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異世界は僕に牙を剥く ~異世界奴隷の迷宮探索~  作者: 結城紅
序章 この残酷な異世界で
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秘策

分からなくても大丈夫です。

分かるとちょっと楽しいかも。

「じゃあ、念のために確認させてもらいたいんだけど……」


改めて口火を切る。


「領主が領民から徴収する税金は、通行税、市場税、住民税、組合税……あと間接税だったよね?」


ここ数日で得た情報を脳内でこねくり回し、言葉をひりだす。

基本的には、文言通りの税金だった筈だ。


通行税は訪問者税とも言われ、領内に入る際、関所で徴収される税金のことだ。人の往来を活発化させた方が収益は上がるので税単価は低く、税を取らない領主もいる。


市場税は出店する際に徴収される税金。住民税は中世では人頭税と言われていた、領内に居住を構えることで取られる税金。


組合税……これは中世にはなかったものだ。マレビトが考案した組合……一例としては迷宮探索を支援する探索者組合、商人の支援を行う商人組合がある。組合は国に属さず中立を保っており、世界各地に存在する。それら組合が場所を構える際に領主に払う金が組合税というわけだ。組合は所属する者から登録料、年間組合費を組合員から徴収することで運営費を賄っている。また、組合員は通行税を免除されるメリットがある。金を生む存在なので領主からすれば迎えない理由がないからだ。


最期に、間接税。これは関税だ。特定の物資を持ち出す際に税金をかけることで特産品等の価値を守る役割がある。希少な武器防具を製造できるドワーフの国に多く見られるという。

上記の税金は領主が任意で設定でき、国の了承は不要となっている。


「その通りよ。逆に、領主が国に納める税金は自治税、軍役税、教会税、相続税。軍役は任意で、相続に関してウチは関係ないわ」


税金の多さに辟易としながらオリヴィエの語った税金について思い出す。


自治税。これは国によって異なるもので、領主の税収の内数割を国へと治めることで自治権を得るものだ。自治権には権利の保障、土地の防衛保障が含まれる。一例としては、国が鉱山の保有を認めたり、魔物が領内に出現した場合、領主の申請により国から軍を派遣する等が挙げられる。


軍役税は簡単。戦時に於ける徴兵を金銭の支払いで代替する制度だ。無論、負担は他の貴族にしわ寄せが行くがその分金銭を得られる。ただし、国王の許可が必要。オリヴィエ曰く国が中抜きする最悪の制度とのこと。


教会税……これは信仰とは無縁の僕からしたら意味が分からない。中世にも似たようなものがあった気はするが、要は教会への喜捨だ。建前上は教会があることで領民の精神的安寧が保たれるとのこと。

これを行わないと信仰心がないと取られ、周囲からよく思われないためほぼ必須の税金で、国を通じて教会へと支払われる。


使用用途は新たな教会の建立等教会の活動に寄与する税金。絶対に私物化されていると僕は思っている。免罪符という過去の悪例を忘れてはならない……。


「相続税はあれだっけ。一代限りの非正式な貴族が領地と爵位を後継に相続させる際に支払う税金……だったよね」


「そうね。大体は国から土地を買った豪商や、武勲を上げた元市民に適用されるわ。あとは……」


オリヴィエが僕を指さす。


「例外的なものとして、国が私達領主を通じて国民から徴収する退役税があるわ。組合税に続いて、これも貴方達マレビトが考案した税制度よ」


退役税、要は年金だ。

私的年金、国民年金制度に類似したもので、支払い(加入)は任意。


支払いは任意で積み立て方式、契約内容によっては資産運用を商人組合に任せることで将来受け取る金額を増やすことができる。

元は軍人のための制度だったらしい。


「加入は商人組合を通じて行われるわ。商人組合は資産運用をしつこく迫ってくるから、一部の資産家からは疎ましく思われてるわね……」


まあ、それもそうだろう。

組合は資産運用を選択された場合、増えた資産の一部を受け取ることができるので、元手がない状態で商売できるのと同義なのだから。


ただし、その代償として大量の契約書と帳簿を抱えることになる。

契約書は契約者にも証書と共に渡され、受け取る際には証書か契約書が必要になる。

契約者本人が死亡していても証書か契約書があれば、遺族が受け取ることもでき、相続税もかからない。血縁関係を証明する必要があるが。


国としては一時的とはいえ現金が手に入り財政面、そして政治的な面でも楽になれる。

元来国が大勢の国民分の帳簿を確認しなくてはならないところを、組合に委託させることができるからだ。


この制度があることにより組合の中立性は絶対的なものとなっている。他国の情報を得ようと組合にすり寄ろうものなら、袋叩きに遭うのは目に見えている。

マレビトによる情報の私的利用も同じ理由で抑制されているので、絶妙なパワーバランスのうえで保たれている制度と言える。


「税金に関しては大体こんなところよ。それで、何か良い案は思いついたのかしら?」


説明のときとは打って変わって、興奮を抑えきれない顔。期待に満ちた双眸が僕を見据えている。

僕の双肩には荷が重い期待に苦笑いしつつ、ここ数日考えていた案を口に出す。


「領主が徴収する税金を一部免除する」


「……え?」


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