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風説:「人食い姫」は花婿にさらわれた

全面改稿開始

≪大街道≫から外れた平原に、山と呼ぶべきか迷う小高い丘があり、そこを一人の男が駆け上っていた。血糊で薄汚れた装備から、夜盗と商売替えを頻繁に行う類の傭兵だと見て取れる。

 傭兵は膝をつき、自分が逃げ出した修羅の巷を見下ろしてしまうことに、何故か安堵のようにも聞こえる笑い声を上げた。その笑いは、喉元に剣を突きつけられるまで続いた。


「話が違うぞ!何でこんなところに()()()()がいるんだ!

 化け物退治の報酬を貰った覚えはねえ!俺は降りる!」


 その剣の持ち主が雇い主として現れたの誰かと、少なくとも外見上は同一人物であったことも、まさに自らの命が風前の灯火であることも忘れたかのように、傭兵は怒鳴りつけた。


「ふむ」


 剣の持ち主――――黒い外套と仮面のせいで老若男女の区別すらつかず、どういう不思議か、声は複数人が同時に喋っているようであった――――は意外そうに眼下の風景を見下ろした。


 そこにいたのは赤毛を少年と見まごう長さに切った少女である。古めかしい作りの馬車を背に、緑の目を睨むとも眺めるともつかない奇妙な開き方にしたまま、背後以外の三方から襲いかかる傭兵達を、埃を払うように軽々と切り伏せていた。


「少し面倒だな」


 剣の持ち主は傭兵のほうに一切の注意を払わぬまま、彼の胸に剣を突き立てた。鞭打たれたように硬直した彼の首と四肢がちぎれて飛んでもまるで微動だにしない。深呼吸三つほどの間を置いて、やっと呟いたのは、次のような一言である。


「殺す必要はなかったか?」


***


 勘当した娘に、無銘とはいえ業物を持たせてくれた父の親心に感謝するべきだろう。そうでなければここまで易々と片付くような相手ではなかったはずだ。それにしても、と。剣についた血をぬぐいながら考える。不思議なことがずいぶんと多い。傭兵くずれが夜盗になるだけならまだいい。だが、そういう手合いは最初の5、6人ばかりを切ってやれば総崩れになるものだ。なのに結局切ったのは二十と三人。いくらなんでも多すぎる。不思議といえば襲われていた馬車も不思議だ。そもそも街道を外れるのは後ろ暗いところのある者と相場が決まっている。たとえば今のわたしのように。

 とはいえ、気にしすぎても仕方が無い。

 

「賊は片付けました!出てきても大丈夫ですよ!」


 死人に口がない以上、事情を聞き出せるのは馬車の中の誰か、ということになる。


***


 馬車の扉を開いたときに流れてきた香りが、祭礼の時に使われる魔除けのものだと気づくのにずいぶんかかった。それがあまりに大量だったからだ。


「お目にかかれて光栄です、ニーラ=カナン殿」


 わたしの身元がバレていた。


見切り発車です。よろしくお願いします。

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