プロローグ2
私は日本が大好きです。きっかけは父が連れて行ってくれた時代劇の撮影現場でした。
敵をバッタバッタと倒すサムライの姿に感動しました。
「パパ!私もサムライになりたい!!」
そういった私に父は笑って言いました。
「そうだなあ、ジェシーなら強いサムライになれるかもな!」
私はその日以降サムライになるための修業を重ねました。
といっても現代では実際に敵を斬ることなんてできません。
だから私は剣道を始めました。近いものは学べるかもと思ったからでした。
私はどうやら剣道に向いていたようです。始めて一年ほどで県の大会では優勝できるようになり、数年すると全国優勝も狙える腕前になっていました。私は推薦で剣道の強豪校に進学しました。
高校に入るとなぜか女子生徒からの人気が集まりました。
後輩に理由を尋ねたところ
「ジェシーさんのほうがその辺の男よりもイケメンですよ!!」
と言っていましたが、そうなのでしょうか?
高校三年生、コロナウイルスの影響で部活動が禁止になり、少し暇になりました。そこでたまには剣道以外のこともしてみようと【オルタナティブ・ゾーン】を始めました。
そしてはまりました。現実世界ではなれない“本物の”サムライになれたのです!!私はすっかりオルゾンにのめりこみ、いつしかトッププレイヤーと呼ばれる域に達していました。
しかし私なんか比じゃないくらい有名な方がいました。〈コトミ〉さんです。
かわいくてしかも強いコトミさんは全プレイヤーのあこがれの的でした。私も一度会って、お話してみたいと思っていましたが、コトミさんはいつもソロで活動されていて、なかなか会うことができませんでした。
そんなある日私はコトミさんを見かけました。あまり人気のない狩場だったので意外に思いましたが、有名人は大変なのだろうとすぐに思いなおしました。
すると突然コトミさんが倒れたのです!私は思わず駆け寄って声を掛けましたが反応がありません。
状態異常の一種かとも思いましたが、周りにモンスターの気配は感じられません。それに何やら嫌な予感がします。サムライの勘というやつでしょうか。
運営に連絡を取るためメニュー画面を開こうとしましたが、いつもあるアイコンが見当たりません。一時的な不具合でしょうか。それならコトミさんが倒れて反応がないのもうなずけますが・・・
その時声がしました。
「出立の時間だ。われらがアイドルよ。」
威圧感のある声がどこからともなく聞こえてきます。
「誰ですか、あなたは!?」
「む?誰だ君は?」
「サムライのジェシーです!」
「サムライ?何を・・待て、ジェシーといったか?ふむ・・二人同時にいるのは偶然か運命か・・・」
「何をわけのわからないことを言っているのですか!コトミさんもあなたがやったのですか!?」
「安心しろ。私はお前たちの敵ではない。異世界への案内人だ。」
「異世界・・?なにを言って・・きゃあ!?」
私とコトミさんはいつの間にかまばゆい光の柱に囲まれていました。
「すまない、時間切れのようだ。詳しいことはあちらで話そう。」
私はその言葉を聞き終えるや否や強烈な眠気に襲われ意識を失ったのでした。