#10 人はゴミのようだ。
「おー大陸だぁ」
新たなる冒険地、ニュー大陸は東端には砂漠、西端には雪原がある程広く、高い岩山が連なる地域もあれば地を抉ったような深い峡谷もある。中央に建つアルアータ城とそれを取り巻く城下町は、人々の活気集まる、交易の盛んな場だ。
ただ一つ残念なのはそれらがほとんど出てこないこと。
「出てこないんですか!? それだけ説明しといて!?」
「物語の展開の都合上、仕方がない!」
魔王が強引に理由をつける。その懐でマイキーマウスが鳴いた。<チュー
「あ、結局名前マイキーマウスになったんですね。可愛い~」
「いやいやいや! 絶対D社に怒られます!」
田中が慌てていると、草原の道の向こうから何かがやってきた。
「あわわ……D社の人ですよ……ガタガタガタガタ」
「やあ、見た目は物書き、中身は廃人、作者だよ!」
現れたのはどうやら作者であった。今まで喋っていなかったポテトが口を開く。
「ちょうど良いところに。魔界に行くにはどうしたら良い」
「ふ……」
作者が分厚い本を取り出し、開く。勇者一行、期待の眼差し。
「この『お馬降臨書』によれば、帝王の2人の手下を撃破し、それぞれから赤の石と青の石を手に入れた時、ニュー大陸にある魔界への扉が開くであろう――と」
ポテトが少し落胆して訊く。
「その2人のボスがどこにいるとか、分からないのか」
「待て――ふせんが貼ってあるからここか――コホン、まずは君達は青い石の導きに従い天空の城ラピタに行くのだ。そこに1人目の敵がいる。そしてそれから2人目を……おっと、これから先は君達にとっては未来の出来事でしたね……」
沈黙。
「てなわけで、さらば!」
「待て待て待て! 天空の城ラピタはどこにある!」
ポテトが叫ぶが、作者は消えてしまった。
「ちっ、作者の割には役立たずだな……」
「青い石とか言ってましたけど、誰か持ってます?」
「青い医師? コード・ブル……「やめましょう」
魔王がフン、と鼻を鳴らす。
「そういう重要アイテムは簡単には手に入らんのだ!」
マイキーマウス<チュー!
「ああ、はいはい、餌あげ――あ、ちょ」
マイキーマウスがピョーンと魔王の懐から飛び出した。
「あ」
田中とチエが同時に動き、捕まえようとするが、なかなかどうしてネズミというのはすばしっこい。マイキーマウスはチョコチョコ走って草むらに入り込んだ。魔王がそこをガサガサやって捕まえる。
「ダメじゃないか逃げ出したら……ん? この青い光は……」
「おおっと?」
魔王が次に拾い上げた物は!
「青い石だ」
「えええ‼」
驚く一同。喜ぶ魔王。
「いやぁ、マイキーマウスは凄いなあ‼」
<チュー
「ああそうかそうか、今日は上質のチーズをあげよう!」
ドドド……
「ん、何の音だ?」
「道の向こうから砂煙が……」
「また作者か……? いや、あれは車っぽい乗り物……」
乗り物にのっているのは数名。中心に桃色の髪のおばあちゃんがおり、その周りに飛行兵の服を着た少し間抜けそうな男たち。
「ママ、いた! ヒッコー石も持ってる!」
「捕まえるんだよぉ‼」
乗り物が煙を吐き、急接近してくる‼
「な、なんですかあの人たち⁉」
「分からん、とりあえず逃げるぞ‼」
逃げる勇者たち! それを追うドーダ家!(名前今決めた)平和な世界では比較的珍しい光景だ。
「ママ! 逃げられちゃうよ!」
「ふん、逃がさないよっ!」
車から発射される桃色の球体。走る勇者たちの前に見事に着弾。
「っ⁉」
地面に桃色のネバネバが広がる。男子勢は走り幅跳びで飛び越えたが、チエが引っ掛かってしまう。
「うわっ何ですかこれ! 足にくっついて取れない!」
「あっ、動かないで下さい! 転んだら一大事です!」
「そんなこと言っても……」
後ろから追ってくるドーダ家。
「追い付かれちゃ……」
「ハガシ!」
田中の呪文と共に大袈裟な魔法陣が出現し、チエの足がネバネバから離れる。
「わっ、ありがとうございます!」
「おい2人、早く逃げるぞ!」
魔王が叫ぶ。ポテトは仲間を置いてとっくに向こうまで行っている。
「不人情勇者だなぁ……」
とにかく逃げる勇者一行であった。
逃げてたらラピタに着いた。
「えええぇぇぇ⁉」
「そんなのアリなんですか」
ポテトは満足げに頷く。
「父さんの言った通りだ! ラピタは本当にあったんだ!」
「そのセリフってうわーっ(銃声)」
突然撃たれる田中。
「なっ⁉」
「ははは、私が蒸すか大佐だ。ちえみ姫は貰っていくぞ」
効率良くチエをさらった蒸すか大佐。
「急展開過ぎるだろ‼」
「まあヒッコ―石は僕が持ってるんだけどね」
「……あっ」
× × ×
巨大な空中楼閣、伝説の城ラピタ。その中にチエは連れていかれたらしい。
「てなわけで侵入しようとしたんだが……」
勇者一行の前の石の扉、そこに付いている謎の機械。
「まさかセ〇ムされているとはな」
「アルソ〇クかもしれないですよ。とにかく入れませんね」
ガガガ……魔王が力尽くで開けた。
「いやいやいや……」
「これで入れるな」
スタスタ中に入っていくポテト。田中も続こうとしたが、
「……魔王さん来ないんですか?」
「今扉開けたので、力使い切った」
「力尽くで開けて力尽きたんですか……」
ポテトがイライラと振り返った。
「急いでいるんだから魔王は置いてくぞ」
「えっ」
扉の外に取り残された魔王であった。
× × ×
一方、中の蒸すか大佐とチエは。
「伝説の黒い石だ! 読める……読めるぞ!」
「そーっと……」
「逃がさん」
「あ、バレた」
蒸すか大佐の前に映像が現れる。そこに映っているのは魔王。
「ははは、人がゴミのようだ!」
「な、この魔王を侮辱したな!」
「言葉を慎みたまえ、君はラピタ王の前にいるのだ!」
蒸すか大佐、振り返る。
「あ、ヒッコー石を出せ」
「無いよ」
……。
「出せ」
「無いって」
「出せ」
「だから無いって」
……。
バーン(銃声)
「キャー」
「待てっ!」
「鬼ごっこは終わりだ!」
(銃声)(銃声)
「キャーッ」
「次は耳だ!」
そこで現れる2人!
「待てーっ、石は隠した! ちえみを撃ってみろ、石は戻らないぞ!」
「抵抗したらこの8.6秒バズ〇カで木端微塵にしますよ」
ポテトと田中が脅すも、蒸すか大佐は余裕の面持ち。
「その大砲で私と勝負するかね?」
「……チエと話をさせろ」
「3分間待ってやる」
ポテトと田中がチエに走り寄る。
「チエ……「時間だ‼ 答えを聞こう‼」
「いや早ぇよ‼」
(めっちゃ銃声)
「しかも超撃って来るし‼」
「よし、ヒッコ―石で、例のアレをやろう」
ポテトが言い、チエと田中が、目を合わせて頷く。ヒッコ―石を乗せて、手を繫いだ。
ポテトと田中が。
「……え? あっそっちですか」
「バルス‼」
……。
「あれ?」
目が目が待機をしていた蒸すか大佐も拍子抜けしている。
「……これヒッコ―石か?」
「……あ。これ、ただのラピスラズリです」
……。
「そんなの、エンチャントくらいしかできないだろ」
「そうですね、バルスはできないですね」
……。
(もうむっちゃ銃声)
「うわぁ!」
「くそ、チエ、何か知らないのか⁉」
「そんなこと言われても!」
その時、チエは何かを思い出した……‼
「そうだ、私の本当の名前は、ブルゾン・ちえみ・売る・ラピタ……」
お母さんから教わった古の呪文……!
「ゴアイドク・アリガトウ・ゴザイマシタ……」
ピカーッ‼ 溢れ出す青い光‼
「うわーっ、目が、目がーっ、ああっ……」
蒸すか大佐が叫ぶ。城が次々崩れていく。
「な、なんて呪文を、唱えてくれたんだーっ」
「いや、だって~‼ 落ちる~っ‼」
ヒューッ……。
その様子を見ているドーダ家。
「ママ、見て! 釜の底が抜ける……」
「滅びの言葉を使ったんだ……」
桃色髪のおばあちゃん、ドーダは感慨深げに呟いた。
× × ×
砂浜にて。
「……酷い目に遭いましたね」
びしょ濡れの田中が呟く。ポテト、魔王もため息をついた。唐突にチエが笑い出す。
「ふっ、ふふ……はっ、ははは……あはは……不思議~」
チエは砂浜に寝転んだ。勇者一行、みんな思い思いに休む。そして作者現れる。
「1つ目のボスは撃破だね!」
「うるせー……てか、こんなんで帝王城行けんのかよ」
「帝王城の扉は青い石と赤い石が揃った時に開くのさ」
「それってこのラピスラズリかよ‼」
まあとにかく1人目、炉蒸すか・パロディ・売る・ラピタを倒した勇者一行であった。
来週の勇者ポテトの大冒険は!
再び現れたネコフルンと、ジャンクフードベロンバァ!
絶望と無気力に包まれた勇者一行だったが、何故かチエだけが残る⁉
突然重要キャラに躍り出るマイキーマウス‼
この流れで出てくるのは、伝説の戦士、プリキュ……⁉
次回、「キュアミリオン誕生‼」お楽しみに‼
君も創作者ならパロディの範囲に気を付けたまえ。って当時の私に言いたい。