表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

#3 魔王トムは足をつる。

「ってなわけありますかーーーっ!!」


 田中は叫んだ。ここはある村の宿屋だ。


「起きてくださいポテトさん!!」

「んん~あと2時間……」

「そう言われて2時間待つ人ませんって!! 速く起きてください!!」


 ポテトは渋々ベッドから下りた。目をこすり、欠伸をし、再び布団に入る。


「いやいやいや!! なんでそこまでして戻るんです!!」

「うるさいなぁ」


 ポテトは立ち上がり、伸びをしながら窓に近づく。


「もう魔王は倒したから世界は平和なんだって」


 窓を開く。


 ガチャ、ギ~ッ




「助けてくれ~っ」


 ドカーン


「ひえ~っ」


 キーン、ドーン


「うわ~っ」ガヤガヤ


 ボーン、ボカーン




 ギッ、バタン


「……」

「……」


 ポテトはまた布団に入る。


「いやいやいや!!」

「うるさい。世界は平和だっただろ」

「どこがですか!!」


 二人が言い合っていると、突然部屋の中に轟音が鳴り響いた。


「うわ、なんだ?」


 魔王が現れた!!


「いやなぜに!?」

「おう。実はな、俺はラスボスじゃなくて、本当のラスボスは他にいるんだ」


 田中は驚く前に呆れる。


「全然終わってないじゃないですか」


 ポテトはしばらく考え、


「どうせ行かなきゃいけないんだろうな」

「そりゃあそうだ」

「魔王、仲間になれ」


 魔王がひっくり返る。


「どこからその発想が出てくるんだ!! 俺、魔王だぞっ↗!?」


 声までもがひっくり返っている。


「異物混入……」


 ポテトがボソッと呟く。


「こいつ……仕方ない、今回だけだぞ」

「魔王さん、決断あっさりし過ぎでは……」

「俺は魔王さんではない。トムだ。トムさんとでも呼べ」


 魔王トムが仲間になった!! ポテトが、よし、と言う。


「それじゃ早速外に出て魔物と交戦だな」

「にしても展開早くないですかね……」


 扉を開けた瞬間に魔物が襲い掛かってきたので後ろの田中を勢いよく前に出して盾にした。


 ズシャアッ


「ごふっ……」こうかは ばつぐんだ!!


「身を呈して仲間を守る精神、流石だな!!」

「いや……自分から……盾にはなってません……」


 ポテトは無視して外に出る。


 外は魔物だらけだった。剣をもった人型の魔物、動物が闇に取りつかれた系の魔物、魔導士系、etc.


「これは戦うしかないようだな」


 懐から銀のナイフを取り出す。


「あれ? 勇者様そんなのいつ手に入れたんですか」

「え? 昨日のファミレスからパクってきたんだよ」

「いやいやいや、丸っきり窃盗じゃないですか!!」


 ポテトはやはり無視する。この勇者に常識は通用しない。仕方なく田中もヒノキの棒を取り出した。


「……ん、魔王は?」

「あれ? トムさんなんでまだ宿屋の中にいるんですか」


 魔王は宿屋の出口付近で座っている。


「おい魔王、さぼってるのか」

「……違う。足、つった」


_人人人人人_

>足、つった<

―YYYYY―


「おいおい嘘だろ!?」

「仕方ないだろう!? ずっと魔王城の椅子に座ってたんだからよぉ!!」


 田中がため息をつく。


「勇者様、私達だけで戦いましょう。補助系呪文は結構得意です」

「よし任せた」


一気にポテトが走り出す。


 建物と建物の間の石畳の道、魔物がひしめく中を疾風の如く駆けるその姿はまさに勇者。一瞬で向かいの建物の壁に到達し、身を翻し、壁に足をつける。


「ハネル!!」


 田中が補助呪文を叫ぶ。ポテトの足元の壁に白い魔法陣が展開し、光を放つ。タイミングは完璧だ。


 ポテトが横向きに跳躍し、銀のナイフを振る。閃光が炸裂し、魔物の体を刃が切り裂く。


 着地したポテトは体勢を起こしつつ、振り返り、後ろから襲ってきた魔物の弱点を寸分違わずに、斬る。


「マモル!!」


 田中がまた叫ぶ。ポテトの後ろに青い魔法陣が展開し、それがそのまま盾となる。遠距離攻撃をしてくる魔物に対する対策だ。


「田中ァ!! 速度上昇ォ!!」


 ポテトが叫び、田中は心得て呪文を唱える。


「ハヤク!!」


 風が吹いたかと思えばそれはポテトで、周囲の魔物は戸惑う。戸惑った次の瞬間には、全身を切り刻まれ、力尽きる。


「呪文のタイミングが良いな」


 ポテトが呟いた。それは勿論だ。田中はリズムゲームの達人である。


 砂煙をあげつつポテトが停止する。魔物が好機を逃すまいと近寄ってくる。


「単純すぎるな」


 砂煙が一気に空へと立ち昇る。その中からポテトが姿を現す。銀のナイフに田中の呪文がかかり、巨大な刀となる。体勢を傾け、刀を天へ向け、その刀に太陽の光が反射した。


「うおぉぉぉおおおっっ!!」


 風を纏い、回転する。


「ポテト・カットおおおぉぉぉ!!」


 地上に勇者が降り立ち、風が吹き荒れ、光が舞い、魔物がまとめて吹っ飛んだ。


 ポテトが体を起こし、「決まった……」と呟いた。しかし、後から後から魔物が現れる。


「どこかにボスがいるな……? お~い、でてこ~い」


 ポテトが叫ぶのを田中は呆れて見る。


「そんなんで出てくるわけ……」

「ご名答!!」


 ボスが現れた!!


「出てきちゃうの~!?」


 橙色の軍服を着、暖色のサングラスをかけている。手には拳銃。


「何者だ」


 ポテトが尋ねる。


「私は蒸すか大佐だ」


 田中が前のめりに倒れる。


「ちょっと!? それ大丈夫ですか!?」

「お静かに」


 蒸すか大佐が止める。


「いやいや某スタジオから怒られちゃいますよ!!」

「言葉を慎みたまえ。君はラピュt……」

「わーっわーっ」

「くそうっ!!」パーン


 撃たれる田中。うろたえないポテト。


「見せてあげよう。ラピュtのいかずt……」

「バルス」


 溢れだす青い光!!


「うわあっ目が、目がぁ~!!」

「容赦ないですねポテトさん」

「くそっ私をあまり怒らせない方がいいぞ……はっはっはっ」


 逃げる蒸すか大佐。


「いや逃げるんですか」


 しかし、手下の魔物は健在だ。うようよいる。虫かって。


「どうしようかな……」

「俺に任せろ」

「トムさん!! 脚は大丈夫ですか?」

「おうよ!! 魔王スラッシュ!!」

「単純!!」


 魔王が残りの魔物を全て吹き飛ばした。吹き飛ばされた魔物は5レス後に現れる。


「なに、わけわからない予告してるんですか……」


 ポテトはにこりともしない。


「さっさと次の町へ行こう。ここの人は皆逃げちまった」


 言うが早いかさっさと歩いていってしまった。



× × ×



「田中ぁ……田中ぁ……」

「何だか呼ばれている気がします」


 田中が顔を上げた。次の村へ行く途中だが、そこに誰か立っている。ポテトもそちらを伺った。その人は近づいてくる。


「やあやあ田中!! 私はサクサク作者だよ!!」

「そんなスナック菓子みたいに言わなくても……」


 田中は言った後でしばし沈黙した。


「え?」

「作者だよ」

「えええ!?」


 ポテトが無表情に言う。


「作者か。消えろ」

「いやいやいや!! ポテトさん、初対面で、作者ですよ!?」


 田中が作者を見ると道の看板の裏で体育座りをしている。


「ほら見てくださいよ。落ち込んでますよ」

「あ? ああ、次の村まであと少しなのか」

「誰が看板を読めって言ったんですか!!」


 作者がようやく戻って来る。そして重々しく告げた。


「君達に言おう。次の村まであと少しだ」


 ポテトも田中も黙る。


「……」

「……」

「看板で用は足りてると言いたいのかい」

「……」


 作者がゆっくり看板の裏へ戻っていく。


「あああ!! いやいや!! やっぱり作者本人の口から聞くと違いますよ!!」

「え、そう?(///)」


 単純!!


「いや~そうか~。あとどうでもいいけど次の村で仲間増えるよ」

「割と重要ですよそれ」


 田中が呆れる。


「では、さらば」


 作者は看板を担いで行ってしまった。ポテトはさっさと歩き出す。


「ちょ、勇者様、待ってください」

「あ、もう次の村が見えて来たぞ」


 確かにずっと向こうに家々が並ぶのが見えるのであった。

 作者がしっかり登場するあたり、味があります。

 なお、掲示板に投稿していたので「5レス後~」のような記述が散見されます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ