「どう思う田中」

「私はあの子結構可愛いと思います」

「俺も同感だ」

「お前らなぁ……装飾品が明らかに高級だった。『お願い』を聞けば¥がっぽり」

「それが目当てですか。でも無茶なお願いだったらどうするんです」

「だったら、一回内容を聞いてからでも遅くない」

「魔王の言う通りだな」


 三人はサササと動き、少女を取り囲む。ぱっと見カツアゲだ。


「ひえ、何、何」


 ポテトが、コホン、と咳払いする。


「そのお願いとやらを、聞くだけ聞こう」

「言っておくが、頼まれるとは限らない」


 少女はポカンとしていたが、やがて話し出した。


「この村は、先週襲われたんです……」


 ポワワワーン。空間が広がる。


「何これ回想シーン?」


 竹垣村に突如、大軍隊が押し寄せて来た。彼等は「DryMoon」を名乗り、村から宝物を奪っていこうとした。魔女見習いを卒業したばかりの少女は彼等に対抗しようとしたが、恐怖と緊張で魔法が使えず、結局相手にもされなかった。最後には抵抗できずに宝物を奪われたのであった。


「だから、彼等を倒して欲しいの」


 ポテトは考え込んだ。


「この村に戦士とかはいないのか」

「いるけど、ニートなの」

「ニートで戦士やってるんですか!?」


 魔王はふむ……と唸る。


「自分の家に引きこもってる奴は頼りにならんな」

「魔王さん、あなた城に引きこもってましたよね」


 田中は殴られた。ポテトは未だに考え込んでいる。


「大軍隊は嫌だな」

「お願い!! 私の父は村長、謝礼は幾らでも出せるわ」

「よし皆の者、この少女を見捨てるわけにはいかない!! DryMoonなんぞ五分で倒すぞ!!」


 ポテトが宣言する。田中は呆れた。


「謝礼に釣られましたね」


 ポテトは珍しくにやけている。


「富と名声、富と名声……そうだな、富と名声だ」

「独り言ばっちり聞こえてますよ」

「とにかく、そうと決まればさっさと行こう」


 勇者一行はさっさと身支度を整え始める。


「あ、そうだ、お前もついてこい。猫の手も借りたいんだ。猫よりは幾らかマシだろ?」

「はい、勿論です!!」


 少女は笑顔で敬礼した。


「名前聞いてなかったな」

「私、ちえみです。チエって呼んでください」

「ポテトだ。ポテとは呼ぶなよ」


 かくして仲間の増えた一行は、DryMoonのアジトへ向かう……!!

 ヒロインの登場です。一番まともな子ですね。

 当時流行ったお笑い芸人も分かります。今やどの人も懐かしいです。

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