#1 勇者ポテトは冒険に出る。
まろやか国、なめらか城。王様は目の前にひざまずく勇者に話しかける。
「で、話は終わったが……分かったか?」
返事が無い。ただのしかばねのようだ。
「ナレーター。開始早々勇者をぶち○すでない。おい勇者、聞こえておるか?」
返事が無い。ただのしかばねのヨーダ。
「フォースと共に、じゃない。これ、兵士、見てきとくれ」
控えていた兵士が勇者に近寄る。
「zzz」
「王様、割と気持ち良さそうに寝ています」
兵士の報告に王様はため息をつく。
「起こせ」
「ほら、王様の前だ。起きなさい」
起きない。
「みっともないぞ」
起きないって。
「そろそろ大声を出すぞ」
起きないってば。
「起きろおぉぉ!!」
だぁ起きないっつってんでしょうが、ええ!?
「んだコラぁ!!」
あァ!? ご丁寧に状況を要約して伝えるナレーター様にその態度かァ!?
「おうおうこちとら王様の警備する衛兵だぞォ!?」
あんッだとンの野郎がァ!! ぶち〇ぞォ!!
「おォ上等だァやってやるよォ、えェ!?」
口答えしてんじゃ無ェぞォこのシャクレがァ!! 沈めッぞォ!!
「こっちのセリフだァこん畜生!!」
お前ェなんざァ〇〇で〇ってやんよォ!!
「○○がデケぇ口きいてんじゃ無ェぞォ〇〇がァ!!」
「―――うるせーよ!!」
勇者が叫ぶ。って何叫んでるんだよ、勝手に首突っ込んでんじゃ無ェぞ!!
「はぁ……興奮と怒りで我を忘れるなんてナレーターの風下にもおけないね」
「風上」
王様が訂正する。
「なんだナレーター、やればできんじゃん」
へへーん。
「いい加減にナレーターと会話するのをやめんか。兵士、下がれ」
兵士が下がる。ざまァ。
「一言余計なんだよ……」
勇者が呟いた。
「で、どこから寝ていたのじゃ?」
「王様と挨拶したあたりから記憶が曖昧です」
「なんとまぁ……仕方ない、もう一度説明するぞ」
「zzz」
王様は呆れる。
「兵士!」
「はっ」
ザクッ
「いっっった!! 槍で突くとか悪魔かよ!!」
「寝るのが悪い。いいか、今、魔王が世界を支配しようとしているのじゃ!!」
「な、なんだってー」
「うっさいわ!! あ、今中継が繋がっておるぞ。魔王さーん、ゴグジロー」
~♪
「はーい! 魔王城の中庭でーす。今日もたくさんの魔物に来てもらいました~」
ワーワー
「はいっ最近肌寒いですねぇ~それでは明日のお天気です」
「いや、魔界の天気は必要ないわい」
王が制すると魔王は不服そうに唇をとがらせ、そのとがらせた唇でゴグジローと熱いキスを交わす。
「やめんかー!! 何やってんだ!!」
勇者が言うと
「おーお前が勇者か! まあその、大変だろうが、頑張れ!! えー、現場からは以上でーす」
王様が慌てる。
「待て待て待つんじゃジャングルジムから落下で骨折」
「待つ待つ待つからカラオケチャチャチャで大騒ぎ」
「今すぐやめんか、頭が痛い痛いのどんだけーって、乗せるな!!」
乗ったのは勇者である。
「魔王よ、目的を説明せんか」
「説明も何も、俺は世界を『制服』する!! 以上」
勇者が首を傾げる。
「『制服』? 『征服』じゃなくて?」
魔王はニヤニヤ笑いながら
「いや『制服』で合ってる」
等と言うので全員が悲鳴を上げた。中継が切れる。
「というわけで全国の女子学生を守るためにも魔王討伐の旅に出るのじゃ!! 勇者ポテトよ!!」
勇者ポテトは前のめりになる。
「ポテトって何だよ」
「敬語を使え」
兵士が言う。
「我等が偉大なる大国王様ー、無礼を承知でお尋ね致したてまつるがー、なぜ故わたくしめの名前がポテトなのでございましょうかー(棒)」
「なんか嫌だな……まあ、名前は、プレイヤーがその時食べていた物じゃろ。筆者の友達は飲んでいた冷珈琲を主人公の名前にしたそうじゃ」
「『ポテト』よりかは『冷珈琲』ましじゃないですか!! 僕はプレイヤーを心底うら むよ……」
ポテトが憎々しげに呟く。そして手を打ち、
「大体、この手の名前の王道は『ああああ』でしょう?」
「いや、既に同じ題名の作品があったのじゃよ」
「え?」
「まあとにかく行って参れ!!(汗)」
「はぁ?」
「ん?」
「初期装備とか無いの?」
沈黙。
「あれおっかしいなぁRPGでは主人公の初期装備は常識……」
「仕方ないじゃろ!! 国家予算とか、事情があるんじゃ!!」
たかが一人の装備を出せない理由としては大きなものだ。
「ほら行け!!」
「いや、初期装b……」
「兵士、つまみ出せ」
「わ痛っ、待って槍で突かない槍で突かない。あちょ、痛……」
最初から暴れていますね。これを投稿したときは14歳でした。
勇者の名前をポテトにした理由は覚えていませんが、響きは我ながら好きです。