あにまる! Ⅰ
1* わたしの秘密
「優那-??
何やってんのー?」
「未歩っ…。ちょっと待って!!
こっち来ないでぇーっ!!!」
間一髪。未歩に見つからないで済んだ。
「何やってたの…って…優那!?」
「ふぇ?」
「目赤いよっ!?」
しまった!!未歩に見られてしまった…。
中学校に入って2年間、ずっと隠してきたけど…ここは言うべきみたいだ…。
「あのね…。実はー…。」
私は、この家に代々続いている『うさぎ族』なんです。
見た目は普通の人間なんだけど…覚醒すると耳とかしっぽが出てきたり
目が少し赤くなったりしちゃうんです。
ジャンプ力が優れているのはけっこう便利なんだけどね。
私も9歳までは普通の人間で、そんなこと全く知らなかったのに…。
うさぎ族は、10歳の誕生日に覚醒して お母様に全てを聞きました。
お父様は普通の人間。優しくて、強い自慢のお父様です!
他にも、『ねこ族』 『へび族』 『ねずみ族』がいると聞いたんだけど
まだ会ったことはないですね…。
「ーーだいたいこうゆうことです…。
黙っててごめんなさいっ!!」
「…へぇ…。うさぎ族…。」
「っ!!本当ごめんってば!!というか信じてくれる!?」
「信じるよ…。……じゃぁ、塾あるから…行くねっ」
「え…。うん…。また明日ね…!」
未歩は走って行ってしまった。なんだか悪いことをしたなぁ…。
ー次の日-
「優那!!おはよう!!」
良かった…。いつも通りだ…。
「おはよう!今日は何か寒いねー。」
今日は本当にいつもにまして寒い。水たまりに氷が張っていた。
下ばっかり見て歩いてたら、誰かにぶつかりそうになってしまった…。顔を上げると
「坂下くんっ」
「ん。優那か。おはよ-。」
「おはようっ!どうしたの?今日は遅いんだね。」
「あぁ、ちょっと寝過ごしてしまってな…。」
「坂下くんが!?珍しいねぇ。」
「はははっ。」
「何笑ってんのよ!未歩!」
未歩が小声で笑いながら言ってきた。
「優那…。坂下くん好きなんでしょ!ばればれだよっ。耳でてきちゃうんじゃないのぉ?」
「っな…/// そんなんじゃないし!!全然!!」
そんなことを話してるうちに坂下くんは走っていってしまった…。
好きじゃないなんて言ったけど、本当は入学したときからずっと坂下くんに憧れてたのだ…。
未歩も侮れない子だなぁ…。
秘密がたくさんばれてしまった…。
「ゆーうーなーっ!おはようー!」
げ。もたもたしてたら慶吾が来てしまった。
よく分からないけれど…2年になったときから私にくっついてくる。
周りには、私と慶吾が付き合ってる、なんて勘違いしてる人もたくさんいるから正直迷惑だ…。
「おはよう…。 きゃっ!あまり近づかないでって言ってるじゃんっ!!」
「いいじゃん♪それにさ…。」
「よくないわよっ!何よ!!」
「…俺…へび族なんだよ。昨日聞いちゃったんだけど、お前…うさぎ族だろ…。」
「っ…。」
嘘!聞かれてた!?…というか、へび族なんて…。初めて見た…。
「本当…?」
「あぁ。」
「…どしたの?」
「未歩!ごめんごめん!何でもないから!早く行こっ。」
私たちは慶吾を置いて走り出した。へび族なんて怖そうな奴にかまってられないっ。
遅刻ぎりぎりで授業に間に合った…。
「はぁ~。危なかったね。」
「うん。間に合って良かった~。…ねぇ、優那。」
「ん?どしたの?」
「私…いや、慶吾くん何て言ってたの?」
「んー…。慶吾ね、へび族なんだって。」
未歩になら言っても大丈夫だろう…。未歩は一番信頼できる親友だから。
「えっ。そうなんだぁ。だから優那に近づいてくるんだね。」
「そうかもねぇ…。」
未歩とこんな会話をしたくらいで今日1日普通に過ぎていった。
「…帰ろっか。未歩。」
「うん!今日は見たいテレビたくさんあるし!」
外に出ると雪が降っていた。
「わぁ、どおりで今日は寒いと思ったぁ。」
今シーズン初めての雪。見てるとなんだか寂しくなるのは私だけだろうか…。
こんなにも綺麗な雪なのに…。なんだか少し嫌な予感がした。
そんなとき、誰かが後ろから私を抱きしめてきた。
「きゃぁっ!誰!?」
一瞬見えた未歩の顔がとても悲しそうに見えた。
「…!?」
「俺だよ。」
「慶吾!?」
あれ!?体が動かない…!?声も出ない…!!
「優那…。俺は本気でお前が好きなんだ。俺のこと少しは考えろよ…。」
慶吾なんてずっとふざけているんだろうと思ってた…。
でも…私が好きなのはー…!?
慶吾は私にキスをするつもりらしい。体が動かなくて抵抗できない…!!
「や…やめてよぉっ!!!!」
未歩!?
「優那…。優那には好きな人がいるでしょう!?どうして抵抗しないの!?」
あぁ、そっか…。未歩は慶吾が好きだったんだ…。そんなこと全然気付かなかった…。
「違うのっ…。」
声が出る。体も動けるようになった…。
「何が違うのよ…!!」
説得しようと未歩を見た。
「…未歩…!?」
…未歩には猫の耳としっぽ、ひげが生えていたー…