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第3章:工具は決して安くはない。

初めまして。

アクションと冒険を中心とした物語です。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

 装備を買うときは、それぞれが旅の中でどんな役割を果たすのかを理解する必要がある。

 品質、重さ、耐久性――そういったことを知るのは、それほど難しくない。


 だが。


 「――どれを選ぶか、それが最悪なんだよな」


 手元にあるのは金貨四枚だけ。


 この金額では、せいぜい短剣より少しマシな短剣――いや、短剣ではなく短剣サイズの短剣…ではなく、短剣より大きい短剣――

 いや、つまりはショートソードと、使い古された革鎧くらいしか買えない。


 残るのは、安酒場で飯を一回食えるかどうかの銅貨程度だ。


 「……仕方ない」


 「今日は森で寝るしかないな」


 若い狩人ロイは、深くため息をついた。


 夜の森で野営するのは危険だ。

 ましてや一人となればなおさらだ。


 普通は仲間と組み、交代で見張りを立てる。


 「おい、坊主」


 声をかけたのは、武器屋の奥にいたドワーフの鍛冶師――マグニだった。


 「最近は獣も増えてる」

 「一人で行く気か?」


 ロイが一人でいることに気づき、自然と口を出したのだ。


 単独の冒険者は珍しくない。

 だが新人が一人で依頼をこなすのは、無謀に近い。


 「ギルドで仲間を探した方がいい」

 「新人はだいたいそうするもんだ」


 ロイは肩をすくめる。


 「俺は冒険者じゃない」

 「狩人だ」


 「夜に出る獣くらい、問題ない」


 マグニは鼻で笑った。


 「それが本当なら、ここで金貨を数えて困ってないだろ」


 「それにな……」


 「狩人も冒険者の一種だ。何言ってるんだ?」


 ロイはそれ以上、何も言わなかった。


 ――冒険の始まりには、良いことも悪いこともある。


 武器屋を出ると、ロイはそのまま森へ向かった。

 今日、赤いイノシシを倒した場所だ。


 焚き火はすぐに用意できた。

 それと同時に、夜も静かに森を覆っていく。


 今日の出来事を、頭の中で何度も思い返していた。


 「よし、火はついた」


 「街で飯を食う場所を探すのも面倒だったしな」


 「金も使いたくなかった」


 ロイは袋から肉を取り出した。


 「ハイグが言ってたな」

 「このイノシシの肉は食えるって」


 これまで魔物の肉など食べたことはない。

 そもそも、そんなことをする人間がいるとも思っていなかった。


 ――少なくとも、今日までは。


 「いただきます」


 牙を持つ魔物の皮があれほど硬かったのだ。

 肉も相当なものだった。


 最初の一口。


 「……っ!」


 歯が軋む。


 だが、噛み続けると脂がにじみ出てくる。


 ロイは鞄から一冊のノートを取り出した。


 そして書き始める。


 「さて……」


 「今日は巨大なレッドボアを狩った」


 「頭から尾の付け根まで、およそ三メートル」


 「毛は黒に近い深紅。尾も同じ色だ」


 「牙はかなり大きい」


 書いているうちに、ロイはどんどん夢中になっていった。


 魔物の姿。

 体の特徴。

 戦い方。

 そして、自分がどうやって倒したか。


 細かいところまで書き残していく。


 文章にすると、不思議と冷静に振り返ることができる。


 まるで、自分ではなく――

 物語の語り手になったかのように。


 「覚えてろよ、ハイグ」


 「俺が魔物の加工を覚えたら」


 「もう二度と笑えないぞ」


 「その時には、もっと立派な狩人になってやる」


 食事と記録を終えると、ロイは焚き火のそばに横になった。


 両手を頭の後ろに回し、空を見上げる。


 夜空には星が広がっていた。


 これからのこと。

 自分の歩む道。

 狩人としての未来。


 胸の奥で、期待と不安が静かに混ざり合う。


 ――明日は、何が起きるのだろうか。


 その答えを、ロイはまだ知らない。


 だが。


 次の日が、想像以上に波乱に満ちたものになることだけは――


 まだ誰も知らなかった。

ご支援ありがとうございます。

来週、新しい章が公開されます。

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