夢のツインタワー(11) 行動開始
行動開始
1%の株式買い集めには、不動産鑑定で資産価値を検証できた2003年11月から、2004年3月までの4ヶ月余りの期間を要した。出来高が極端に少ない株だったので、私の買いによって市場の株価が上がらないように、少しずつ丁寧に買い集めた。
そしてその間に、会社に対して質問状を発送した。もちろん、芝セレスシティビルの取引を巡る疑惑についてである。
鑑定結果や路線価と比べると土地の取引値は異常に高い、建物の取引で翡翠不動産に10億円以上もの利益が発生しているのは不当である、しかも取引の発表時には利益は発生しないとしていたではないか、という主旨である。
会社からの返答はあまり期待してはいなかったが、それでも一応の回答を文書で送付してきた。不動産鑑定や翡翠不動産との協議を経て取締役会で十分な審議の上で決定した正当な価格である、翡翠の決算内容については認識していない、などの建前を押し通したものだった。
質問状を送付した目的は、過去の取引を質すことで、今後の不正な取引を防止することにあった。翡翠不動産への不当な利益供与さえなくなれば、ツインタワーが完成した時には、日本観光センターの業績は急拡大するであろうことは当然であり、今後これらのような不正な取引があれば法的措置も辞さない、という姿勢を明らかにしたわけである。
ただ、1枚の質問状だけで安心したわけではなかった。次は株主総会に出席して、過去の疑惑を質すことを予定していた。私はすでに20万3千株を保有する第10位株主(個人筆頭株主)として株主名簿に記載されていた。当然、会社側も何らかの意識はしているはずである。
私が買い集めるまでは、複数の持合いの法人株主が、第10位株主として1%(20万株)の株式を保有していた。3千株だけながら、それら株主よりも多く保有することによって、主要株主として名前を出すことを意識したわけである。持合い以外の株主が10位以内に現れることは、馴れ合いで不正な利益供与をやってきた経営陣にとって、少しばかりでもプレッシャーになるのではないか、と考えていたのである。