レシピは消えゆくものだから
おばあちゃんの手は魔法の手。
冷凍庫は宝石箱。
オラ、アミーゴ!
三屋城です。
今日はおばあちゃんと私の、おはなし。
昔々。
覚えているのは朧げなおばあちゃんの手元と、冷凍庫から取り出され、切り分け焼かれ、チン! という甲高い音と共に止まったオーブンから出てくる、ほかほかとしたキツネ色のクッキー。
食べたくなったら、
「クッキー食べたい!」
という一言を口にすれば出てくる。
それは魔法のクッキーでした。
ほろほろと。
ざっくりして。
コクがあってあまぁい。
バタークッキー。
どこのレシピかはわかりません。
おばあちゃんは、書き留めたメモを見ながら作っていました。
型抜き不要の、今でいうサステナブルで作ったら丸ごとご馳走になる。
「米粒残したら目目潰れるよ」が口癖のおばあちゃんのクッキーは、食べたいときに食べたいだけ食べられるのも、魅力。
大好きでした。
けれどもう、今はどこにも存在していません。
作り手がこの世には永久不在になってしまったから、です。
レシピも、捨ててしまったのか遺品整理の時に見つけきらなくて。
不明のまま。
大好きだった味は、頭の中だけで反芻され咀嚼するものになってしまいました。
アイスボックスクッキー、という名前がついていることを知って、作ったこともあります。
けれど、配合が違うので、同じ味にはなりませんでした。
こんなことなら、レシピを教えてもらっておけばよかったなぁと、後悔しきりです。
なのでもしこれを読んで、気に入った味があるって人は、何かの折にでもお相手の方に聞いてみてもらえたらいいな。
と勝手に思っていたり。
もちろん、レシピがなくとも受け継ぐことのできる思いはあるって、私はそう思っています。
けどどうせなら、味も継いで、そしてさらに進化させたり変化球にしたりしながら、また次世代に繋いでゆくのも、楽しそうだなぁ。
そう思う私です。
ちなみに。
うちの母が昔辛くない白い麻婆豆腐をよく作ってくれていて。
これは受け継ぎたい! と思って聞いたのです、レシピ。
「そんなん作ってた?」
ちょ、ド定番ド定番!! お母様いっときよく作っていたよ??
……まぁ、こうして欠番となるレシピもあります。
気に入った味はできるだけ長く味わえるように、自分でも作り方を知ってみる。
オススメです。