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編入って、普通ですよね?

 




 いつもの様にモンスターを呼び出した。何故ならそうしなければならなかったから。

 何故生きているのか、人は考えたことがあるのだろうか。何故呼吸の仕方を知っているのか、虫は生まれながらにして飛び方を知っているのか。動物は魚は獣は…。

 ダンジョンも例外ではない。何故人を襲うのか、何故殺すのか。明確な答えなどそこにはない。言うなれば本能。

 その一言で片付けられてしまうだろう。


 本能とは生き物に備わる感情ともいえる。

 欲望と似たようなものだが少し違う。欲望は耐えられるもの、本能は抑え込むもの。

 いや、少し違うか…。本能は訴えてくる感情、欲望は唆される感情か…。



 そんなことはどうでもいい。

 俺はモンスターを、魔物を、罠を、階層主を創り出さなければならない。

 それがダンジョンマスターの本能なのだから。

 外敵を殺し、貪り、そして幾度とないその行為を得て。俺は……。俺……は…………なんだ?


 俺はなんの為に……。

 違う、そうじゃない。今考えるのはそこじゃない。その問はまた永劫のように誰も来なかったあの時間に考えればいい。

 それにその解はもう出ている。否、教えられている。





 世の中には役割というものがある。


 農家には食料を作るという役割(ロール)が。

 騎士は市民を守るという役割(ロール)が。

 王には国民を導くという役割(ロール)が。

 魔王は世界を脅かすという役割(ロール)が。

 勇者には世界を救うという役割(ロール)が。



 そして、ダンジョンマスターには。










 ──勇者が魔王を討つための足掛かりとなる役割(ロール)が。



 だから俺もやっと役割を果たせられる。

 何千、何万、いや何億と守り続けたこの迷宮とも今生の別れとなる。





 ──ああ、もっと自由な世界に生まれたかった。



 最古にして最凶最悪のダンジョン。



 無限の迷宮が歴代最高勇者によって消滅されたことにされた(・・・)




 ▲▼







 迷宮主を務めていたあの頃から約15年。

 この世界はあの世界とは違い、非常に自由な世界となっている。


 望めば人はどんなものにでも成れる。そんな世界だった。

 僕はやっと退魔師の学校へと通うことができるようになった。


 退魔師、と一括りにいうが分野は色々とある。

 何よりその種類を分けるのは霊装に他ならない。霊装とは言わば固有武器、退魔師として戦う為に世界で一つしかない自分だけの武器のことである。


 それがで独学で出来るようになれば、退魔師の学校への編入が可能となる。

 何より退魔師は家系が重要視される。霊装やそれを扱う霊氣は遺伝しやすいからだ。故に退魔師の名家などもあり、日本で最も有名な『安倍晴明』を排出した『安倍家』やそれに匹敵する『土御門』などの名家は必然的に強い退魔師が排出される。


 僕のような突然変異とも呼べるイレギュラーな存在をあまりよくは思っていないのもまた事実。


 最低ラインと呼べる霊装の顕現が出来た僕は、若干の不安を抱え学び舎を訪ねた。









 古く伝統のある校舎。

 など古臭いものではなく、ましてや木造建築でも無い。校舎は見た目は他の学校とまるで変わらないように作られている学校。

 それが日本全国の退魔師が集まる学校の一つ【国立退魔師育成第三高等学校】だった。


「えー、であるからして。えーー。故に、えー」



 学校長の話は長い。

 話の内容を全て聞き覚えている人は学年を通しても片手で数えられる位だろう。


 この彼等が通う第三高校は略されることが多い。

 第三高校の生徒の過半数は校長の話よりも密かに噂されていた、ある噂について気になっていた。


 その噂とは毎年囁かれる噂。


『編入生がいる』


 毎年その噂が流れる、真偽はともかく第三高校は中学からエスカレーター式で進学するのが主流であり、入学式にも関わらず既にグループの輪というものが出来ている。

 極端にいえば刺激が欲しいのだ、実力が上のものだろうが下のものだろうが。

 少年期とはいえ一度ついた差を覆すのは非常に難しい。だからこそ編入生への期待から毎年噂が流れる。



 だがそれはいい意味では無い。

 退魔師は非常にシビヤな世界といえる。圧倒的なまでの実力至上主義。強いものが上に立ち、弱いものは跪く。

 編入生に求められるのは下につく姿勢。


 現底辺よりも更にその下の底辺に這いつくばらされる強要、それが弱者の編入生への期待。


 逆に強者。

 その期待は自分達に届く牙を持っていないか。とのこと。

 同世代ではもう負ける相手がいない、だからこそ藁にもすがるような希望をもつ。家系できまる力を逸脱したイレギュラーたる編入生ならもしや(・・・)と。



「では、最後に編入生挨拶」


 周りがざわめきだした。

 噂は噂、一度も編入生を許したことがない退魔師育成学校が重い腰を動かしたことに一同が驚愕したのだ。

 日本に六校しかない退魔師の学校。その古い歴史に編入生を許したのは一度としてなかった。

 何故なら編入生試験の内容が可笑しいからだ。


 高校から習う『霊装』の顕現や、危険指定Cクラスの討伐。大学で習う範囲のペーパーテストなど数ヶ月前まで中学生だった一般人がくぐれるはずのない鬼門なのだ。


 そんなものこの学校の生徒なら誰でも知っている。


 だが今校長は確かに言った。


 編入生の存在を。

 それは条件を満たした鬼才がいるのか。


「それじゃ、黒沼くん。挨拶よろしく」


 校長がそう言って舞台裏から出てきたのは、なのん変哲もない普通の青年だった。

 街を歩けばすれ違いそうな、可もなく不可もない平均的な男性。


 校長からマイクを渡され、黒沼と呼ばれは青年はこちら側に体を向けた。


「あーあー。マイク入ってるな」


 などと編入生は随分と呑気なものだ。

 この数の人から好奇の視線を向けられても物怖じしないその度胸は評価に値するが、あまりに締まらない。


「えーと。黒沼 言葉(ことは)っていいます、えー趣味は特にありません。以上です」


 あまりにも短すぎる挨拶、舞台の脇で教師陣がカンペらしきものを叩いて主張するが、当の本人はやり切った感をだして胸を張り満足そうだ。

 教師陣と黒沼を交互に見て生徒一同はこう思っただろう。



((((ヤベー奴が来た))))
















 「黒沼くん!!しっかりしてもらわないと困るよ、こちらで作った文章があっただろう!」


 「いや、あれって僕書いてませんけど」


 「知ってるよ!私が書いたんだから!!」


 場所は舞台裏。

 黒沼と教師の言い合い、もとい話し合いが開始されていた。

 元々舞台にはカンペがあり、それを読み上げるだけでいいと言われていたが黒沼は話を右から左へと流していたせいで待ってく聞いていなかった。


 だから黒沼は普通に自己紹介をしたのだが、それは教師陣からしてみれば「何やっとるんじゃワレェ!!」もの。

 追い打ちにあの満足そうな達成感を出されれば教師陣が怒るのは仕方の無いこと。しかし黒沼も天然だということに教師は気付いたので怒るに怒れない。


 「頼むよ黒沼。それでも歴史上初の退魔師育成学校の編入生かよ」

 「え?あー、まぁ。そうですけど」


 何処か歯切れの悪い黒沼に教師が気付く。


 「どうした?」


 教師の問いかけに黒沼は少し気まずそうに答えた。


 「アレくらいって、普通じゃなかったんですか?」


















 






 「ンなわけあるかボケェェェェエエエエエ!!!!!」

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